軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

241.情報共有と防具

2人が忙しくしている間、俺は母親ととても気まずい時間を過ごしている。

家は小さなキッチンとリビングが合体していて、残り2部屋の平屋だ。母親はベッドに起き上がっている形で、俺はその隣に椅子に座っている。この部屋にはもう1つベッドが入っていた。

寝室にお邪魔も気まずいのに!

「子どもたちがお世話になったようでありがとうございます」

それでも母親は俺を侵入者だと責め立てることなく感謝を伝えてきた。

「いえいえこちらこそ、こんな時にお邪魔して……周囲から悪く言われませんか? 大丈夫ですか?」

「今まともに動ける大人は渡し守の近くか中央へ行っているので……この村に残っている大人は私と身重の女が1人くらいです」

「そうですか……」

また沈黙。

くっ……沈黙が辛い。

「お母さん、お薬できたよ!」

自然と【鑑定】をかけてしまう俺! お薬は、多少の栄養となる煎じ薬、だった。

「2人とも、羊を囲いに戻してくれる?」

「はーい!」

それじゃあ俺も手伝おうかなぁ~と腰を浮かせるが、母親に視線で止められた。ひいん。もう行きたいよ。

2人を見送ったあと、母親はこちらを鋭い目つきで見据えた。

「地上の人々は、空の国を地に落とすおつもりなのですか?」

「え? 地上に落としたら地上も大惨事だと思うんですけど……」

「ならば、どうして、空を侵犯するようなことを!!」

「事故かなぁ……」

「じ、こ?」

事故なんですよー。予想外の事故! お、俺がやりましたああああ!!

「というか、なんで空の国と地上の国は仲が悪くなったんですか? 俺来訪者だからそこら辺の流れは全然知らなくて。正直今回のことがなかったら空の国の存在も知りませんでした」

「それは、上手くやっていたはずの王女を突き返してきたら……」

「俺が地上の国で聞いた話だと、こちらに婿入りした王子様が落とされて、地上で王女の立場が危なくなってきたから安全のために王女を空に戻したって聞いてました」

「1度受け取って返すなどと、許されることではありません」

おー、それなんか慣習的なものが関わってる気がする。

「受け取ったら返すのは絶対ダメ?」

「ダメです。それは相手を侮辱する行為です」

「それで王女様が死んでも?」

「それでも、です」

空の国の人にとってタブーなのか。そりゃ、こじれたよね。

「まあ、色々あるのかな。それじゃあ、これ、差し上げますから。返さないでください。他の村の人に見つかる前に、帰ります」

そう言って寝室の小さなテーブルに山盛りカツサンド置いておいた。あと桃ジュース。

母親はとても複雑な顔をしていた。

【隠密】さんに仕事をしていただき、俺は地上に戻る。

これ、来訪者だからOKだったカウントに入るのだろうか。どうなんだろう。まあ、次はもうないと思って行動した方がいいな。

もうすぐ午後になるのでイェーメールへ向かう。向かいがてらクランチャットだ。

セツナ:

島の暮らしは結構厳しいらしいよ。栄養失調のお母さんにカツサンド振る舞ってきた。

案山子:

喜んでくれたなら良きッ!

ソーダ:

アプローチの仕方が異常なんだよお前……

セツナ:

空島の暮らしは困窮しているようですよっ。タンパク源は空のモンスターだけどそれはたぶん偉い人の口に入ってるな。島民は豆食ってるらしい。

八海山:

なんだか、情報が積み上がっていけばいくほど、武力行使する話じゃない気がしてくるよな。

ピロリ:

それなのよね~

お貴族様とお話ししたけど、なんか空の国にはお宝があるらしく、王子が亡くなったとき、王子の命を贖え派閥があったらしいわ。

セツナ:

あー竪琴の絶対防御みたいなの言ってたな。あと雌鶏が産む金の卵って。

柚子:

まんまジャックと豆の木じゃなぁ。あの小僧、巨人から宝物かすめ取っていった泥棒じゃよ。

ピロリ:

お宝はその雌鶏でしょうね。物語、なんとなく覚えてるわ。

八海山:

今はさっきセツナくんから教えてもらった島Eで返還された姫様の話を拾おうというグループが出来上がってるな、スレで。

セツナ:

1度渡した物を返すと言う行為は侮辱に当たるらしい。

ピロリ:

命の危機があっても?

セツナ:

ぜーったいダメだって。

ピロリ:

あらまあ。そこら辺でこじれたのかもね。習慣の違いかしら。

俺もそう思う。

さて、鍛冶屋さんだ。

ここを通るとすぐ声を掛けられるから話のとっかかりには困らない。

「よおセツナ! 大騒ぎになったな。おかげで俺らの仕事も山積みだよ」

小人族(ドワーフ) がぞろぞろと現れる。

「そうなんですよ~戦争になるのかなぁと思ったら、俺、防具が心許なくて」

「そういやそうだなぁ……あんまり重い物は必要ないが、胸当てくらいは準備しておいた方がいいな」

「ほら、お前らが売ってくれてるアリの外殻で、軽量のいい物ができるぞ」

「わー、俺にも装備できますか? 素早さ売りにしてるから、あんまり重いと困るけど」

「胸当てもだが、 籠手(ガントレット) も作っておいたらどうだ? いざというときそれで相手の剣を受けることもできるぞ。特にあのアリは衝撃にも強い。セツナの腕はしびれるだろうが、切られることもなくなるだろう。盾を持つと機動性は下がるが、左腕にはめているのは悪くないと思う」

ほうほう。

わらわらと集まってきた鍛冶屋がまた勝手に会議をし始める。

しかし、アリの外殻、そんなすごアイテムだったんだなぁ。

道の真ん中に現れたテーブルに、設計図の紙束が出来上がっていくのは異常。というか、数値入ってるんだが、俺の腕の長さとか、え? と思ったら、ローロがニコニコして立っていた。

情報漏洩だろう!!

「セツナ! 色は何色がいい」

「あ、えっと、無難に黒とか」

「何か意匠を入れましょうよ」

「意匠なぁ……セツナのイメージかぁ……」

「酒か」

「酒だな」

「あと旨いもの」

「それ案山子さんですから!!」

なんなんだよ俺のイメージ!!

「セツナ、お前さん、生まれつきの星座は何なんだ?」

「え、双子座ですけど」

「ほう、イェーメールかっ! そりゃ縁があるな。よし、双子座でいこう」

「ふぁっ!? ちょっと待って……」

俺の抗議はまったく聞き入れてもらえず。

「ヴァージル様とも懇意にしてるだろ、領主様の家紋をちょっと拝借して……こんな感じか?」

なんか、なんかー!! 双子座の記号って結構シンプル。ローマ数字の2みたいな形。なのにそこにアネモネの花がある!!

「こんな感じにするかぁ!」

シンプルにそっと描かれているんだが、ぐぬぬ、かっこいいな。

金は無属性のレインボータートルエッグを手に入れるために頑張ったとき、他の色の宝石は売ったし、それこそこの間無属性で儲けさせてもらった。金は、今はあるんだよ。

だがそれを根こそぎ奪っていくっ!!

「なるべく早く納品するぜ!」

いい笑顔の 小人族(ドワーフ) たちだった。お金が消えた。