軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

231.温泉旅行

湯船に入る前に一応身体を洗う。

「【洗浄】」

生活魔法大全03発動。

「おま、風情だよ、風情!! ほら、石鹸でもいいしボディーソープでもいいしっ!」

ソーダに泡だらけのタオルを突きつけられるがお断りである。

「早く温泉に入りたい」

あ゛~~~~~~って声出ちゃう。

「めちゃくちゃいい湯だぁ~~~~」

『女子風呂誰もいなくて貸し切り広々最高よぉー!!』

今日はまともに入れたようだ。

『それはよかった』

俺が返事をしていると、ソーダたちも身体を洗い終えて湯船の中へ。露天風呂、洗い場も室内近くではあるけど外だ。周りは岩と竹。そして望むは美少年が棲まう山。たまに鳥の鳴き声も聞こえてくる。風情しかない。夜だからその竹にライトが当たっててまたかっこいいんだこれが。

『ちょっとスモーク焚いてるのかってくらい湯気が出てるけどな』

『色々と配慮じゃね?』

八海山とソーダが笑う。

『お支払い後なのが怖いでござるけども』

『まあ最悪クラン資金から融通しますよ』

『たまに来るのはいいわねー。今度案山子たちも一緒に来ましょうよ』

『そうしたらお前、また1人風呂になるけど?』

『……柚子ちゃんなら許容してくれそう』

『……お前の彼女が許容しねーんだよ。やだからなまた大暴れしたら』

『うう……ちょっと気性が激しいけどいい子なんだからっ!!』

怖いな、どんだけすごいんだろう。

『泉質がとろりとしているのがいいな……』

八海山の犬耳ぴくぴくしてる。タオルをたたんで目の上に乗せ、頭を岩場に預けて超リラックスモード。

俺も真似してみる。

わー最高……。

『ねえ、ちょっと、湯気すごくて笑う』

『こっちも湯気が……湯気かこれ?』

『……八海山殿警戒でござるっ!』

半蔵門線の厳しい声に俺はガバリと身体を起こす。あー、タオル湯船に入った。ごめんなさい、おおお!? 湯気すごい。

『きゃあああ』

ピロリの叫び声に反応する間もなくこちらもすごい勢いで引っ張られる。

湯の底へ!

『ええええええ』

『おおううううううううう!?』

『何が!?』

『ござああああああ』

底の抜けた温泉に沈んでいく俺たち。

気付くとパンツ一丁で俺たちは平原に放り出されていた。

いや、違うな。

歩き方が普通ではあるがここ、地上じゃない。

『水の底か?』

隣で八海山が起き上がる。目をやると瞬間装備が現れた。あ、俺も着替えよう。防御力に難ありなんで。あー、武器出来たら装備揃えたくなるね、次は。重量軽めで、防御力上がるヤツ。未だにソーダにもらった装備だ。蛙ちゃんパンツです。

『やだーもー、予告なしはびっくりするじゃない』

みんな揃っているようだ。

『水の底と言うよりも、竜宮城でござるねえ』

後ろでそうつぶやく半蔵門線。振り返ると、おおお!! 朱塗りの和風のような中華風のような、そんな建物が見える。かなりでかい。

『温泉のそこから竜宮城へいらっしゃい?』

『底が抜けたって感じなのかな? 幽霊って言ってたのはどこに行った?』

『幽霊は結局見なかったね』

『湯気がすごかっただけよねー』

ぼけっとしていても仕方ないので竜宮城へ向かうことにした。まあ、ゲームですんで、イベントには飛び込んで行くのだ。

門のあたりには槍の先が3つに分かれてる、トライデントを持ったエイが浮いていた。

いきなり刺されたりはしないだろうが、ソーダを前面に押し出して進む。

すると、こちらを見て軽く左右に揺れた。

「いらっしゃいませ。乙姫様の生誕祭に駆けつけた者たちですね。竜宮城は歓迎します」

乙姫様の生誕祭、だ、と……。

『誕生日ですらないのね。生誕祭とか、めちゃくちゃ、偉そうだわ』

『乙姫様に呼ばれるには普通カメを助けるだろ? カメなんかいたか?』

『温泉にカメがいたらゆだってるでござるよ』

門の中に入りつつ、そんな話をしていたら、後ろから声が聞こえた。

「いっけなーい、遅刻遅刻ぅ!」

「回避っ!!」

「回避でござる!」

「お断りよっ!」

1番回避率の低いソーダと八海山。

選ばれたのは、ソーダでした。防具で重量増してるからな。八海山はギリギリで避けた。

「くっそぉおぉぉ! ダメージ判定出てるぞぉ!」

ぶつかってきたのは、カメ。ウミガメだ。

『シータートルじゃん』

『普通サイズでござるね。属性は?』

『水だね! 【ウォーターボール】する?』

まあ冗談だが。だってこのカメ気持ち悪い。ピンク色なんだもん。

「ごめんなさぁい」

カメのてへぺろいらないなぁ……。

「あ、やだーあなたたちじゃない。よかったぁー見失っちゃったかと思ったのよぉ~!! 早く、乙姫様の生誕祭に間に合わなくなっちゃうわよ。こっちこっち。さあ早く来て!」

ピンクのカメが手をフリフリしていた。

「いや、何のことかわからないし」

「えーっ!? ここに招待したのよー。強そうな子を連れてくるのが私たちカメの役目よ」

「強そうな……いったい何のために?」

「乙姫様を喜ばせるために決まってるじゃなーい。乙姫様は、強くてかっこいい子が大好物なのよ~。これからトーナメント戦に登録するんだから、早く来てちょうだいっ!」

《ミッション! 乙姫のトーナメントで優勝せよ!》

『うわぁー、ミッションかよぉ……』

『負けたらペナルティか、何にもなしかってやつね。勝たないと次の段階にいけない』

『避けられもしなかったでござるね。仕方ないから行くでござるよ』

ピンクカメに引き連れられてチーム登録をさせられた。遊園地の入り口のように、チケット売り場が並んでいる感じの場所で、名前を書かされる。受付は、タイだ。

「トレーナーの私の沽券にも関わるのよぉ~ふぁいとっ!!」

ピンクのカメが胸? の前で手? 前足? を握り? しめている。

そんなに可愛くない。ウミガメはウミガメなんだ。

「トレーナーならアドバイスとかはないの?」

俺が聞いてみると、カメはうーんといいながら右前足を頬に当てる。いちいち仕草がっ! 可愛くねえよっ!!

「初戦はたいしたことないと思うんだけど、勝ち残って先に行けば行くほど相手は厳しくなるわ。今回の1番の強敵は、ほら、あそこにいる半魚人よ!」

青くてなんか、ああ、半魚人ですねという容貌の二足歩行のやつがいた。唇がこう、鯉みたいで、目がまん丸。入り口のエイと同じようなトライデント持ちだ。

「あのトライデントは痛いわよ~! 当たったら泣いちゃうわ!」

トーナメント表を見ると真反対にいるので、当たるなら決勝戦だな。

「勝ったら乙姫様の宴に呼ばれて、タイやヒラメの舞い踊りを見ながら宴会よ~! 私も是非参加したいから、絶対勝ってね!!」

ピンクのカメが投げキッスしてきた。やめろー!!