軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

218.ムジナの親子

お坊さんは、俺たちの2倍くらいの背たけをしていた。

想像していた通りの、黒い着物のようなのを着て、前に大きな首から提げる鞄みたいなもの。草履と脚絆。

そして大きな背丈。

近づくとどんどん大きくなる。

『これはダメだねッ!』

『柚子、言ってやれよ』

『柚子殿GOでござる』

伸び続ける入道を前に、柚子はつつつと進み出ると大きな声で宣言した。

「見上げ入道見越したのじゃっ!』

すると、キェーと遠くから声がして、するすると入道の背が縮む。

やがてぽんっと消えた。

入道の立っていた後ろに小道が見える。ここを隠していたのだろう。

俺たちは意気揚々と先へ進んだ。

溢れる藤の花。大きな大木がそこにはあった。

『【気配察知】に引っかかってる。藤の木の後ろ側』

『3匹くらいいるでござるね。ごくごく小さなものが』

警戒をしつつ近づくと、1度逃げ帰ったからだろうか、顔を覗かせたのは確かにタヌキによく似た茶色い生き物だった。

めちゃくちゃ警戒して木の陰からこちらを見ている。

『野生のタヌキは可愛くないけど~、この子はちょっと可愛い』

『とかいいながら容赦なく始末するくせに』

『なんなら真っ先に仕掛けにいくだろ』

ソーダと八海山からの突っ込みはまるっと無視したピロリ。

さて、何もしてこない相手に俺たちはどう立ち向かえばいいのか?

『さくっと凍らせるのじゃ』

『さくっと火の玉降らせるよッ!』

物騒な魔法使い組。

すると、そんな気配を悟ったのか、1匹がこちらに出てきて、後ろ足で立ち上がると両手を広げた。

『きゃー可愛いっ!』

『これ始末したら拙者たち悪者でござるね』

えーと、どうする?

顔を見合わせていると、ムジナもきょろきょろとこちらの表情を伺っている。

というか、化けるのだろう?

「ねえ、人の形に化けて話せないの?」

『セツナwww』

『あくまで会話で解決するスタンスでござるね』

『じぇんとるめーんなのじゃぁ』

『いたいけな獣をむやみに狩る気はないのですよ』

『ミュスの天敵がよく言うわ~』

するともじもじしていたムジナがくるりとひっくり返り、町娘風に変身した。煙や効果音はございませんでした。残念。

「ニンゲン、オレタチ、コロス」

「いや、いきなり飛びかかりはしないよ」

いいドロップ落とさない限りね。

状況を鑑みるに、このムジナは、この場所に来てもらいたくなかったのだ。

となると気になるのは藤の木の後ろ側から出てこない2匹。

「他にも誰かいるの?」

俺の問いに町娘ムジナはキッと鋭い目つきでこちらを睨む。

「ニンゲン、スグ、オレタチコロス」

今こうやって対話しているんだからそれはすでに破綻しているんですよーと言うわけにもいかず、悩んでいるとピロリがふらりと木の後ろ側に回ろうとした。

途端に町娘ムジナが飛びかかる。

ピロリは腕っ節だけでそれを危うげなく捕まえた。

「こら、手を出してこなければこっちも出さないんだってば。で、その後ろで倒れてるのは家族なの?」

怖い物知らずの来訪者に見つかったのが運の尽きだ。

なんだなんだと俺を初めとしてみんなが木の後ろ側を覗き込む。

びっくりして毛を逆立てているが固まって動けないムジナが1匹と、倒れてぐったりとしているムジナが1匹。

『たぶん試し切りの犠牲ムジナでござるね』

『あー、そゆこと?』

「ハナセ! ヤメロ、サワルナ」

「触らないけど、これ、このままだと死んじゃうんじゃないの?」

正解。【鑑定】で瀕死のムジナって出てる。

「なんか、薬草とかで治せないの?」

「ムリダ。モウ、シンデシマウ、ケガ、ナオラナイ。カアサン、タマシイ、トバシタ。ノロイ、コロス」

完全に原因だ。助からない。魂を飛ばして呪い殺す、か。

「魂飛ばしてるから、衰弱してるのではござらぬか?」

「これ、傷を治したら戻ってくるんじゃね? 八海山」

「うーん、モンスターの治療はしたことがないんだが……試しに魔法をかけていいか?」

町娘ムジナ、びっくりした顔で、ピロリの腕の中に収まっている。術が少し解けていて、目の周りが黒くて面白い。

「【ヒール】」

白い光がムジナの傷の周りにぽつぽつ漂う。

「お。瀕死のムジナが、大怪我のムジナにジョブチェンジしましたね」

「聖属性で死んだらと思って試してみたけど、いけそうだな。【ハイヒール】」

痛々しかったムジナの怪我がみるみる治っていった。

「カアサン!!」

やっと、ムジナに戻ればピロリから逃れられることに気付いてどろんと変化を解除する。駆け寄って傷口のあたりに鼻を近づけ何度も何度もこすりつけていた。

もう1匹のムジナも同じようにしている。

「ポーションでも飲ませてやるか」

「それよりもッ! 俺いいもの持ってるッ!」

と、案山子が取り出したのは生魚。それを倒れている母親ムジナの鼻先に置いた。

効果は抜群だ!!

ピクピクと動き出し、最後はガバッと飛び起きた。

そして魚にかぶりつく。

うん、野生生物もっと警戒しろし。

2人の子ムジナはそんな母親の背に鼻をこすりつけてた。

いやーいい家族の物語ですねえ……なんて思うわけなく。

「ねえ、ねえ聞いてる?」

ピロリがお食事の邪魔をする。

そして、親ムジナは自分たちが囲まれていることに絶叫した。

あーあ……子ども置いて一目散に逃げてったよ。子どもたちぽかーんとしちゃってる。

『まあこれで、ユキヒコさんの呪いは解けたかな?』

『たぶん? 生き霊的なアレでしょう?』

『きっとね』

一応町娘ムジナに念押ししておくか。

「それじゃあ、俺たち行くけど、もう入道に化けたりするのはやめてね。騎士団きちゃうよ。普通に敵わないから、そういったときは逃げてね」

俺の言葉にムジナ2匹はこくこく頷いて、何度もこちらを見つつ藪の中に消えていった。

《クエスト:ムジナの親子と見上げ入道 をクリアしました》

やっぱりクエストだった~。わーい。

《ローレンガの日本刀ショップが解禁されました》

どちらも個人アナウンスなので、日本刀買いたい人はクリアするといいよっていうクエストなのかもしれない。

ローレンガに帰ると、ユキヒコさんは起きていた。俺たちに感謝と、そして半蔵門線の日本刀の付与剣製造を請け負ってくれた。小太刀がいいと言うと、快くOKしてくれる。小太刀2本差しかと思ったが、片手は【投擲】用に空けておきたいそう。やっぱりこれは、レインボータートルエッグ集めだ!