軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212.真夜中の訪問者

部屋から首だけを出して左右を確認する。すぐ先の廊下が真っ暗で何も見え……見えますね。【夜目】ちゃん偉い。ただ、何もない。単なる廊下だ。

うーん、どういうことだろう。

扉を閉めて考える。

にげろにげろと言った声は幼い子どものものに思えた。子どもの幽霊が警告している?

と、【気配察知】で廊下の向こうに人が潜むのに気付いた。

次は【聞き耳】さんの出番だ。

声はとても小さく途切れ途切れ聞こえる。

「扉を開ける音がしたように思えたが……」

「薬を仕込めなかった……、……してから」

「【鑑定】持ち……警告が……危なかった」

完全に見張られていそうだ。

しかし、生け贄として連れて行くというならば、それこそ眠らせでもしていない限り、騎士を担ぐのは大変だぞ? となると次にしてきそうなことは、睡眠薬を嗅がせる? しびれ薬とか? 部屋に何か投げ込まれそうだ。ということで、扉の前に部屋の中にあったテーブルを移動しておいた。

窓ガラスを割られてとかいやだなぁ~。部屋の間取りは、わりと広めで、ベッドを3つ詰め込まれている。丸テーブルが1つと、椅子が2脚。窓に1番近いのがヴァージルだ。窓にベッドがくっついている。

うーん。窓側警戒したいんだが、ヴァージル起こしちゃいそうでいやなんだよなぁ。あと、野郎が寝てるベッドに入りたくありません。

【気配察知】は基本、人やモンスターに対してなので、飛来物に気付くのはなかなか難しいのだ。

なんてことを考えてるうちに、人が部屋の前までやってきた。俺はこちらで息をひそめる。ドアがゆっくりと押し開けられ……なかった。テーブルでガッ! てひっかかりました。

「どうした!?」

「あ、開かない!!」

ドアの向こうで精一杯声を落としてなにやら揉めている。

俺も声を抑えて応対した。

「どうしましたー?」

「!?」

すっかり寝入ってると思っていたのだろう。とても驚いたご様子。

「い、いや、きちんと眠れているか最後の確認に……」

ほおー?

「2人は眠っていますからお静かに。もう午前2時ですから」

ヒソヒソと相手をしてあげる。丑三つ時に人様の部屋に来たらダメだよ。

「あなたは……」

「あ、僕、来訪者なんで。そうそう、来訪者的にベッドの方角が拙くて、ちょっと移動したりなんだりでテーブルが今扉の前にあるんで、朝まで開きません。なので部屋から出ないので大丈夫ですよ!」

息を呑む音がした。

北枕がダメだったんですよ、ええ。

「それじゃあ、2人が起きてしまうので」

「そ、そうですね……」

ドアをはさんだ会話が終了だ。

が、時すでに遅し。

少し眠そうなヴァージルが身体を起こす。

「セツナ、どうした?」

寝起きのヴァージルショットいただき。パシャパシャパシャパシャ。

「ちゃんと部屋で眠っているか見に来たそうですね」

「……なぜテーブルをドアの前に?」

「入って来られないように?」

「……」

じっと見つめられる。

ああ、これが美女ならなび……かないけどなっ!! リアルなら余裕でなびくわ。

「セツナ?」

トラヴィスと一緒に見つかった時の顔ぉーっ!!

まあ、起きたならちょうどいいからベッドにお邪魔して窓から外を覗く。

あーいるいる。なんか村人ちょろちょろしてる。

「睡眠薬とかなんとか聞こえたんですよね。【鑑定】持ちとか。スキルに【聞き耳】というあまり褒められたものじゃないのがありまして」

「物騒だな」

そう言ってヴァージルはアランに枕を投げつけた。

ひどいな。

ヴァージルは身支度を調える。

アランはもぞもぞと粘っていたが、剣先でつつかれて仕方なく身を起こした。

「朝じゃないよね」

「午前2時ですねー」

「夜這いじゃなくて?」

「男3人を??」

「ヴァージルはよくあることだろ」

よくあることなの!? チラリと見やると彼は肩をすくめる。否定しないんだ。これは掘り下げるべき? 親衛隊のために掘り下げるべきなのか!?

だが、アランにとっては何の気なしのやりとりだったようでそのまま先を続ける。

「緊急事態?」

「になるかなぁという話です」

ここは1階。村の家なんてみんな平屋ですよ。カーテンの隙間から右往左往する村人を眺めている。こっそり、窓を少しだけ開けて種を落とす。

「【シードウィップ】【ブランチウィップ】」

人影が消えた隙を狙って、窓の外に門番を。こちらに害意がなければただの木だ。

前に騎士に攻撃しそうになっていたのは、俺のそばに山賊がいて、そちらに対する殺意を可愛い木ちゃんが取り違えただけ。

村人も夜目が利くわけではない。今日は月に薄い雲がかかっていて、見通しはよくないのだ。ばれはしなかった。あとは定期的に魔法をかけ直して様子を見よう。

そして再びノックが響く。2人に黙っているようジェスチャーして俺は扉の前に向かう。【気配察知】が誰もいないと告げる。

「なあに?」

「みんなにげて」

「でも、部屋から出るなって言われてるんだよ」

「みんなにげて。はやくにげて」

後ろを振り返ると、2人にも聞こえているようだった。怪訝な顔をしている。

「部屋を出た方がいいの?」

「にげて、にげて」

「ねえ、お名前は?」

「にげ……るしーる」

そして声が消える。

と同時に窓辺で悲鳴が上がる。木が仕事したようだ。

「テーブルをどけて出よう」

俺はテーブルを引きずってドアの前を開ける。が、再び悲鳴。それも複数人。ヴァージルがカーテンを開ける。村人たちが必死に逃げ惑う。何かがいる。

「……なんだ?」

アランが窓にへばりつくと、ソレが見えた。

ゆらゆらとゆらめく黒い布を纏っているように見える。ただ、その向こう側も薄らと目に入る。半透明のグレーの布の塊とともに、その身と同じくらいのデスサイズ、つまり死に神鎌が宙を漂っている。

セツナ:

鬼ごっこの相手って、死に神?

八海山:

そうだね。鬼ごっこルートに入ったのかな? 一定時間までは部屋の中が安全だが、そのうち中にも入り込んでくる。

セツナ:

家ごとデスサイズですっぱり切られそうですね。

八海山:

さすがにそれはないよ。俺たちとそう変わらない大きさだし。

ん? いやあれ、電信柱くらいの高さに見えるんだが?

「セツナ、家を出よう」

「そう、ですね」

今目の前で向かいの家がスパッと真っ二つにされました。上から下じゃないんだよ。横にスパッとだから逃げられる気がしない。

セツナ:

ちょっとサイズ感が違うかなぁ……?

ソーダ:

またなんか、レアルート引いたかぁ!?

生け贄拒否ったからかなぁ……?