軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.獅子の神様の遊戯

最終的に、彼らは、薬草園の向こう側で集まり、深刻そうにヒソヒソと話し続けた。

少し距離ができて内容まではわからないが……こりゃ、クエスト始まるなぁと、俺は彼らに近づく。

「大丈夫ですか? 何かお役に立てることがありますか?」

山のようにあるクエスト。できるならこなしていきたい。その方が楽しいし。

まあ、アンジェリーナさんに関わること優先だけど?

俺に声をかけられた神官たちは、ビクリと身体を震わせたあと、申し訳なさそうな顔をする。

「信徒の方を不安にさせてしまいましたね、申し訳ございません。神殿のことですので、ご心配は無用ですよ。どうぞ、あなたの行く末に神々のご縁がありますよう」

拒絶されました。

残念。

まあ、突然話しかけてきたヤツにベラベラ話す方がおかしいな。

俺はそれでは、と別れを告げて神殿内に戻る。と、よたよたと杖をついているおばあちゃんがこちらによろけてきて、あわてて支える。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ。すまないね」

そのままそばの椅子に座らせた。教会のように、椅子が並んでいる。

「ありがとう」

そう言った側からため息をつかれると、困る。

「大丈夫ですか?」

再び尋ねるしかなくなるのだ。

「ごめんなさいね、気を使わせて。いやね、また獅子の神様がお留守でしょう? ほんに、困ったお方」

「お留守?」

「おや、お兄さんはここらへんは初めてかい? 神殿のこの彫像、見てご覧。青い目に精彩がないでしょう?」

全然わかりません。

その後おばあさんが説明してくれたのは、なかなかに面白い話だった。

各街の神殿には同じように、祀る神々がおられるが、この首都アランブレの神は獅子の神だ。神はこの各街の彫像に、その身の半分を置き、残りが天から人々を見守っているという。

ただ、特にこの獅子の神は好奇心が強く、いつもふらふらと出歩いているらしい。

そうすると、神殿に獅子の加護を得ようと来る冒険者や兵士、騎士などは、その加護を得ることが出来なくなる。

「加護を、得るですか?」

「真摯な祈りが必要だよ。一朝一夕ではもちろん得られない。だが、信じて日々祈り続ければ、獅子の神様の加護を得られる……そこに御身の半分があればね」

ないから、はなから得られない。

「何か興味が惹かれるものがあったのかねぇ」

話し終えるとおばあさんは手を振って神殿を後にした。

うん、わからん!

わからないときは、本を読もう!

神殿を出ると、アンジェリーナの貸本屋へ向かう。

「獅子の神様について書かれた本はありますか?」

今日は目的が決まっているので尋ねると、すぐに2冊用意してくれた。

『獅子神とその眷属』

『獅子の遊戯』

また、お気に入りの席で読書タイム。

『獅子神とその眷属』は、タイトル通り、属神について書かれている。

ちなみに、本来のしし座と違って、この世界の獅子の神は、百獣の王そのままで、強き神という設定らしい。

ヘラクレスには殺されていない。

『獅子の遊戯』は、過去にあった出来事に、獅子の神がどう関わってきたかについて綴られている。

色々な戦争はもちろん、力を欲する者には、その勇猛さを提示すれば力を分け与えるという。

「獅子の神様がどうしたの?」

アンジェリーナが背後から問いかけてくる。

今日も美しい声だ。最低、一日一回この麗しき声を聞きたいな。

「実は、今神殿に獅子の神様の半分? がいないそうなんです。何でも好奇心が強いからと……」

「獅子は猫科だもの。好奇心旺盛なタイプはすごいわよ。獅子神様は好奇心旺盛なタイプって言われてる。昔からふらっと消えるらしい。で、飽きたら戻って来る」

「そうなんですね。猫か……」

猫の好きなもの……ネズミ? ハハハ、まさかな。

もうそろそろ街は夜になる。

バッドバットもわりといなせるようになっているので、ちょっくら見てくるか。

クエストは、どうも自動でフラグを踏んでいるようなので、それがまたどのくらいで無効になるかわからない。早ければ早いほうがいいだろう。

持ち物には食べ物がある程度詰まっているし、ミュスごときにダメージは受けないのでこのまま行くことにする。

久しぶりのフィールド。

素早さが上がったのでミュスへの攻撃もかなり早くなってきている。

バッドバットへは拾った石をぶつけて、ふらついたところで羽根に傷をつけたらこちらのものだ。

そうやってゲーム内で1時間ほど狩りをしていると、アイテムが限界になりそうだった。

平原のかなり奥の方まで来たし、これは一度帰るかと振り返ったところ……。

なんか、キャッキャ跳ねてる半透明の大きな肉食獣がいるー!

跳ねるたびにミュスも飛び交う。

うわぁ……。

呆然と見ていると、あちらも俺の視線に気づいたようだ。

『人の子がミュス狩りか』

頭の中に直接響いてくる声。低く太い男性の声だ。

「はじめまして。獅子の神様ですか?」

『いかにも』

「神様がミュス狩りを?」

『そろそろ彼奴らの王が現れる時期だからな。見廻りに来たのだ。が、此度は見つからぬ』

「ミュスに王!?」

それは、それは根絶やしにせねば!!!

『ミュスはその数を増やすと強い個体が生まれる。そして爆発的に増え、街の中に溢れる』

あー、露店で言ってたミュス大行進か。

『だが此度は程よくミュスが減っている。王が生まれるのはもう少し先のことになるだろう』

ちっ……。

『そなたは、ずいぶんと上手にミュスを狩るのだな』

「奴らは俺の仇敵なので、見つけ次第始末します」

たとえ荷物制限が来ようとも。その時はアイテム置いていけばいい。とにかく始末はする!

『ふむ、ならば勝負といこう』

「勝負?」

『時間内にどちらがより多くのミュスを狩るか勝負しよう』

「それは……面白そうです。ただ……もう荷物がいっぱいなので、狩った個体数がわからないですね……」

『そのようなこと、神である我に掛かれば造作はない』

と、自分の視界の右端に、数字の0が現れた。

これは、イベントか!

『準備は良いか? 人の子よ』

「いつでも構いませんよ!」

『ならば、そなたの勇猛さを我に示すがいい!!』

0の上にタイムカウントが始まる。

3、2、1、そして0と同時に10:00と現れ、ゲーム時間内の10分での勝負が始まった!