軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166.イコルム子爵の娘

清水というだけあって、泉はとっても綺麗。透明度すごい。底の方までよく見える深い湖だった。どこかに繋がっているのか、時折ぽこっと泡が浮いてくる。

泉はそれほど大きくはない。建て売り一戸建て50坪ってところかなぁ。向こう側までぎょろちゃんならジャンプ出来そうな距離。

あちこちから水の底を覗いていると、見つけた。

「アレか!」

底でキラリと光るもの。

ドボンと浸からないとだめかもしれないなこれ。だって、腕の長さより深いんだもん。

と思ったが、ここで生活魔法ですよ!! こんな綺麗な泉に飛び込んだら申し訳ないわ。

「【引き寄せ】」

手だけ泉の中に入れて唱えると、水の中をぐんと清水石がやってくる。よし、ゲットだぜー!

泉の中から取り出した清水石は透明なガラスの中に水をたたえたような不思議な模様をしていた。落としたら割れそうだから即【持ち物】へ。

アランブレへはクランハウスへぽちっとな帰還があるから便利だ。

「アーロンさん! とってきましたよ、清水石」

「それどころじゃありませんよ、イコルム子爵のお嬢様が山賊に襲われたんです!!」

うーん、聞いたことのあるシチュエーション。

「これから騎士団が山賊狩りに出向くそうです。冒険者の方も募集してらっしゃいますよ!」

「そうですか~」

「そうですか~じゃないですよ!! ここは参加して好感度アップです」

「アーロンさんが?」

「セツナさんがですよ!! 私は商人ですからっ!」

ええーっ!?

「なんで俺が……」

「私とセツナさんはもう一蓮托生ですよ!」

「えーっ!!」

とまあ、クエストの流れなのかなぁ。

アーロンに引きずられ、店から門のところまでやってくる。そこには騎士たちとそして厳しい顔をした身なりの良い男性、さらには先ほどのお嬢様。

「あっ!! お父様あちらの方です!!」

明らかに俺を指さすお嬢様に、アーロンさんがすごい顔をしてこっちを見てきた。

違う違う。俺、山賊倒した側ね。

「やあ、先ほどのお嬢さん。無事帰ってこられてよかったですね」

「おおお! 我が最愛の娘を救ってくれた冒険者かっ!! ありがとう!! 本当にありがとう!!」

アーロンさんの表情が180度変わりました。

身なりの良い紳士が一瞬で間合いを詰めて俺の両手を握る。

「是非うちの屋敷に。礼がしたい!」

「え、ええっ!? 俺、いや、僕は、そんな貴族の方のお屋敷なんて……」

とちょっと遠慮してみる。が、予想通りそんなんじゃ引かないお貴族様。

「何遠慮することはない! さあ、こっちだ。行こう!」

と、門横にあった馬車に招かれる。

「あ、アーロンさ~ん」

情けない声を出してみると、紳士はピンと来たらしく、アーロンも馬車に招き入れた。

貴族門を通ってお屋敷へ。

ヴァージルのところよりは少し格が下がるのかな? まああちらは街の領主だもんな。それでも綺麗なお屋敷だ。

「娘が山賊に襲われているところに通りかかり、見事な手際で片付けて名も語らず去って行ったと聞いたときは、どこの勇者だと思ったのだよ。それがこんなに若い青年だとは!! 今日は好きなだけ食べて行ってくれ」

突然のディナーへご招待。

「なあに、山賊は騎士団に任せておけばいい。根城を突き止めたそうだ。これでもうあのあたりも静かになるだろう」

上機嫌のイコルム子爵。

ご飯は美味しい。お上品にフォークとナイフを使って食べている。外側から使うと足りない気がするんだが、これ途中でまたくれるのかな!?

アーロンは迷いなく食べている。慣れているようだ。

「セツナ様はあちらにどんなご用でいらっしゃったのですか?」

「様はやめてください……」

助けたお嬢様はリオノーラ様。よっぽどかっこよく写っちゃったのか、目がキラキラしてるんだよ。

アンジェリーナさん以外のそーゆう目いらんので。

「俺……僕はこちらのアーロンさんの依頼で、清水石を探しに行っていたところだったんです」

「まあ、私も清水石を探しに行ったんですよ」

なぜお嬢様がっ!!!

俺の心の叫びが表情に出まくっていたようで、子爵が苦笑いしている。

「リオノーラは、少しその、好奇心が過ぎるものでな。私が仕事で家を出ている時に、使用人たちに無理を言って馬車を出したそうだ」

「あんな派手な馬車で……」

今度こそ心の叫びがお漏らししました。

「本当に、面目ない」

「ごめんなさい」

「まあ、お怪我がなくてよかったです」

アーロンが笑うと、しょんぼりしていたリオノーラに笑顔が戻る。

「私、今度のお誕生日プレゼントのお返しに、お父様に清水石を贈りたくて」

「なんと、そのような心づもりだったのか!」

ああ、可愛いリオノーラ、とかつぶやいてる。

溺愛してるなあ。

お嬢様、舌をペロッと出してるぞ。これで許してもらえるって確信しているタイプだ。

「ねえ、アーロンさん、そちらの清水石を譲っていただけないかしら?」

「ええ、構いませんよ」

「あれならまた俺もとりにいけますからね」

あ、僕って言うの忘れた。

やったーとリオノーラは大げさに喜んでいた。

さて、こっからだろ。

「君の商売用の品だったろうに、すまないな」

「いえいえ、お嬢様のお喜びになったお顔が見られてよかったです」

「もちろん代金は払おう。それ以外にも何か困ったことがあれば相談をしてくれ」

この流れ、俺が行くべきだ!

「あ、それならアーロンさん、あのこと……」

「いやいやいや、セツナさん、お貴族様の手を煩わせるようなことではないよ」

「ふむ、なんだね、言ってみなさい」

「実は、アーロンさん、イェーメールに2号店を出したくて――」

セツナさんだめですよ、などといった茶番を繰り広げたあと、洗いざらい話すことになった。

「ワルコーか。あそこなら私がなんとか出来る。任せておけ」

「お手を煩わせることになり……」

「よいよい、娘の笑顔が見られたんだ。構わない。それに、平民のなすことに口出しするのは貴族の悪い癖だ。正さねばな」

こんな風にクエストの流れがなっているんだなぁ。結構回りくどい。

《リオノーラ・イコルムからフレンド申請が届きました》

はい! お断りぃ~!!

「えっ!?」

びっくりおめめのリオノーラ。

「妙齢のお嬢さんが、ホイホイ男に連絡先を渡すんじゃありません!! 何か用があるなら、子爵様か、そこにいるほら、騎士さんから連絡が来るようにするから、ダメっ!」

女性はアンジェリーナさん以外お断りだっつーーーーーーのっ!!!!!!!

騎士さんとフレンドになりました。ハロルドさんだそうです。