軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133.付与と錬金

今回のレシピは、エルダードリュアスの枝、属性の花びら。この2つを使うという。

「一般的な付与師は花びらだけ使うらしいがな。俺らに言わせたらもったいないことこの上ない。エルダードリュアスは確かに手に入れにくい材料かもしれんが、これだけで付与の効果が3倍にはなる」

「3倍はすごい」

「だろう? 俺の持っているレシピはそれでもまだ少ない方さ。アランと色々試してはいるが」

錬金術はカクさんのように鍋で煮詰めるタイプと、 錬金秤(れんきんしょう) で作るタイプがあるらしく、今回の花びらは秤で作るらしい。

「見せてもらえますか!?」

「なんだ、弟子入りか?」

「あ……いや、弟子入りはできないです」

錬金術師のおっさん――イアンさんが、俺の様子を見て笑う。

「なんかなりたいもんでもあるのか」

「街でやりたいのは、本屋さんです……」

俺の答えが意外だったのか、イアンは驚き、ヴァージルは面白そうに頷いた。

「セツナは本当に本が好きなんだな」

好きなのはアンジェリーナさんですけど。

「ふうん……学びの姿勢は悪くないがな。まあ、錬金術師になるなら表向き薬師を名乗るしかない。怪しげな素材を集めることになるからな。二足のわらじは難しい職業だ。本気でその道を突っ切る気がないならお勧めはできねえな。まあいい。来いよ、見せてやろう」

カウンターの奥の扉を行くと、地下へ降りていった。

わあ、怪しい!! 雰囲気MAX!!

通された部屋の中央には大きな鍋。壁際のテーブルに高さ30センチほどの、天秤にしては大きなものがあった。秤、と言われて想像した上皿天秤じゃありません! あの、正義の女神様、テミスが持ってるやつ。持ち上げて使うわけにもいかないから、中央に支柱があった。

鈍い金色で、皿部分には細かく文様が描かれていた。

「じゃあ、始めるぞ」

枝を右の天秤に置くと、ガタンと均衡が崩れる。そしてテーブルの上にあった大小様々な壺へ、かなり太いガラス棒を突っ込んで、練って枝の上に垂らした。

茶色い粘度の高い液体が枝に触れると、青い煙が出る。

いくつかの壺に指を這わせて、1番小さな物を持ってきた。

新しいガラス棒から1滴垂らす。

ぽっ、と青い炎が枝を覆い、みるみるうちに茶色の粉になる。

「まずは火からやろう」

火の花びらをその粉の上に置く。

「素人は花びらそのまま触媒に使う。こいつの真価を見ることなく終わるんだ」

新しい壺。そこからは柄の長い銀のさじで、黒い粒をさじの先に少しすくう。

花びらの上にぱらりと落とせば、今度は赤い炎だった。

「これが火の触媒だ。あー、革袋持ってないだろう。確か、店にあったな。取ってくる。そこら辺のもん触んなよ!」

イアンがバタバタと階段を上っている間も、俺は出来上がった火の触媒に夢中だった。

魔女っぽい。

魔女の秘薬作ってるっぽい!! てか、出来上がった瞬間、右に傾いていた天秤が真っ直ぐ釣り合った。左に何も乗ってないのに。

触っちゃダメだって言われて触りたくなっているのを、必死で押さえています。

静まれ、俺の左手っ!!!

「何度見ても不思議な光景だな」

「ヴァージルは、どうやってイアンさんと知り合ったの?」

「アランから……いや、ミトからかな。ミトは錬金術師のために預言書について調べていたし、薬師のうちの何割かは錬金術師だということに気付いていたようだ」

この言い方……どっちともとれる。

ヴァージルはカクさんのこと知ってるの? 知らないの??

ローレンガには行ったことなさそうなんだよね。お米知らなかったし。会ってはないけど、友人が錬金術師とか聞いてる可能性はある。

まあ、隠しておくのがベターか。カクさんだけにっ!!

「ほら、革袋。これを腰のベルトに下げておくんだ。専用のポーチを作ってもいいな。多数の触媒を常備しておくなら専用の物を作った方が、見栄えもいいぞ」

【持ち物】ぶっ込みタイプなんでいらないかな~。

「あとは何作る? 持ってる花びら全部やるか?」

「……代金と要相談です」

「ヴァージルが払うのかと思ってた」

「払うよ」

「来訪者を甘やかしたら調子に乗るからダメですよ」

ということで、イアンにも牛丼をお裾分けするということで、今回だけの特別価格となった。1属性10万シェル。本来は倍。ぴえーーー!! それで20回は付与できるらしい。つまり、1付与1万シェル。ぴえん……本たくさん読める。

「付与師は金の掛かる職業でしたか……」

「世の中なんでも強くなるには金か時間か、どっちかを取られるんだよ」

ごもっとも。

花びらが5属性しかないので、また取りに行こうという話になった。レインボーシータートルも。あそこも経験値が結構旨いし、何より金策が……。虹亀卵、美味しい~!!!

前の日夕方からずっと付き合ってもらったヴァージルとはここでお別れして、俺はクランハウスへ。ルンルン気分でアンジェリーナさんのお店だ。

そうそう。風鈴! カウンターの上に吊してくれてる。クランメンバーには、なんかイベント用かもしれないのにと言われたが、それなら柚子の分があるしいいだろうし、こうやって吊してくれてるのが嬉しいのでよき。

「こんにちは~」

「いらっしゃいセツナくん」

今日も麗しいアンジェリーナさん。さて、読みますか~。

知力UP、なあ。振るしかないんだろうけど、30分に1度、3回程度かぁ。

これでも10プラスされてるんだよなぁ。付与めちゃくちゃMP使うんですよ。

適当にと思いつつ、付与関連を探してしまうのだ。

だけど、著書が……アランさぁーーん。

まあ、いいや。せっかくだから読んでおくか。別の人の付与話も読みたいなぁ。もしかしたら別の街の本屋にはあるかも。イェーメールとアランブレは近すぎるのかもしれない。

とはいえ、ここで読むことに意義があるので時間いっぱいはここで。

迷惑にならない時間で移動。イェーメールへ向けてミュス狩りつつ、と、そうだ。そうだそうだ。牛も狩ろう。

「【火付与】」

ブルーブルを狩っておかねば、牛丼作れない。

金も地位も容姿も持ってやがるヴァージルはもう、胃袋掴むしかないだろ!!

火を付与し、【ひと突き】を繰り出すと、ブルーブルがまさかの一撃で倒れた。

「えええ!?」

すごい性能だなぁ、付与。