軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

110.領主の妾

『俺がさ、猫又の話聞いたって言ったじゃん? 定食屋で、たぶん俺に聞かせるようになってたんだと思うんだけど、おトヨの方って言ってたんだ、領主のお妾さんだって』

さっきキクとが消え去る間際に言っていた名前と同じだ。

『この定食屋の前に、貸本屋店主に、幽霊関連の本の棚を聞いたら、幽霊と、妖怪と、猫又についてはって教えられてたからたぶんそのせいなんだけど、猫又推してくるんだよ』

そこで俺は調べました。

猫又、おトヨの方、有名、のキーワードで。イマイチだったので、トヨを漢字に直すことにした。トヨで有名っつったら豊臣の豊だ。そうしたら引けました。

『鍋島の化け猫ってのがあってさ、猫が妾を食って成り代わるってのがあるんだよね~』

三大幽霊のときもわりと事柄を簡単にしていたから、こちらも簡単にしているのだろう。本来はこの猫ちゃん恨みを晴らすために頑張ってる側だからね。食っちゃったのはアレだが。

『にゃんにゃんパラダイス崩壊でござるか……』

『お妾さんが猫ちゃん集めてるらしいし』

や、俺もそうなったらショックだよ。にゃんちゃん可愛かった。

『よし、行ってみよう! 領主の屋敷だっけ?』

『ここの領主様名前知らんけどなんだろう?』

『ナベシマだったりしてwww』

「このような夜中に、人を招き入れることはできませぬ」

門兵さんに止められました。

お屋敷の周りはぐるりと柵があるんだよ。

「マシヴェニャ様は寛容な方でいらっしゃいますから、昼間、猫を可愛がるのは何も問題ありませんが、このような時間は迷惑です」

『逆さから読むとニャヴェシマ、ナベシマだぁ……誰も気付いてないのかよ』

『気付いてもにゃんにゃんパラダイスを手放すのが惜しかったのかもしれないな』

『ニャアに惑わされてるのよこれ……』

『夜は無理なのかぁ~でも、化け物退治は夜がメインなのじゃよ』

『なんか方法ないのッ?』

さてどうやって突破しようと考えていると、突然お屋敷の方で叫び声が上がった。

ここの庭とても広い。本当なら聞こえないような距離なのかもしれないが、しっかり耳に届きました。

「何事か!?」

「領主が、領主がご乱心めされた!!」

ガシャーンと何かが割れる音もする。

門兵たちはそちらへと走り出す。

『これは、イベント起きてるな。よっしーやったろー!』

『どうせならここまで終わらせてから情報落としだな』

『せっかくだから動画で発表じゃよ! そーちゃん』

『騎獣回はヴァージルさんいるから動画化やめたしなー、久しぶりに稼いじゃおっかな~』

『そーちゃんの還元祭始まるっ!!』

『うちのヴァージルがすんません……』

そうか、動画化しなかったのか。まあ、したらしたですごかったろうな……やだよ、Marchサーバーのヴァージル親衛隊さんたちの怨嗟を、一身に受け止めるのは。

『ヴァージル親衛隊は、今は見守る方向になってたよッ!』

『それはよかった……本当に』

走りながらくだらない話をたくさんしていると、白い寝間着姿のおっさんがやってきた。

殿様ヘアーではなかった。なんだ……。

「ああ、ああ……やめろ、来るなっ!!」

そう言いながら刀を振り回している。

『目が血走っていて危険が危ないのじゃぁ~』

『また日本刀でござる……』

物欲しそうな半蔵門線。

『どうしたら戦闘になれるんだろう』

『まず化け猫さん探しじゃないの? というか、化け猫に憑かれてるからご乱心なのよね、きっと、これは』

『せっかくだから今のうちに屋敷内に侵入してやろうか』

『さんせーッ!』

『ゴーゴーなのじゃ』

皆結構チャレンジャー。

人の家のタンス漁る勇者タイプ。

「領主様、お気を確かに!」

「領主様!」

とげとげ付いてない刺股構えてたよ。捕縛に最適!

俺たちはそんな様子を見ながらこそこそと屋敷の中へお邪魔します。

和風建築だから庭から好き放題入れる。

土足……って思ったら気付かないうちに靴が脱げてた。

『おお……』

『たまに運営がその場に応じたことしてくれるよ』

『貴族の屋敷に汚い身なりで行くと着替えさせられたりもするらしいッ』

『私は香水屋に着替えを用意されたのじゃ……ドレス、動きにくかった。あれデバフかかるぞ』

障子と襖を越えて、半蔵門線が怪しい気配のする方へと俺たちを導く。

【気配察知】のレベルを上げていくとそんなこともできるらしい。やっぱりもう少し常日頃から使うように気をつけないとだなぁ。ちなみに、【隠密】は結構使ってる。騎獣を採りに行ったときも、訓練がてら使おうとしたが、ヴァージルのキラキラオーラのせいで使えませんでした。嘘です。ヴァージルが話しかけてくるから【隠密】すぐ切れる。

誰かと一緒の時レベル上げするのは難しいようだ。やはりミュス狩りで上げるしかない。

と、足下に猫。

「にゃぁ~ん」

「にゃ~」

つい答えちゃった。かわよ……。

「にゃ?」

「にゃん」

「にゃぁ~」

うん……、多い、多い多い多いっ!!

『にゃんにゃんパラダイスでござるぅ……』

『不穏だからね、化け猫、猫又屋敷に、猫がやまもり!』

『え、猫攻撃するの? 動画化したらめちゃくちゃ叩かれそうなんだけど!?』

『にゃんはどうやったらどっか行ってくれるんだろう……』

そして、半蔵門線が、行くでござるよと宣言して開いたふすまの先には、黒髪の美人さんがお布団で横座りしてました。

「あら、どちら様かしら。こんな夜中に、家主の許可も得ずに……」

「家主さんがご乱心なので、何か原因はと探していたんですがね」

ソーダが答えている。

「あのお方は最近あまり眠れないみたいだから……そのせいかしら?」

「眠れていないのですね、睡眠は大切です。しかし、なぜ眠れないのでしょうかね」

おトヨの方(名前表示アリ)は艶然と微笑む。

アンジェリーナさんには敵わないけど、それなりの美人さんだ。

「さあ、私にはわかりかねるわ?」

会話でボロを出す気はないらしい。いきなり斬りかかったら、こちらが悪者。だって外見は完全におトヨの方なんだもん。NPCと敵対関係になっていないのに攻撃したらこちらがアウトです。

にゃんこ……ミュスでもぶら下げてきたらよかったか?

またたびとかか。あ、いやそれよりも。

『八海山、ワンって吠えて』

『……それなら、獣人のスキルに吠えるがあるからそれを使うか。みんな準備していてくれよ』

そして発せられる声は、完全に犬そのもの。しかもうなり声からの大きなワン、だ。

それまで足下にいた猫たちは一斉に逃げ出し、おトヨの方の顔が……にゃー! 耳とヒゲ、そして口元がにゃんこー! アウトぉー!!

「正体を現したな、化け猫めっ!! 領主を夜な夜な苦しめた猫又が、成敗してくれる!!」

『いよっ! そーちゃん日本一っ!!』

『決まったね、決まった。さ、何が通じるかなぁ~』

まあ、退魔師の延長線だから、新しいスキルが炸裂するんじゃないかな!!