作品タイトル不明
第261話雑談
ダンジョンの1階でも普通のペースで歩いていればかなり広いもので、散歩するにはちょうどいい。
そして散歩に限らず、秘密の話をするには向いているのだが、なんとなく話の流れで僕らの会話は雑談へと移行していた。
「そう言えば夏休みの間に他のダンジョンに潜ったよ」
「……そうなの?」
「ちょっと部活でダンジョンの近くに行く用事があって」
「そうなんだ。他所のダンジョンってどんな感じだった?」
「うーん。意外と違って面白かった。出てくるモンスターも癖があったし」
「……モンスターなんてどれも癖だらけだと思うけど?」
「それはそうなんだけど。何というか……北欧風?」
「北欧風? じゃあこのダンジョンは?」
「……和洋折衷?」
「なにそれ? レストランか何か?」
「言い得て妙だ。ダンジョンもバリエーション豊かで面白い」
おおっと? クラスメイトの女子と普通にお話できてるいるじゃないの僕?
フフン……やればできるじゃないか。そして一笑いも起こせれば、僕としては大金星ってところだと思う。
「フフッ……私はダンジョン自体を流石に面白いと思ったことはないけれど……そう思えるもの?」
まぁ内容は適当なものだったが、さすがに月読さんの答えには首をかしげてしまった。
「……」
「なに?」
「いやー……楽しんでなきゃクイーンにはなれないんじゃないかなって」
ただ思わずそう指摘すると月読さんの眉はつり上がって不愉快そうに唇を前に突き出し、不満を口にしていた。
「やめてよ。……まぁちょっとくらいは楽しんでいたかもね?」
「はっはっはっ。そういうの大事でしょう。飛び込んだ以上は楽しみも必要だろうし」
「そんなものかしら? 命懸けなのに?」
「命懸けでもだよ。楽しみもないんじゃ命の懸け甲斐がないってもんでしょう?」
「まぁ。そうかも……」
ちょっと適当なアドバイスにも思えたが、本心でもある。
さて軽い情報交換はこれくらいでいいかな?
僕は満足して頷くと、さっと手を上げた。
「じゃあそういうことで……」
「待って」
僕はもういいかなっと話を切り上げて帰ろうとしたんだけど、ガシっと肩を掴まれて、逃走を妨害されてしまった。
「……何かな?」
「何も解決していないわ。なにかこの妙な状況を改善できないかしら?」
「……うーん。解決といわれましても? ……ガチャ解禁以外でだよね?」
「…………ガチャ解禁以外でお願いするわ」
血を吐きそうに台詞を絞り出す月読さんには悪いけれど、正直ちょっと自重すればどうか? くらいの事しか思いつかない。
さすがに面倒くさくなってきたとは言わないが、正直面倒くさい話である。
要するに精霊を配ったことで爆発的に強くしてくれる存在だと認識されたからクイーンなんて祭り上げられている。
実にノリの良いクラスメイトではないだろうか?
ただ、ことが真面目に死活問題だから熱意が半端ではないのも迂闊に手を出せないポイントだった。
「うーん。精霊の他に何か目新しい強くなれる可能性を示せれば、いいかも?」
「そんな都合のいい方法ある?」
ただ月読さんに不満そうにそう言われて、そこで僕はピンときた。
あるじゃないか、休みの間に頑張って作ったアレが。
思いついてしまえば話は早い。
僕は売り込みをするために目の前の迷えるクイーンに提案してみることにした。
「実は……是非ともお勧めしたい新情報があるかも。じゃあ月読さん。これからとある場所に案内しようと思うんだけど、付いてくる気ある?」
「え? ……これから売店に行ってみようと思っていたんだけど?」
「ガチャは禁止だからね? でもちょうどいいや。僕も売店に案内しようと思ってたからね」
何だ簡単じゃないかと僕は笑う。
むしろ話が早いまである。
長い準備期間の成果をお得意様に披露するべく、僕はワクワクしながら自慢のお店に彼女を案内した。