軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第188話禁断の攻略

シャッターの音が響きファイアーボールヘッドガールとガスマスク侍が撮影会を開催している姿を僕らはぼんやりと囲みの外から眺めていた。

レイナさんはともかく、浦島先輩までポーズがキマっているのはどういう理屈なのだろう?

背の高い二人が画面映えするポーズを決めると、それはもう写真映えするに違いなかった。

そして僕らは、一旦様々なごたごたが終了して、心地よい気疲れを感じながら完全に観戦モードである。

「うーぬ、疲れたなぁ。速攻完売ってビックリしたよ。これもビジュアルパワーなのかな?」

「先輩は顔、燃えてたでござるけどね」

「いやー顔隠れてても、オーラあるよあの二人。パワーはすごいんじゃなーい?」

「そうでござるなー」

魂の抜けた会話は、数々の試練にもまれた証だった。

しかし撮影会中の二人は楽しそうだが頑張っているのだし、そろそろ僕らももう一つの目的を達成する頃合いだった。

「よし……じゃあ、行こうか」

「……そうでござるな」

僕らはよっこらせと立ち上がる。

向かう先はもちろん通称コミケダンジョン”ユグドラもどき”である。

「あっ。でもその前にちょっとゴメン。もう一人来る人がいるからその人も一緒に潜りたいんだけど?」

そう切り出すと桃山君は困惑顔を浮かべていた。

「別に構わないでござるよ。誰でござる?」

「もうすぐ来るはずなんだよ……あ、ホラあそこに」

それは偶然スケジュールがピタリと合った、クラスメイトだった。

僕は時間通りに待ち合わせ場所にやって来たメガネのイケメンが周囲の様子に戸惑っている様をしばし眺める。

そこにいるだけで、周囲の人から視線を集めているあたり彼は本物だった。

「……ホントにあの人でござるか?」

桃山君がマジかという顔で尋ねて来たが、僕は間違いないので頷いておいた。

落ち着かないようなので急いで迎えに行くとハバキリ君はこちらの顔を見てパッと表情を明るくすると、小走りでやって来た。

「ああ……よかった。すぐに合流できた。何かイベントをやっているみたいでずいぶん混んでいるんだな」

「そうなんだよ。久しぶりハバキリ君。ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって」

我がクラストップパーティの相棒枠。

テストの成績はトップのハバキリ君とは彼の事である。

何を思ったか連絡先を交換しようと言い出した彼との接触を今ここにしたのは何を隠そう僕の仕事だった。

「何かのイベントなのかな?」

「そうだよー。アニメとか漫画のイベントだよ。僕らもチョット参加させてもらっちゃったんだ」

「そうなのか……ボクは、あまりなじみがないから、よくわからないんだ。すまない」

「そうなんだ。まぁ娯楽だからね。機会があったら楽しんでもらえると嬉しいな」

「あ、ああ。そうさせてもらうよ」

雑談感覚で軽くジャブを放つ。

だが困り顔で頷くハバキリ君を見て、僕とそして桃山君は察してオタクモードは終了し、ダンジョンモードに切り替えた。

「じゃあ、ダンジョンに向かおうか?」

「……分かった。じゃあちょっと先輩達に一言言ってくるから先に行っててもらって構わないかな?」

「ああ。それならボクは先に入り口に向かっているよ」

ハバキリ君は快く了解して、ダンジョンに向かった。

そしてその背中が見えなくなったタイミングで、大層焦った表情の桃山君はなぜか小声で尋ねた。

「……彼、ひょっとして一般人でござるか?」

「……まぁそうみたいだね」

「……お、鬼でござるか? それでここを待ち合わせの場所に選択するとは……」

「それは仕方ないじゃない。ダンジョンの入り口もここなんだもの……。それに……興味がないなら堕とせばいい、そう思わんかね?」

「……っ! 可能なんでござるか?」

「……僕らの愛してやまないコンテンツの力を信じよう」

「……それは事実上不可能なのでは?」

まぁ同年代まで触れてこなかったコンテンツへの入門となるとハードルは高かろう。

何気にどんな娯楽も、素養を養う期間ってやつが必要なものだ。

その不可能を可能にするとキメ顔で言ってみた僕だが、普通なら試すこともしなかっただろうと確信できる。

しかし……僕は今から許されざる罪を犯そうとしていた。

ハバキリ君と連絡先を交換したあの日、僕は攻略君に最悪な質問をしたのだ。

「……ねぇ攻略君。せっかくだからハバキリ君を確実に沼に引きずり込む方法とか教えられない?」

……ほんの出来心だったんだ。でも、攻略君は回答してしまった。

『では攻略チャートを始めようか―――』

「……っ! い、行けるのかそんなことまで……」

『当然だろう? 彼が一度手を出せば沼にどっぷりハマるおすすめ作品を紹介しよう』

「……マジかよ」

攻略君おすすめの作品は、正直言って意外だった。

それはオタクに優しいギャルが登場する、甘い恋愛ものであった。