作品タイトル不明
第156話奴は我々の中でも最弱
「では、本日はレベリング重視を意識して潜ってもらう。もう通達している通り、本日はサブカルチャー研究部の皆さんとの合同探索だ。皆、今回は基本彼らの方針に従うように!」
「「「「はい!」」」」
なんて返事は恐ろしくいいが、腹に一物あるのはその表情を見れば明らかだった。
そして八坂生徒会長は生徒会用のミーティングを終えると今度はこちらに来て、いきなり謝罪から入った。
「すまない。メンバーは変えようかとも考えていたんだが……どうしても行くといって聞かなくてな、断り切れなかった。一人はこの間もめた奴なんだが……」
「あー……でも全然かまいませんよ。今日は分け隔てなく。誰でもレベルアップ待ったなしの特別メニューを組んでいますので存分に楽しんでいってくださいね!」
「……う、うん。今日はよろしく頼む」
「ええ、もちろんですよ」
今日やって来た生徒会のメンバーは全部で6人。
あえて因縁あるメンバーで乗り込んできたことはいい度胸をしていると思う。
ただ理解を求める、相互に歩み寄る必要があるというコンセプトだとしたら、ブレてはいないのだろう。
そして彼らは生徒会でも中核をなすメンバーだというのは雰囲気で理解できた。
双方共にずいぶんとピリついているようだし、何とかしてかましてやりたいという空気を感じるんだけど……僕の見解は少し違った。
ここで雰囲気に乗っかって、レベルでわからせるのはとてもわかりやすい。
しかし僕としては別の路線を推し進めたい。
生徒会がサブカルチャー研究部より偉そうで、何の問題があると言うのか?
むしろ逆にへりくだられても、キャラ崩壊の解釈不一致である。
ここで彼らにマウントを取るより、むしろ仲よくする――つまるところ誤解を恐れず言えば目指すべきは篭絡である。
最終的に、こいつらやるじゃん? くらいに見直される程度の意識改革で十分すぎる効果は見込めるのではないだろうか?
「何をするつもりかは知らないが、半端なことだけはしないでくれることを願いたいものだな」
「……」
と思っているのだが、腕を組み不愉快そうなのを隠していない女性の先輩が、厳しい表情で僕らを睨んでいる。
しかしそれはすさまじく難易度が高そうだと、僕は改めて覚悟した。
彼女の腕章には書記と書いてあった。
書記さんったら、そんなにピリピリしなくてもよくない?
浦島先輩の提案で頭が燃えていなかったら、僕がビビりまくっていることが筒抜けになってしまうところだった。
「ワタヌキ氏……炎がめっちゃキョドッてるでござる。カートゥーンみたいでござるよ」
「マジかよ……そんな機能があったとは驚きだよ」
この炎、僕の心情を忠実に再現しすぎだと思うんだ。
でもそういうコミカルな動きは嫌いじゃないので、愉快な機能だとポジティブに受け止めておくことにした。
「最初から飛ばしているな氷川のやつ」
「当然でしょう……でも彼女は……」
何だかそれっぽい会話で庶務と書いてある大柄の男性と、風紀と書かれたキチッとしてそうな女性が話していたが二人もまたこちらを見る視線の鋭さはかわらない。
どうしたものかと悩んでいると、準備を終えたレイナさんが戻って来た。
今回生徒会の面々を案内するのは彼らと一番面識のあるレイナさんにお願いしたのだが、早まったかもしれない。
何だか面倒な役を押し付けちゃったなと思ったのだが。
「お待たせしました! では! ここからはワタシが案内します! ちゃんとついて来てください!」
「はい! よろしくお願いしまぁす!」
……レイナさんの姿を見た瞬間、あれだけ不機嫌そうだった書記さんが豹変した。
それはもう声色が別人かと思ったほどである。
そして生徒会の中では、それは想定されていた事態のようだった。
「……まぁ奴はああだよな」
「……わかっていましたけど。やることをやっていただければ問題ありません」
やれやれと肩をすくめる庶務さんと風紀さんの反応を見て僕らも察した。
「……なんだただのファンか」
「実は期待していたのに、本人いなくてイライラしてたんでござるね」
これ……どうにかなりそうだな。
なんだろう? 案外歩み寄るのは簡単なのかも?
あれだけの好感度を持った推しが急に移籍してしまったら、ああもなろう。
我々はファン具合を見誤ってしまっただけなのかもしれない。
やっぱり相互理解と言うのは重要か、僕は今ならちょっぴり優しくなれそうだった。