軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第148話新形態

「やー。最高でしたね!」

レイナさんのオンステージ、もといパワーアップの儀式が終わり、僕らは一端カフェに戻って死臭漂う戦場の匂いを香ばしいコーヒーの香りに上書きしていると、どこからともなく現れるのは、何時ものメンバーだった。

流石はサブカルチャー研究部のメンバーだ。

このビッグイベントを見逃さない嗅覚は賞賛に値した。

浦島先輩と龍宮院先生、そして桃山君は完全に観戦モードで店員に口々に注文を出し、準備を万端に整えて定位置についた。

「で? 今から何が始まるの?」

龍宮院先生は、何となく察しているのか表情が引きつっていたけど、その予想は大当たりだった。

「レイナさんの、新スキルお披露目ですけど?」

「ほう? 今度はなに教えたの? また変なこと教えたんでしょう?」

「なんてこというんですか浦島先輩。人聞き悪いですね。とてもためになる裏技しか教えてないですって」

「裏技なんじゃん」

また浦島先輩は人の悪い笑みを浮かべて、誤解されそうなことを言う。

僕の言葉に嘘はない。

今回レイナさんが身に着けたスキルは、正直画期的だと言わざるを得ない代物だった。

「その名もネクロマンサー専用裏スキル“冥王化”です」

「「「冥王化?」」」

「それは……修羅化と同じ感じがするでござるが」

桃山君の言う通り。このスキルは同じ性質の切り札である。

「まぁそうだよ。魔力と精神力を一時的に急激に上昇するスキルだ。いざという時の備えには違いないけど……このスキルのすごいところはそんなちゃちなもんじゃない」

「な、何でござる?」

ゴクリと喉を鳴らして桃山君に尋ねられたが、そこで待ったをかけたのはレイナさんだった。

彼女はまぁ待ってくれと主に僕に釘を刺しつつ、自分の胸に手を当てた。

「ここからはワタシが説明します。せっかくお披露目の機会なんです、直接見なきゃもったいないですよ」

「それはそうかも」

ムフーと鼻息も荒く、レイナさんは精神を集中。

そのスキルを使用した。

とたん、レイナさんは全身に暗いオーラを宿し、冷たい風がカフェを駆け抜けた。

そして新たな力を解放したレイナさんは瞳が黄金色に輝いて―――耳がにゅっと伸びた。

「「「エルフだ!!」」」

「その通りです! すごいでしょ!」

浦島先輩も桃山君もそして龍宮院先生すらテンションが上がる。

僕は腕を組み、後方で一人静かに頷いた。

とても満足である。実に満ち足りた気分だ。

レイナさんの褐色の肌にネクロマンサーというジョブ、そして長い耳。

まぁぼんやりと輝く瞳だったり、若干明るめに光る髪とか細かい変化はあるが、冥王化したレイナさんを見ているととある単語が頭をよぎる。

「……ダークエルフでござるよ! ダークエルフは本当にいたんでござる! 拙者好きなんでござるよね! こう……ギャル味があってかわいらしいというか……」

ただそんな桃山君の指摘には、思わず物申してしまった。

「え? 待って? 桃山氏? それは違うよ? ダークエルフとギャルは全く違うものじゃないかい?」

「は? いやいや、ワタヌキ氏、類似属性でござるよ何言ってるんでござるか?」

「いやいやいやいや、桃山氏そこは譲れんよ? ギャルとダークエルフじゃ子供と大人くらいの違いがあるだろう?」

「何言ってるんでござるか? 褐色の肌に、すべてを自然に受け入れる包容力、ホラ類似点が多々見られるでござる。それに混ぜるというのは重要なことでござろう?」

「いやいやいやいやいや。属性が違いすぎると思うんだよ。快活でかわいらしいギャル的なかわいらしさって、子供寄りのかわいらしさじゃん? 対してダークエルフは今まで重ねて来たであろう老練な知的さ、大人の魅力がキーになる。相反すでしょうよ? 共通点褐色の肌くらいしかないって」

「おおっと? ダークエルフに子供時代がないとでも? それこそ柔軟性が足りないでござる。ギャルのダークエルフ……拙者大いにありでござるよ」

「……フゥ。語るに落ちたね桃山氏。ギャル”の”ダークエルフだって? 言葉を足している時点で、それは別のものだと認めているも同然じゃない? それに状況が変動したら、もはや別属性になるのが当然だ。それにロリのダークエルフとは言っても、大人のダークエルフとは言わないのがスタンダードなダークエルフ像を証明しているんじゃないかい? だからこそダークエルフとギャルは厳密に分けられなければいけないと僕はそう主張したい……あっ」

しまった、ついめっちゃ早口で語ってしまった。でもそこは譲れなかったんだもん。

しかし桃山氏も、やはり主張は曲げられないか。

平行線。この界隈ではよくある事だった。

浦島先輩は、大いに理解を示していた。

「うんうん。大いに語りたまえよ後輩たち。議論もまたオタ活の一つ。新たな扉がまた君の前に現れるだろう」

妙に達観したことをを言っている浦島先輩は高みの見物である。

しかし、僕は肝心の主役をついカヤの外にしてしまっていることに気がついてハッとした。

「待ってください、……つまり」

レイナさんが割って入り、僕らは青ざめた。

正直、この場面でのヒートアップは最悪だった。

まさに失策。

こういう長くなりそうな不毛な話はあとでチャットででもやればよかった。

僕は罪人が判決を待つような心地で、レイナさんの言葉を待つ。

そして彼女は目を輝かせて言った。

「ダークエルフとギャルの要素をナチュラルに併せ持つワタシが最強と言う話ですね?」

僕と桃山君はレイナさんの言葉を聞いてお互いに視線を合わせる。

だがそこで過った様々なセリフは、どれも適切なものではなかった。

「「……そうだね」」

「何で反応が微妙なんですか!?」

レイナさんはヒデェよと声高に主張するが、こればかりは仕方がない。

「いやぁ。そりゃあもう素晴らしいとは思うんでござるよ?」

「でもこの話の流れだと……まずいかなって?」

いやだって、そらリアルコスプレとなるとまた派閥が分かれるじゃん?

なんて言わないし、現実で限りなくダークエルフに近しい存在になったレイナさんに言うのはあまりにもあんまりだ。

でもそこには確かに、ドロッとしたこだわりが存在するのである。

世の中には様々な好きが存在するが、その多くは他人には決して伝わらない拘りで細かく好みが分かれることが多いのだと僕は思う。

それでも、好きだからこそ僕らは打ち解け、場合によっては対立するのだろう。

では、拘りはともかく不毛な争いはこれくらいにして、撮影会などはやっていく心づもりだった。