作品タイトル不明
第142話いろんな試み
『吸魂石さえ手に入れてしまえばもう材料は揃ったも同然だ』
攻略君チャートに従って、僕は鉱石フロアで原石をスキルで生成し、素材を用意。
だけど簡単と言いつつもやはりいろいろ手を伸ばすと大変で、今できる事をしていたら最低限の準備が整う間に約束の日はあっという間にやって来た。
その日、僕は東雲さんの普段使っているという工房にやって来た。
それは学内にあるもので、一応は自由に使っていいことになっているらしい。
「はーこんなところあるんですね」
「結構便利なんですよ。自分で持ち込んだものもありますが……やっぱり刀を作るとなると足りないものも多くて」
とは東雲さんの言葉だが、こうして自由に機材が使えると言うのはいろいろと捗りそうだった。
これなら僕らが集めてきた素材も存分に役立ててもらえそうだと判断して、僕はさっそく本題に入った。
「すごいですね……じゃあいったん、助けになりそうな素材を渡しますね」
「あ、はい……お願いします」
アイテムボックスから取り出したのはひとまず3本分の刀の素材だった。
しかし刀三本となると攻略君厳選とはいえ結構な量がある。
そしてそのどれもが一般流通なんてしていない激レア素材なのだが、東雲さんもその辺りの目利きは効くようで、ずいぶん戸惑っていた。
「な、なんか……すごい材料じゃないですかこれ?」
「すべてダンジョンの素材ですが大したものではないです。それで、この吸魂石という素材は絶対使って打ってみてください。あと注意点は……打つ時に自分の魔力を込めることを意識して、これだけでいったん大丈夫です」
「……それでうまくいくんでしょうか?」
「まぁまぁ。物は試しですから、あんまり焦らずに。なんなら試しに小刀でも打ってみてください。全部ダメにしちゃっても大丈夫ですから、足りなくなったらいつでも言ってくださいね?」
「は、はい……」
僕としてもそう簡単に刀が出来上がるとも思っていない。
しかし出来上がったのなら、今度は再び僕らの番である。
あんまりプレッシャーをかけるのもどうかと思うのであまり期待しすぎないように、今回は気長に待ってみることにしていた。
というわけで、一旦大仕事の最初の僕のパートは終了である。
せっかく時間ができたので僕は売店の方の様子を見に行ってみることにした。
立ち寄った売店は当たり前みたいに松林君が店番をしていて、僕の顔を見ると声を掛けて来た。
「よぅ! 店長! 調子はどうだい!」
「こっちのセリフだよ……相変わらず売店に来てるみたいだね」
「もちろん! 売店にも真っすぐ来られるようになったけど……なんなんこれ? これもやっぱスキルなの?」
そう松林君が不審がって尋ねると、僕の頭の中で攻略君の声がした。
『君が店員として認めたからだね。君が店に真っすぐ来れる様なパスが、彼にもできているんだね』
なるほど。不思議なもんだ。僕のスキルは売店を作ると店員の任命もできるのか。
僕が気軽に任命したから、彼はガッツリ店員になってしまったというわけだ。
この迷いやすいダンジョンで、チェックポイントを作れるという意味では有用かもしれないけど、やらかした感じである。
ある意味今後も使えそうな効果を、僕はあらかじめ知っていたという事にしておいた。
「……まぁーそうだよ? スキルだね」
「やっぱそうなのか! ……うーむ、オレも変なスキル欲しいなぁ」
「変なスキルて」
そりゃああんまり見ないけど、その希望はどうなんだろう?
ただまぁスキルを覚えるというのはある種の憧れでもあるので、気持ちはよくわかった。
しかし店長としてはせっかくなのでお店についても聞いておくべきだろう。
「それはともかく店の方はどう? 相変わらずお客は来ない?」
まぁ来てないだろうなと聞いてみたわけだが、松林君は予想外の事を真顔で答えた。
「いいや。来たよ客。しかもガッツリ買い物してった」
「…………えっ!?」
それはビックリするほど大進展。
僕は訝しんだ。