軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

疑問の答え。

真実を伝えることが最も良い、というのは、マイラーの信条であってウェルミィには関係ない。

結果的に良い方向に働いただけで、これがもっと悪い事態に陥る可能性もあったのだ。

ルトリアノの出現でミザリが体調を崩したように、万が一、ヘーゼルが『生きろ』と望んだルトリアノへの復讐として自殺の道を選んでいたら。

「『真実』は、私の大切な友人を殺すかもしれなかったのよ。貴方が危険を犯すのは勝手だけれど、次そういう真似をしたら……貴方が大切にしているという従姉妹を、取り戻した上で目の前で殺すわ」

そこで初めて、マイラーの瞳が揺らいだ。

ウェルミィが本気だと理解したのだろう、チリッと不穏な色が瞬き、次いで怒りを抑えるように一度深く呼吸をする。

「理解出来たかしら。それが 貴方のやったこと(・・・・・・・・) に対して、私が感じたのと同じ気持ちよ」

「……オーライ、苛烈な侯爵夫人。信条を曲げるつもりはないが、その件については浅はかだったことを認めよう」

マイラーがこちらを真っ直ぐに見つめて、さらに言葉を重ねようとするが、ウェルミィはそれを遮る。

「謝罪はいらないわ。申し訳なく思うなら、今後の行動で示しなさいよ」

「……分かった」

ウェルミィは、そこでパチン、と扇を閉じる。

「実際、『宿命』を得たら【賢者の石】探しは捗るでしょうし。私たちとしては助かるわ」

【 旧詩篇(アウゴサーム) 】の解読にしたって、いちいち通訳を介して読み解くより、読み解ける人間に渡してしまう方が色々やりやすいのも事実である。

マイラーは、軽く頭を掻きつつ目を逸らす。

「やっぱり、真正面から敵に回すにゃあんたらはデカ過ぎる。結局、飼い主が変わるだけだしな……これが悪手だったのか好手だったのか分からねぇ」

彼自身の利益は確実にあるけれど、新しい首輪を嵌められたと思っているのだろう。

「手を出してきたのはそっちでしょう。前の飼い主みたいに無理やり言うこと聞かせてる訳じゃないわ。処刑しなかっただけ温情があると思いなさいよ」

言いながら、ウェルミィは扇の先端でトントン、と自分の胸を叩く。

「悪手と思えば悪手、好手と思えば好手よ。『デカ過ぎる』私たちの助力を得られて、目的を達成すれば晴れて無罪放免、と思えばいいじゃない。考え方次第でしょ」

「……まぁな」

苦笑するマイラーに、片眉を上げた後、もう一度釘を刺す。

「言っとくけど、裏切ったら地獄の底まで追いかけて叩き潰すわよ」

「その言葉は、そっくりそのまま返してやるよ」

ーーー交渉成立ね。

有用なら敵でも罪人でも取り込む。

それは、そもそもライオネル王家の方針だけれど、ウェルミィ的にも性に合うものだった。

無能な敵は味方にしても害しかないけれど、有能な敵は味方にすれば利益倍増である。

牢の窓越しなので握手は出来ないけれど、ウェルミィはマイラーと、目を見交わして挑発的な笑みを向け合った。

「で、私が聞きたいことだけれど」

「ああ」

確認を終えた後に、ウェルミィはようやく本題に入る。

「貴方やマクスウェルの他の人達に〝解呪〟の力が使えないなら……貴方は、どうやって地図への〝解呪〟を試したの?」

そもそも、マクスウェルがリロウドと同じく〝解呪〟の力の持ち主だと思っていたから、疑問に思わなかった点である。

そうではないと聞いてから、いったい誰が、と疑問に思っていたのだ。

するとマイラーは、ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「誰だと思う?」

「そういうのは望んでないの。質問に答えなさい」

「これを聞きゃ、すぐに分かるよ。地図の〝解呪〟を試したのは、ライオネル王都に来てからだ。ここには、正式な手続きを踏んで対価を払ったら平民でも仕事を頼める、とんでもない腕前の解呪師がいるからな」

その言葉に、ウェルミィはポカンとした。

思わずマイラーの顔を凝視するが、これについても嘘をついていそうには見えない。

民間で腕がよく、かつ魔術的に解析を行なって無力化するのではなく『〝解呪〟の力』が使える解呪師など、多分この世に一人しかいない。

「え……お父様に頼んだの?」