軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

85 ダンスパーティーと王宮庭園

私とリシャール様は、王妃様とファーマソン公爵夫妻との対談を終え、その足でパーティー会場へやって来た。煌びやかな会場。そして煌びやかな正装やドレスを着た人々の姿。

「とても素敵ですね、リシャール様」

「はい、そうですね。エレンさん、お疲れではありませんか?」

「え? 来たばかりじゃないですか」

「それはそうですが、先程まで話通しだったでしょう」

「ああ、それは……はい」

「俺は口を挟む余地がありませんでした。流石はエレンさんです」

「そ、それは褒めていただくようなことでしょうか」

「もちろん」

結局は言いたいことを言っただけではある。本当に、ここからはノーラリア夫人次第だ。

でも、あの様子なら『いい方向』に向かうのではないだろうか。

まぁ、そのいい方向が誰にとってかは別の話だ。

「まだダンスは始まっていないみたい。というより、主賓がまだなのかな?」

「……王妃様があちらにいらっしゃったので、王家が揃うまで待つ予定なのでは?」

「まぁ、それって」

私たちのせいで予定が詰まっているということでは? 王妃と公爵夫妻をすぐに動けない場所で留めて。うーん。黙っていたらバレないかな!

王族が一所に揃うのもどうなのかという話はあるが、ここは一応、王宮内である。

自由に動き回れない面はあるが、安全性は高い。

ちなみに気分が悪くなったりして帰る場合の、帰り道は、きちんと自由に行き来が出来るように工夫されている。

「では、もうしばらく休憩ということに」

「そうしましょう。飲み物を取ってきますよ、エレンさん」

「いえ、一緒に行きましょう? 身体は疲れていませんから」

「分かりました」

リシャール様に手を引かれながら、飲み物を用意している場所へ移動する。

その過程で……あら。見掛けると少し気まずい人たちがいらっしゃる。

「…………」

ハリード様とリヴィア様だ。二ヶ月ぶりぐらいかな。

そう。以前の王都での話し合いから、二ヶ月は経過しているのだ。そして彼らとて貴族の夫婦。

それも子爵家で、英雄。いちいち王都にまで出掛けてきたいかどうかは微妙なところだが……。

事が王太子の婚約披露パーティーと銘打たれているもの。参加せざるを得ないか。

私は、目が合ってしまい、固まってしまった二人に対して無言で軽く頭を下げておく。

特に近寄って親しく話を始めるという関係ではないだろう。

あちらも固まってから、私の行動を見習って無言で礼を返してくれた。うん、それでいい。

特に私たちは、それ以上の接触をすることなく離れていった。

リシャール様と一緒に飲み物を取り、喉を潤しながら主賓が登場するのを待つ。

しばらく待っていたら、国王陛下と王妃様が現れた。やっぱり予定が詰まっていたのは私たちが原因っぽい。ふふふ、知らんぷりしていよう。周りの人たちに気付かれないように。

そして国王夫妻に続いて出てくるのは、ユリアン殿下とセルモニカ公女。

「皆よく集まってくれた。今日はめでたい報告がある。それは……我が息子、ランス王国の王太子であるユリアン・フォン・ランスと、リュースウェル公爵令嬢セルモニカ・リュースウェルの婚約が調ったことである!」

私たちは、会場に集まった多くの貴族たちと共に祝福の拍手を送る。

そしてユリアン殿下、セルモニカ公女がそれぞれ挨拶をしてから。二人は会場の中央へと移動し、ファーストダンスを始めた。

優雅な音楽が奏でられ始め、二人の婚約は王国貴族一同、祝福の空気に満ちていた。

「エレンさん、俺と踊っていただけますか?」

「ええ、リシャール様。一緒に踊りましょう」

ユリアン殿下たちのダンスが終わると、貴族たちがそれぞれのタイミングで譲り合いながら会場の中央へと移動し、パートナーとのダンスを披露していく。

私たちも、それらに倣って会場の中央へ。

「さぁ、踊りましょう、リシャール様」

「ええ、エレンさん」

たっぷり二か月も練習期間はあったのだ。それだけに時間を費やしたワケではないとはいえ、もうずいぶんと慣れたもの。

私とリシャール様は息ピッタリのダンスを披露して見せた。

私たちが踊る。王太子殿下たちが踊る。王妃様たちが踊る。ハリード様たちが踊る。

皆が踊る。ああ、最後……ではないけれど。

顔面蒼白なジャック氏が、ノーラリア夫人に引き摺られるように会場中央へと移動し、ダンスを踊る姿を見られた。

終始、顔色が悪い様子のジャック氏と比べて、ノーラリア夫人は憑き物が落ちたように晴れやかな表情で。きっとこれから二人がそれぞれに向かう未来について話し合うのだろう。

そこに私が干渉することはない。

そうして、ひとしきりダンスパーティーを踊り終えた後。

私は約束通り、リシャール様に連れられて、会場を離れて……王宮庭園へと移動した。

「まぁ! とても素敵な場所ですね、リシャール様!」

「はい。とても綺麗だ」

今夜は満月。月明りに照らされた庭園は、幻想的で、ただでさえ整っていて綺麗だろうに。

よりいっそうその美しさを際立たせているようだった。

「エレクトラ・ヴェントさん」

そんな幻想的で、美しい場所の中央。石畳で整えられた場所で。

リシャール様は片膝を突き、私を見上げた。

「……はい、リシャール・クラウディウスさん」

私は、ただ彼の言葉を待つだけ。とても長かったような気もする。

あっという間だったような気も。ただ、この時が、私は。

「俺と結婚してください、エレクトラ・ヴェント。俺は……貴方を心の底から愛しています」

とても無骨で、ストレートなその言葉を受け入れるだけ。

「──はい、お受けします。リシャール様。私と……結婚してください」

受け入れて、返事のような、私からのプロポーズでもあるような言葉を返した。

「エレンさん……!」

「ふふ、リシャール様」

私たちは、どちらからともなく抱き合って。

そして……満月の下、王宮庭園で唇を重ねた。