軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

・閑話・キース様 sideバーバラ 後編

「お嬢様っ! キース様がお迎えに来られました」

「えっ!?」

週明け、学園に向かうための準備を行いそろそろ出ようとした時、大慌ての執事に告げられた内容に驚いてしまう。

キース様はウィルハルト殿下を迎える必要があるため、殿下よりも早い時間に学園に向かわれる。私は起床後に体を動かしてから学園に通っているため、キース様と一緒に登校した事は今まで一度だってない。

だから迎えに来てくださるなんてことありえないのに。半信半疑のまま早足で玄関に向かうと、本当にキース様がいらっしゃった。

「ど、う、されたのですか?」

「今日はバーバラを迎えに行くよう……」

途中で言葉を切り、目を大きく開け、なにかに驚かれている。

「キース様?」

驚くよう事があるのかと周囲を見渡すも、いつも通り……よね?

あ、ご挨拶をし忘れていました。

「おはようございます」

「あ、あぁ」

本当にどうされたのでしょうか?

「キース様、体調が悪いのですか?」

「いや……」

「ですが、少しお顔が赤いように思います」

「だ、大丈夫だ」

熱があるのでは? と妹達にするように、私のおでことくっつけて確認してみる。

「大丈夫だっ!」

肩を捕まれ、瞬時に離されてしまいました。

わぁ!

なんとか声には出さずに済んだものの、キース様がこんなにも力が強いとは思いませんでした。

「が、学園に……向かおう」

「? はい」

心配。顔も赤いままですし……馬車に乗り込んでからもずっと黙り込まれ……本当に大丈夫?

いつもなら甜菜砂糖の話や殿下とクラウディア様の話などをされるのに、口元も片手で抑えていて……もしかして吐きそうなのかしら?

「キース様、本日は学園をお休みされてはいかがですか?」

「大丈夫だ」

「ですが、お顔も赤いですし」

首に腫れがないか確認——よかった。腫れはなさそうです。

「だ、大丈夫だ」

伸ばした手を取られ、不謹慎にもドキッとしてしまったわ。

「大丈夫ならいいのですが……」

「心配する必要はない」

私の心配は必要ないってことでしょうか。などと言って嫌われたくはないので、体調の変化を気にしておくようにしましょう。

*

キース様の手を借りて馬車を降りると、周りにいた生徒に驚かれてしまう。いつも別々で登校している私達が一緒なのが物珍しいのかしら? 分かります。私も同じ気持ちですわ。

廊下ですれ違った方も、教室に入ってからも……皆様同じ用に驚愕の目をされている。

はっ!! 皆様キース様が側近から外されたと思われているのでは? そんな事はないはず。明日からはいつも通り別々に登校するようにしなければ。

ここでは聞き耳を立てている方が多いので、話すのはお昼休みにしましょう。

授業の準備をしながら、今までにないこの状況が妙に緊張してしまう。などと考えている間に、クラウディア様や殿下方が教室に入ってこられた。

「おはようバーバラ」

「クラウディア様! おはようございます」

「バーバラ、約束を守ってくれてありがとう」

「約束? ……っ!!」

今日は侍女にお任せし、化粧はいつもより濃く、まとめている髪も下ろしているんでした。

もちろん髪飾りも。

朝から驚くことが多く、忘れていました。

「あっ! これよね? キース様からの贈り物。ほらやっぱり、バーバラにとってもよく似合ってる」

「あ、ありがとうございます」

私がいつもと違うから皆様に見られていたのですね。

「ねっ。キース様もそう思うでしょう?」

「はい」

この場で似合わないなんて言えませんもの。でも、嘘でも肯定してもらえて嬉しい。

「むふふ~。ウィル様、成功しましたね!」

成功?

「うん。得意げなディアも可愛いね」

「ウィル様っ///」

得意げなお顔も、殿下に『可愛い』と言われ照れていらっしゃる姿も本当に可愛い。

サブリナ様がすっと差し出された鏡で、どんな顔なのか確認され……

「……全然可愛くない」

ふふ。先程とは違う顔になっていますけど、可愛いですよ。クラウディア様は不服のようですが。

クラウディア様の側にいるとどんな人も毒気が抜けてしまう。騎士としては常に気を張っていなければいけないのに、とても心地よく、一度知ると抜けられませんね。

私にはない癒やし効果。

「ディアが可愛くないことなんてないよ」

でました殿下の溺愛発言。……羨ましい。

私もキース様に……。

……キース様に?

わわわ! 烏滸がましくも、溺愛してほしいだなんて思ってしまいました。

え?

え?

私……

クラウディア様を羨ましいと思っていたのは、嫉妬していたから?

「私、ずっとキース様に恋していたのね……」

「っ!! バーバラ!?」

「あっ、私声に」

出してしまっていました///

恥ずかしくてキース様のお顔が見れないです。あっ、クラウディア様! 『後は若いお二人で~』とオジサマみたいな事を言いながら離れないでくださいませ。

「あの……」

「俺も」

「えっ?」

「——俺もずっとバーバラに恋してるから///——」

とっても小さな声でしたがはっきりと聞こえました。

これからは……たまには侍女にお任せするのもいいかもしれませんね。

後日、両片思いの私達にヤキモキしていたクラウディア様が、買ったまま渡せずにいた髪飾りを渡すよう、キース様の背中を押していたことを知りました。私もクラウディア様に背中を押されたから勇気を出すことができましたし。

「私達、また助けられましたね」

「これからはたまに迎えにいけるから」

「ですがっ」

「クラウディア様がろーてーしょんを組んでくださった」

そのろーてーしょんというが何かは分かりませんが、側近の皆様が順番に婚約者を迎えに行けるようにしてくださったそう。

これだからクラウディア様の側から離れられないのよね。