軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62.黒い土と、希望の種まき

黄金の種もみ(麦)を手に入れたわたし達は、さっそく拠点の裏手に広がる荒れ地へと移動した。

瓦礫と有毒な汚泥が広がる、不毛の大地だ。

「土は毒で汚染されてるし、小石だらけのゴミ溜めだ。とても農業には適さない土地だぜ?」

と、コノア。

もっともな疑問である。

「大丈夫だぜ! 兄貴がなんとかすんだろ! へい! 兄貴! 最高の田んぼを作りましょうや!」

相棒のコノワは能天気に張り切って、 鍬(くわ) を構えている。

部下たちもやる気満々だ。

「まずは水を引いてきて、ここを泥沼にしなきゃな!」

「川から水を汲んでこい!」

「ちょっとストップ」

わたしは慌てて彼らを止めた。

「小麦は『畑』で作るんだよ。田んぼみたいに水浸しにすると、根腐れしちゃうからね」

「へ? そうなんすか?」

「うん。必要なのは水じゃなくて、ふかふかの『土』さ」

わたしは足元の硬い地面をコンコンと踏み鳴らす。

「まずは、この瓦礫の山をどかそう。……でも、ただ捨てるんじゃないよ」

わたしは指示を飛ばす。

「君たちには分別作業を任せる。鉄くずやプラスチックは、いつものように資源として回収。そして、腐った木材や生ゴミ……本来なら燃やすしかないゴミは、別にして集めてほしい」

確かに、遠隔買取で一気に除去するやり方もある。

でも、あれは結局除去した後に、わたしが一人で分別作業をしないといけないのだ。

広範囲の買取が可能になり、たくさんゲットできるようになった。

けれど、たくさん買い取ったものを分別するのに、かえって手間がかかるようになってしまったんだ。

より資源を効率よく使うことを考えるなら、手分けした方が良いときもある。

全部じゃないよ? そういう時もあるってことだ。

「生ゴミっすか? そんな汚ねぇもん、何に使うんで?」

「これが、土の栄養(肥料)になるんだよ」

リサイクルショップの基本だ。

ゴミをゴミとして捨てず、資源として活用する。

「了解っす! おい、生ゴミを集めろぉ!」

資源回収部隊の動きは素早かった。

数百人のマンパワーであっという間に瓦礫が撤去され、一箇所に大量の生ゴミの山が築かれる。

「よし、ここからがわたしの仕事だね」

わたしは瓦礫がなくなり、剥き出しになった灰色の地面に立つ。

長年の汚染でカチカチに固まり、所々毒で汚染された死んだ土だ。

ここに、集めた生ゴミをぶちまける。

「スキル発動――【 仕様変更(リメイク) 】!」

ズズズッ……!

わたしの魔力が、地面と生ゴミを包み込む。

イメージするのは『浄化』と『融合』。

土壌に含まれる有害物質を分解し、生ゴミを有機肥料として土に馴染ませる。

本来なら数年かかる土壌改良を、魔力で強制的に完了させる。

ボコッ、ボココッ……。

灰色の地面が波打ち、変色していく。

硬く冷たい感触が消え、空気を含んだように膨らんでいく。

「な……土が、黒くなっていくぞ!?」

数秒後。

そこには、見渡す限りの「黒土」が広がっていた。

踏みしめると、ふかふかと柔らかい感触が返ってくる。

腐敗臭は消え、代わりに森のような甘く芳醇な土の匂いが漂う。

「すげぇ……これがあの汚染された土地かよ……」

「まるで高級な花壇の土だ……」

「これなら、どんな野菜だって育つよ」

わたしは額の汗を拭い、コノワたちに振り返る。

「さあ、種まきだ。みんな、一列に並んで」

わたしの号令で、部下たちが横一列に整列する。

全員の手には、先ほど改良した『リオン小麦1号』が握られている。

「いくよ。自分たちの未来の食い扶持だ。願いを込めて蒔いて」

「おうっ!」

一斉に、腕が振られる。

黄金色の種が、黒い土の上にパラパラと舞い降りる。

それは、死の世界だった廃棄都市に、初めて「生産」という概念が生まれた瞬間だった。

最後に、みんなで手分けして水やりをする。

シャワワワ……。

優しく水を撒いていく。

すると。

ポコッ。ポコポコッ。

「ああっ!? 兄貴、見てくだせぇ!」

コノワが指差す先で、黒土を割って、小さな「緑の芽」が顔を出した。

一つだけではない。

次々と、可愛い双葉が大地に生まれていく。

「うおおおおおっ! 芽が出たぁぁぁ!!」

「生きてる! この死んだ街で、植物が生きてるぞぉぉ!!」

男たちが歓声を上げ、抱き合って喜んでいる。

ただの芽だ。

でも、彼らにとっては、明日への希望そのものなのだろう。

「このペースなら、数日で収穫できるね」

わたしは広がる緑の絨毯を見渡して、ニヤリと笑う。

「よし、収穫祭の準備も始めようか。……小麦ができたら、最高の『ラーメン』を食わせてあげるからね」

「らーめん!? なんだか知らねぇけど、絶対美味いやつだ!」

湧き上がる歓声の中、わたし達の農場開拓は、最高の結果で幕を開けたのだった。