軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

46.移動手段の確保と、市場調査レベル3

白骨樹の森を切り拓き、黒くて平らな「近代風道路」が完成した。

これで廃棄都市デッドエンドへの道は繋がった。

人だけでなく、物流の要となる重要な大動脈ができあがったわけだ。

……繋がったのはいいけれど。

「若干、遠いんだよねぇ……」

完成した道路の先を見つめ、わたしは溜息をつく。

道が良くなっても、距離が縮まったわけじゃない。

屋敷から廃棄都市までは、およそ15キロ強ある。

15キロ。

日本にいた頃、田舎の学生は一時間以上かけて学校に通うなんて話も聞いたことがあるけれど、ここは舗装された日本とはわけが違う。

いくら道を作ったとはいえ、子供の足で毎日往復させるには、あまりに過酷な距離だ。

馬車を使っても片道数時間はかかるし、徒歩なんてもってのほか。

それに、道中にはまだ魔物が出る可能性がある。

普通の馬車では、襲撃された時に逃げ切れるか不安だし、なにより往復だけで半日潰れてしまうのは効率が悪すぎる。

「これから本格的に廃棄都市の改革をするなら、何度も往復することになる。安全に、かつ素早く行き来できる『移動手段』が必要だね」

「リオン様」

わたしが腕組みをして悩んでいると、アナが小首をかしげて尋ねてきた。

「移動手段でしたら、先日の戦いで手に入れた『戦車』や『クルーザー』があるではありませんか。あれを使えば良いのでは?」

確かに。

イキリ太郎たちから回収した現代兵器は、移動手段としては強力だ。

装甲も厚いし、速度も出る。

けれど……。

「うーん、あれはダメなんだ。燃費が悪すぎるから」

「ネンピ、ですか?」

「そう。運用コストのことだよ」

わたしは苦笑する。

あの戦車や船を動かすには、ガソリンや軽油といった「化石燃料」が必要になる。

でも、この世界にガソリンスタンドなんてない。

動かすたびに、わたしが RP(リサイクルポイント) を使って、【 商品修繕(リペア) 】で燃料を「満タンの状態」に戻してあげなきゃいけないんだ。

ここぞという時の決戦兵器ならともかく、毎日の通勤手段として使うには、ポイント消費が激しすぎて現実的じゃない。

タダ同然で走れるエコな車じゃないと、運営が破綻してしまう。

「なるほど……。便利な道具にも、裏があるのですね」

「そういうこと。だから、この世界にあるエネルギーで動く乗り物が欲しいんだ」

わたしがチラリと視線を送ると、鍛冶師のトールがニヤリと笑った。

作業着の裾から覗く小柄な体躯。見た目は愛らしい少女だが、その腕は超一流のドワーフだ。

「ならば主よ、『魔導車』を作るというのはどうじゃ?」

「魔導車?」

「うむ。王都の金持ち連中が道楽で乗っておる、魔力で走る鉄の箱じゃよ。構造自体はそう難しくない。わしなら設計図も引けるし、魔導回路も組めるぞ」

胸を張って断言するトール。

さすがトール! 頼りになりすぎる!

「ただ、問題は動力源じゃ。あの鉄の塊を高速で走らせるには、純度が高く、強大な魔力を秘めた『風の魔石』が必要になる」

風の魔石。

風属性の魔力を含んだ結晶体だ。

市場で買おうとすれば、目が飛び出るような値段がするだろう。

「設計図はある。ボディの材料になる『鋼鉄』や『ゴム』も、戦車を分解して手に入れたものがある。……あとは、エンジンになる魔石だけか」

ないなら、探せばいい。

わたしには、そのためのスキルがある。

「【 市場調査(リサーチ) 】」

わたしはスキルを発動させる。

ウィンドウが展開し、周囲の地図情報が表示される。

このスキルは、レベル1の時は「ゴミの価値を調べる」だけの鑑定スキルだった。

レベル2になって、「地下資源(鉱脈や水源)」を探知できるようになった。

そして今、わたしのスキルレベルは3に達している。

解放された新たな機能は――『生物資源探査』。

つまり、魔物の体内にある素材(魔石)を、ピンポイントでサーチできるのだ!

「検索条件……『風属性』『高純度』『大型魔石』!」

ピピッ!

頭の中のマップに、レーダーのように波紋が広がる。

屋敷の周辺には反応なし。

白骨樹の森……ここにも、目ぼしい反応はない。

さらに範囲を広げ、未開拓の森の奥深くまでスキャンする。

すると。

『反応あり。対象: 嵐鷲(ストーム・イーグル) 』

マップの端に、強烈な赤い光点が灯った。

ストーム・イーグル。

常に暴風を纏って空を飛ぶ、災害級の怪鳥だ。

「いた……! あいつだ! あいつの心臓部にある魔石なら、間違いなく魔導車を動かせる!」

わたしが指差した先は、険しい岩山の方角。

「獲物かい? 狩りかい?」

「主の新しいオモチャのためとあらば、我の剣で切り伏せてくれよう」

わたしの言葉に即座に反応したのは、餓狼団のガラと、剣聖キリカだ。

二人とも、退屈していたのか目が輝いている。

「よし、トールは設計図の作成と、必要素材の準備をお願い。わたしとキリカ、ガラは、エンジンの材料を調達してくる!」

「応とも! 最高にイカした車を用意して待っておるぞ!」

役割分担は決まった。

最強の素材を手に入れて、この世界最速の魔導カーを作り上げてやる!

わたしたちは意気揚々と、怪鳥の住処へと走り出した。