軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.ゴミ山から蘇る、妖艶なる暴食の魔剣

アナの濡れたメイド服を、リペアした。

濡れた状態から、乾いた状態へのリペアだったので、そこまでポイントはかからなかった。

「うぐ……ぐす……いい歳した大人なのに……漏らしてしまいました……」

「よしよし」

「もうお嫁に行けない体になってしまったので、リオン様、責任……取ってくださいね」

「はいはい」

「言質、いただきましたー……!」

落ち込んでいたアナの瞳に、カッと生気が戻る。

さっきまでの儚げな美少女はどこへやら。今は「計画通り」と言わんばかりの、したたかな笑みを浮かべていた。

復活早っ。

「……なるほど……今の感じで言質を取ればいいのか……」

キリカさん?

何をブツブツ言ってるんだろう……?

「しかし、随分と船の中が様変わりしたな」

キリカが船内を見渡して言う。

確かに。さっきまではカビ臭くてジメジメした幽霊屋敷だったのに、今は高級ホテルのようにピカピカだ。

廊下の木材は飴色に輝き、壁の照明には魔法の光が灯り、水漏れ一つない。

新造船、いやそれ以上にグレードアップしている。

「船が手に入ったのは僥倖だな」

「でも死滅海を船で渡れるかな……?」

「う……それは確かに……」

死滅海は、常時、荒れ狂っている。

船を出すのは至難の業。というか、不可能だ。

せめて、凄腕の船乗りがいればいいけど……うちの家臣には、そういう人はいない。

いないものはしょうがない。

「それより、持ち主の許可が出たんだから、船の中のものを物色させてもらおうか」

「そうですね」

「海賊船らしいから、さぞ宝を溜め込んでいることだろうっ!」

ワクワク、キリカさん。

かくいうわたしも、ワクワクしている。

一体……どんな掘り出し物があるんだろうっ。

わたしたちは船の中を歩いて行く。

船長室へと続く廊下には、かつて海賊たちが飾っていたであろう絵画や、異国の調度品が並んでいる。どれもリペアのおかげで新品同然だ。

程なくして、わたしたちは倉庫らしき場所へと到着した。

重厚な鉄の扉。

ガチャリとレバーを引き、重い扉を押し開ける。

「「「おー!!!!!」」」

思わず、わたしたちは叫んでしまった。

……倉庫の中は、宝の山だった。

壁際にずらりと並んだ木箱や樽。そして部屋の中央には、立派な宝箱がいくつも積まれている。

まるで童話に出てくる財宝部屋そのものだ。

宝箱は、どれも経年劣化している。

でも劣化しているのは、外だけだ。

キリカがいそいそと近づいて、蓋を開ける。

「「「おおぉおおおおお!」」」

なんてことだっ。

金銀財宝が、たんまり入っていたのだっ。

「す、凄い……これは……とんでもないぞっ」

「古の時代の金貨ですわ。これはかなり希少価値が……高いです! 宝石も!」

アナが別の箱を開ける。

そこには、ルビー、サファイア、エメラルドといった宝石が、無造作に放り込まれていた。

ランタンの光を受け、眩いばかりの輝きを放っている。

「すっごい……こんなにたくさん、ピッカピカの財宝が……あるなんて!」

売ってよし、RPにしてよしっ。

やったっ、これで……家臣みんなに、良い生活を送らせることができるぞー!

「早速回収しようか。八畳分しか貯蔵できないから、残りは袋に詰めて、物理的に運び出すしかないね」

とりあえず【買取】スキルの貯蔵庫に、限界まで金銀財宝を放り込んでおく。

持って帰るのも一苦労だ。

財宝たちは結構重いからね。みんなを呼んで、運び出してもらわないと。

「リオン様。これを見てくださいませ」

部屋の隅で物色していたアナが、わたしを呼ぶ。

どうしたんだろう……とわたしは彼女の元へ向かう。

アナの前には、鍵付きの宝箱が置いてある。

他の宝箱とは違い、これだけ厳重に鎖で巻かれ、封印されていた。

鍵付きってことは……。

「かなりのお宝だと思われるなっ! よぉし! ボクに任せて!」

キリカは黒殻の魔剣を手に取る。

「ガイアス流剣術奥義、【 虎爪斬(こそうざん) 】!」

キリカの背後に、巨大な虎の幻影が揺らめく。

放たれた一撃は、鋭い爪のように空間を引き裂いた。

ザンッ!

ガキィイイン!

宝箱は無傷のまま、鍵と鎖だけが綺麗に切断されていた。神業だ。

「さぁて……お宝お宝……って、あれ……なんだこれ……?」

キリカが、首を傾げる。

わたしたちも中を覗き込む……。

そこにあったのは、折れ、錆びついた……刀だった。

刀身が半ばでポッキリと折れてしまっている。

赤錆が全体を覆い、もはや元の輝きなど見る影もない。まるで燃え尽きた炭のような、無惨な姿。

「なんだこれは……? こんなごみが、なんで宝箱の中に、大切に保管されてるんだ……?」

ム……。

「ごみなんて言っちゃ駄目だよ、キリカ」

「しかし……どう見てもごみだぞ、これ? 折れてるし」

「確かに折れてるよ。でも……それだけじゃん」

わたしには、これが……ううん、この子がごみとは思わなかった。

「ごみなんて名前の、者(物)は、この世にはないんだよ?」

古道具屋をやっていた、ばーちゃんがよく言っていた言葉だ。

わたしも、そう思う。

「物をそうやって、ごみってひとくくりにして、捨てるの……よくないよ」

物理的に捨てるって意味でもあるし、言い捨てるって意味でもある。

カタカタ……。

「ひっ! ご、ご主人様……その刀……今少し動きました……!」

オカルト苦手なアナが、震えながら刀を指差す。

「気のせいでは?」

とキリカ。

「いや、絶対今動きましたって!」

わたしは、刀を手にして、じっと観察する。

……なんでだろうね、聞こえてくる気がするんだ。

嫌だって、捨てないでって……そう言ってるように、思える。

「この子も連れて帰ろう。綺麗にしてね」

「! もしかして……リサイクルショップを使うのか?」

「うん。今ちょうど、ポイント増えてるし」

わたしはリペアのウィンドウを展開する。

『修繕費用:200,000RP』

「えーーーー!? に、にじゅうまんぅ!?」

キリカがギョッと目を剥く。

「……トニーや餓狼団が、ごみを集めて、ポイントは貯まってはいますが……流石に20万はありませんよ」

わかってる。

「でも大丈夫じゃん。そこに……あるし、ポイントの元」

「な!? ざ、財宝を……使ってしまうのか!?」

「うん」

「そんな……ポイントをドブに捨てるような真似、せずともいいのでは……?」

「キリカ。怒るよ、わたし」

さっき言ったじゃあないか。

ごみという物はないって。

キリカは、はぁ……と溜息をつく。

「わかったよ」

「うん、ごめんねキリカ。君が意地悪で言ってるんじゃあなくて、わたしが、ポイント無駄遣いしないようにって、思ってくれてるのはわかってるよ」

言葉遣いがアレだけどね。

本当に意地悪で言ってるなら、そういう選択をするわたしを直接的なじるような言葉を選ぶだろうし。

そうしてないのは、キリカが悪い人じゃあないってことを証明してる。

それでも……。

「わたしは、この 刀(こ) を、直したい。理由は……なんだか可哀想だから。それじゃ駄目?」

上目遣いで、わたしはキリカとアナを見やる。

うぐぐ……と二人が言葉に詰まる。

「ず、ずるいぞっ。主……そんな可愛い顔をしたら……襲ってしまいそうになるっ!」

「え?」

「しまった、えっと……」

「わかりましたわ。我ら家臣は、あなた様のご意志を尊重いたします!」

「そうそれ! そういうことっ」

二人は良いお姉さんたちだ。

わたしは良い家臣を持った。

「じゃ……いくよ! リペア!」

『エラー:レベル1では修復不可能です』

くっ、形だけ直しても駄目なのか。

なら!

「レベル2【 機能再生(リ・ジェネレーション) 】!」

さらに追加でポイントを払って、機能再生を行う。

その代償として、倉庫にあった山のような金銀財宝が……シュオンッ! と光の粒子になって消えてしまった。

莫大なポイントが、折れた刀に注ぎ込まれる。

赤錆が剥がれ落ち、折れた断面から黒い光が溢れ出す。光は血管のように伸び、失われた刀身を形作っていく。

そして……空中には、美しい一振りの刀が浮かんでいた。

~~~~~~~~~~

【暴食の魔剣:グーラ】

【レア度:SSR】

【効果①: 捕食(プレデター) 】

斬った相手を捕食し、リサイクルポイントへ変換する。

【効果②:暴虐なる 暴食(グラトニー・バイト) 】

魔力を吸って、斬撃に変える。

~~~~~~~~~~

「暴食の魔剣……」

SSRだ。

家臣たちと同じ、とてつもない……レアな剣だったみたい。

どうやら、わたしがレベル2リサーチで見つけたのは、これだったのか……。

『わらわを、なぜ助けたのじゃ……?』

「キャァアアアアアアアアア! 喋ったぁあああああああああああああ!」

とアナ。

「意思持つ 剣(インテリジェンス・ソード) だろう? 何を驚く。そういうものはあるだろう?」

とキリカ。

「オカルトっ、怖い!」

「いや魔道具だから……。喋る剣なんて、激レアな剣だぞ。しかも暴食……七つの大罪の名前がついている。恐らく 七福塵(しちふくじん) の打った刀ではないか?」

とキリカ。

「しちふくじん?」

「伝説の刀鍛冶さ。彼が作った刀はとても価値が高く、うん億ゴールドで売買されるとか」

「そんなに!? 凄いね……君……」

暴食の魔剣……グーラさんは、わたしの手の中に収まっている。

温かい。まるで体温があるみたいだ。

『答えよ、なぜわらわを助けた……? ぬしにとって、わらわは、他人であろう?』

「そうだね。会ったばかりの他人だよ、君は」

『じゃろう? ならば……』

「でも、わたし、傷ついてる人を放っておくことなんて、できないんだ」

『! ふ、ふふっ。そうか……あはは! 気に入ったのじゃ!』

カッ! と暴食の魔剣が光り輝く。

黒い霧が渦を巻き、人の形を象っていく。

そこにいたのは、着物を着た……グラマラスなお姉さんだ。

紫紺の着物を大胆に着崩し、豊かな胸元を惜しげもなく晒している。透き通るような白い肌に、アメジスト色の長い髪。

その妖艶な美貌は、まさに魔性の女。

「わらわは暴食の魔剣グーラ。ぬしを、我が主人と認めよう。よろしくな……♡」