軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そんな宝石があってたまるか。

様々な種類の花が入り乱れながらも、あたかも芸術のようにそれを調和させる庭師の技。

それを感じながら俺はここを美しい女性と共に歩く。

世界中の男が嫉妬し、羨望の眼差しを与えてくれるだろう。

その女性が俺の手を取り、この花の楽園を共に進む。

ただ一つだけ、一つだけ俺の思いを伝えられるなら…。

なんでその女性がお前なんだクローネ。

結論から言う、懐かれたよ。

それも猛烈な勢いで懐かれた。

「アイン!ねえほら手を繋ぎましょう?」

「は、はいありがとうございます」

「ふふふ、仲良くて可愛いわぁ」

半端ない懐かれ方をした、どうしてこうなった…。

「まさかクローネお嬢様にご案内頂けるとは、息子も幸せですわ」

「そんな堅苦しいことを言わないでくださいなオリビア様。貴方様のように美しくて、まさに社交の花といわれる方をお連れするだなんて…我が家の庭園が霞んでしまわないか心配ですわ。憧れの貴方様を案内できること、こちらこそ幸せです」

なんだこいつ、お母様のファンか?

うむなんだクローネ嬢…お前いいやつか!

オリビアお母様の素晴らしさをそんなに理解してるだなんて…。

よーしお母様の隣を歩く権利をくれてやる!感謝してその幸せを噛み締めろ!

「…やっぱり噂なんてわからないものね」

とクローネがつぶやくので、噂?と思っていたらお母様が反応した。

「…アインのことですね?」

「えぇそうです。どうしても耳に入ってしまうので…オリビア様にとっては聞きたくもない話でしょうけれども」

「二人ともなんの話を?」

「知らぬは本人だけ、ね。なんでもないわよ?ただ貴方がオリビア様の息子として、別に恥のある人じゃなかったというだけのことだから気にしないで」

「は、はい…そうでしたか、それはなにより」

それはいいことを聞いた。

お母様に恥をかかせるようでは自害を検討するべきだった。

「(…聞いていたのと全く逆じゃない。礼儀も知らぬ、醜い容貌…人に気遣いなんて全くできやしないなんて言われてたから、どんな男の子かと思っていたら)」

名高き将軍ローガス、そのご長男としてあれは失敗作、いやもしかしたら、オリビア殿の不貞による子では?なんていろいろな言葉をクローネは耳にしていた。

そしてクローネは考えていた、アインと言う男と話した感想を。

そして事実は全く持って噂とは逆だった。

「(礼儀を知らぬ?少なくとも今日この場にいる貴族の子達と比べたら頭一つ出ていると思うけれど?

醜い容貌?オリビア様の美しい茶色の髪を頂いて、オリビア様に似た表情をする優しそうな素敵な人。

気遣いが出来ないなんて…あんな素敵な気遣い、社交界でも見たことないわよ)」

オリビアが恥をかく前にアインは頭を下げた、そして母と同じぐらい素敵なものを見つけてしまった、一緒に見に行きませんかと言ったのだ、そんな殺し文句を言える人間…探すほうが大変だろうとクローネは考えていた。

「(そりゃあ?オリビア様が大好きな私からしたら多少贔屓目になってる所はあるかもしれないけれど?)」

クローネは、多少の贔屓目がなくともアインは良い子だと感じた、第二夫人…側室などの立場の人間が謀略を企てることはいくらでも知っていたが、それでもクローネは気分が悪くなるのを止められなかった。

「本当に…美しいですね」

庭園の花を見て澄んだ瞳で花を愛でるアイン。

素直に花を愛でている、そしてそれに感動している様子のアインをクローネは見た。

「(こんなにきれいな瞳してるんだもの、これで嘘だったら私だってさすがに人を信じられなくなるわ)」

「そうね綺麗だわ」

「ここにくるまで、お花は魔法とかで光らせているのかと思っていましたけど…」

「違うのよ、見ての通りこのバラは…自分で光っているの」

ブルーファイアローズ。

その名の通り蒼い炎のように揺らめき光る。

生育がとても難しく、水、土、気候…すべての条件が揃ってようやく成長が始まる。

蕾ができたら膨大な量の良質な肥料を与えてようやく花が開く。

花が開いてしまえば自ら周囲の魔力を少しずつ吸収してその花を蒼く光らせるようになる。

「でも気を付けてね?その花…咲いてからは全身に猛毒を持つから」

「えっ」

「それもすごいのよ。その花一本分の毒で、人間なら500人は殺せるほどの強さなんだから!」

クローネから毒のことを聞いて、アインはその時思った。

そんな物騒なもんこんなとこに植えておくなよと。

「どうせ、そんな危ないのどうして植えてるんだよって思ってるでしょ?」

「…否定できませんね」

「オリビア様なら、それが大丈夫な理由ご存知ですよね?」

「えぇもちろん。アイン?あのね…大公様のお庭は入ることができる人なんて、数えるぐらいしかいないのよ。だから入れる人は危ないのを分かってるし、初めて入る人にはしっかりとお伝えするから大丈夫なの。別に触ったり抜いたりしない限り、その毒は出てこないから」

「な…なるほど」

アウグスト大公は庭を本当に大切にしている。彼にとって唯一の趣味といってよいものだから、この地は彼にとっては聖地のようなものなのだ。

「あと普段はガラスで覆ってるもの、今日は特別よ。人がたくさんくるから見やすいようにしてあげてるの」

「それで今日はこんなに近くに来られるわけですか」

「そういうことよ、さぁまだ見せたいものはたくさんあるわ。楽しんでいってね?」

張り切るクローネを見てアインもオリビアもそれに付いていく。

二人はこれが楽しい時間になるだろうなと感じていた。

およそ一時間に及ぶ広い庭の散策を終え、中ほどにあるサロンスペースで少し休憩する。

クローネ嬢がお茶と軽食を頼んでくれたのでありがたい。

「それで、楽しかったかしら?」

「はい。貴重な体験をさせていただいてありがとうございます」

「いいのよ、私もオリビア様とゆっくりとお話しできて光栄だったもの」

「あらあら…私でよければいくらでも」

…お母様も随分とリラックスできたようだし、よかった。

むしろあんな雰囲気のお披露目パーティなんか、参加しなくてよかった気もする。

こうしてクローネ嬢といった美少女にも会えたことだし、まさに勝ち組。

「そういえばアイン君は知ってるかしら。ブルーファイアローズの名の由来を」

「いえ聞いたことありませんが、蒼い炎のように揺らめき光るからではないのですか?」

「ふふ…違うの。あれには毒があるって言ったでしょう?」

「はい聞きましたけど、その毒が何かあるんですか?」

「あれの毒ってね…焼けるような痛みなの。全身を燃やし尽くされるかのような痛みの後に、ようやく死ぬらしいわ」

なにそれ怖い。

物騒すぎんだろブルーファイアローズ…。

「それは…壮絶な名前に思えてきましたね」

「ふふ。そうでしょ?美しいモノには棘があるなんて、よくいったものよね」

「あらクローネ様?でももう一つありますよね?」

「さすがはオリビア様」

「もう一つ?」

なんだよまだドン引きするような名前の由来あるのか?

二人とも綺麗な顔して怖くなってきたよ…。

「スタークリスタルっていうの」

「それは…ブルーファイアローズと関係があるんですか?」

「えぇそうよアイン。どんなのだと思う?」

「うーん…ブルーファイアローズを使って作られる、特殊な造花とかでしょうか」

でもだからといってスタークリスタルなんていう名前に進化はしない気がする。

名前からイメージするとすごい高級品だし。

「ちょっと惜しいかな」

「ふふ、正解はねアイン君…あれを根元から上に向かって解毒するとね、お花の部分が宝石になっちゃうのよ」

「え?花が宝石に…?」

「ブルーファイアローズの毒素はね、物質を結晶化させるの。毒を急激に抜くと危機感を感じて、種子ができる場所の近くから結晶化を始めるの。自分を保護するためだって聞いたわ。最終的には苞から上が固まって、それがスタークリスタルっていうの」

毒素が結晶化させるって?

蛇の毒は血液をゼリー状に固めてしまうとか聞いたことがあるし…そういうのもありなんだな。

って毒素…?毒素か。

「どんなクリスタルになるんですか?」

「今蒼く揺らめいて光ってるでしょ?今みたいな感じに光るけど…さらに星空のように粒子がピカピカって光るのよ!」

「それでスタークリスタルっていうのよ。アインにも見せてあげたいけど…」

「難しいですよねオリビア様…」

「毒を抜くだけなんじゃないんですか?」

毒を抜く魔法なんていくらでもありそうなのに、解毒するだけなんでしょ?

「アイン君がそう思うのもよくわかるわ、でもね…急速に抜かないと枯れちゃうの。だから魔法では難しいのよ…出来る人がいるとは聞いたことあるけど、お父様に聞いたらすごく遠くにいる人らしいし」

「あとは、お金を使って無理やりってのもできるわよ」

金にモノを言わせてか、どこの世界でもそうやって無理やりできるんだな

でも言い方が苦々しいけど…まさかものすごいかかるとか?

「お母様?それってどのぐらいかかるんでしょうか」

「ラウンドハート領の年間収入の3年分かしら」

「え…?え!?」

「お金をかけてっていうのはね、薬を使って抜き去るのよ!…ものすごく高級な解毒薬を湯水のごとく掛けて毒を消し去るの」

「なんて無茶苦茶なやり方で…」

高級な解毒薬…ね。

宝石を作るのに使うには男としてはもったいなく感じるなやっぱり。

…解毒?なんか忘れてるような。

あ、思い出した俺そういえば毒素分解できるじゃん。EXだし余裕な気がしてきた、神様も言ってたし。

EXともなれば、どんな毒だろうとも、どんな菌だろうともいちころじゃぞ?なんて言ってたよあの神様。

「根元から…解毒」

「アイン君?どうしたの?」

「アインあまり近づくと危ないわよ」

俺にだって、やれることはあるんだってやっぱり信じたい。

それが宝石を作るだけだとしても、少なくともここにいる二人は喜んでくれるだろうし。

「アインッ!?」

「アイン君触ったら駄目ッ!!」

うん、いきなり引っこ抜く形でごめんなさい。

でも…あぁなるほど、毒素ってこういうのなんだ…触ったとたんブルーファイアローズと繋がったような感覚に陥った。

でもそれが別に怖くも気持ち悪くもない、あるがまま受け入れて…俺と同化させて中和、分解させていく。

毒は確かに危険だし、怖いものだけど…まあ俺ぐらい受け入れてあげてもいいよな。

って毒に優しさもてるぐらいにはいい子に育てた。

「う…そ…」

「ア、アインそれって…貴方まさか」

「はいクローネ様。今日は案内してくださってありがとうございました。勝手に一本抜いちゃって申し訳ありません、ですがこれが貴方へのお礼となれば俺はそれ以上の喜びはありません」

「ス…スタークリスタルッ!?な、なんで…アイン君どうして?!」

「そう、アイン…あなたの力。こういうことにも使えたのね」

「そうみたいですお母様。少しばかり素敵な能力だと思いませんか?」

「ふふふ。そうね素敵だわ…こんな素敵な子になってくれるなんて、お母さんは幸せ者です」

始める前はぶっちゃけちょっと怖かったけどね。

でもなんか触ったら…あ、これ大丈夫だって直感した。

だってさ、別にこの花たち俺には喜んで混ざってきてくれた感じがしたしね。

「あ、クローネ様?もう一本頂戴してもいいでしょうか?お母様にもお贈りしたいんですが」

「…ええ。もちろんよ?」

まだ少し放心しているクローネ嬢を横目にもう一本引っこ抜きスタークリスタルを生成する。

うん二本目ともなればコツを掴んだ気がするよね、さっきよりスムーズにできた。

「はいお母様。俺からの気持ちです、お受け取りいただけますか?」

「あらあら…こんな素敵なプロポーズもなかなかないわよ?」

「お受け取り頂けたなら…俺のプロポーズは成功したみたいですね。なによりです」

「ふふふ。ありがとうアイン」

「ってアイン!どうやってスタークリスタル作ったのよっ!」

「あ、元に戻った」

「そりゃ放心するでしょう!この国には二つしかないのよこれ!」

なるほどここに二つか!やるな俺。

「おそらくこの二つとか思ってるでしょうけど違うわよ!」

クローネ嬢がそのきれいなライトブルーの髪を揺らしながら声を荒げる。お嬢様なんだから落ち着いてね。

「二つとも王家にあって…王妃様がつけているのと、王家の短剣についてるわ」

「あぁそうだったんですね」

「ってそうじゃなくて…どうやって作ったのよこれっ!」

「俺の能力ですよ。聞いたことありませんか?俺の毒素分解って」

「そりゃあ…ラウンドハート家の長男が毒素分解っていうスキル持ちだったなんていくらでも」

あぁやっぱりどっかしらから漏れてるんだね。

そりゃそうか、こんなゴシップうまいネタだろうし。

「俺のって普通の毒素分解じゃなくて毒素分解EXとかいうので…基本的に毒とか菌を、一切合切分解しちゃうみたいなんですよ」

「聞いたことないわよそんなの…っ」

それにしてもクローネ嬢、顔がだんだん赤くなってるけどどうしたの?

騒ぎすぎて疲れちゃったなら少し落ち着くといいよ。

「…本当に、私にこれくれるの?」

「えぇそれは貴方のために用意したものですから、お受け取り頂けますか?」

「…はい、謹んでお受け取り致します」

「あらあらアインったら一度に二回もプロポーズなんて、器の大きい子に育ってお母様も嬉しいわ」

ちょっとまてマイエンジェルお母様…プロポーズ、いやさっきのお母様の冗談じゃなくて?

どういうことそれ。

「お母様?どういう意味なのでしょうか」

「スタークリスタルを女性に渡すなんてプロポーズよ。スタークリスタルを貰った女性はその男性と必ず幸せな家庭を築けるって」

「…知りませんでした」

「そうよね。でもね…クローネ様はそれわかっててお受けしちゃったのよねえ」

なん…だと…?