軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招かれざる客

アイン達がアムール公の居城へと案内され、通された大会議室で会議の始まりを待っていた。

いつもイシュタリカで見ているようなインテリアではなく、どこか民族系の雰囲気を感じ取れるその部屋は、アインにとって刺激的に映る。

現在はウォーレンによって手渡された親書を、アムール公が時間をかけて、中身を読んでいるところだった。

「……アムール公。そのまま書類を私と共に、確認しているように振舞ってください」

「む?……どうしたのだエド」

エドが神妙な顔つきをしながら、アムール公の隣で親書に目を向けている。そんな中、唐突に語り掛けてきたエド。

「よくお聞きください。アイン王太子殿下の横にいらっしゃる、金髪の美しい女性。彼女が新たなイシュタリカ騎士団、元帥クリスティーナ殿です」

「噂に聞いていた、イシュタリカ騎士団のナンバー2だと?」

「えぇ。ロイド殿がその席を辞してから、新たにその席についたのが彼女です。近衛騎士団の団長も兼任しているはずですね」

エドの説明を聞いて、アムール公は少し考えるような表情を浮かべる。そしてその後、思いついたことがあったようで、エドに尋ねた。

「……興味本位だが、エド。お主ならばどうだ?」

「どう?とは?」

「しらばっくれるな。勝てるかどうかだ」

大陸で最強の一人と言われるローガスを子ども扱いし、名を馳せてきたエウロ公国のエド。そんな彼が、イシュタリカの新元帥を相手に、どう感じたかをアムール公は気になって仕方がない。

「……お戯れを」

いつもの冗談らしく、飄々と振舞っているのかとアムール公は思った。だが横目で彼のこめかみのところを見ると、うっすらと汗が浮かんでいる。それを見たことで、彼はその認識を改める。

「それよりも不思議なのは、アイン王太子殿下ですね」

「不思議とな?どう感じたのだエド」

「あの方は、あの体にその器が収まっていない。目の前に立つと、どうしても大きな魔物に見えて仕方ありません。どうしてかは私にも理解できませんが……」

「要領を得ぬな、エド」

「おそらく今現在一対一で最も強いのは、クリスティーナ殿ですね。ですが恐らく強大な魔物相手となった場合、もしかしたら一番強いのはアイン王太子殿下かもしれません」

エドは更に言葉をつづけた。自分が感じた、彼らへの印象をただ言葉にするだけだが。それでもやはりアムール公は詳しく理解できなかった。

「さっぱりわからん。そこでなぜクリスティーナ殿ではないのか」

「私もわかりません。ですが……アイン王太子殿下を一目見た時、昔の経験を思い出しました。ロックダムで冒険者をしていたときのことです。ロックダムのギルド本店には、巨大なドラゴンの模型が飾られています。それを一目見て、ただただ驚いた時と似た感覚でした」

「……エドよ、お主も老いたということもあろう?あのような男の子に、巨大なドラゴンを見た時などと。それと似た印象を抱くとは……アイン殿下は人間であろうに」

「……えぇ。老いたのかもしれませんね。ですが下手をしたら、連れてきた戦艦よりも、アイン殿下の方が恐ろしい。そう思いますよ」

この自分の感情を、これ以上説明することは難しい。だがエドがアインを見た時に抱いた印象は、紛れも無く巨大な何かを目の当たりにしたと感じたのだ。

「さて。イシュタリカの御客人方、ウォーレン殿より頂戴した親書をよく読ませて頂いた。イシュタリカ王シルヴァード殿の御心は確かに伝わった」

「それは重畳でございます」

あまりイシュタリカの一行を待たせるのもいけない。親書自体は読み終えていたため、頃合いを見計らってアイン達に向かって声をかけた。それに対してウォーレンが返答する。

「あらたな貿易に関するいくつかの協定、そして正式な友好条約。どれをとっても我々にしてみれば損はなく、ありがたい話だ」

「それは何よりでございます。アムール公」

「ではこれより、内容の確認を兼ねた話を始めようではないか。お互いにとって、実りのある議となることを」

シルヴァード達が用意した親書は、エウロ公国からしてみても悪くない。ほぼ原価に近い値段で、イシュタリカから食材を輸入できる。ただし、海結晶にかかっている現在の購入費用を据え置きとする代わりに、食材の輸入量をそこそこの量でよいので、約束してほしいという話。

イシュタリカからすれば、過剰に存在する食材を販売できる。エウロからしてみれば、足りない食材を貿易都市などから高い金で購入せず、イシュタリカから安価に購入できる。

お互いにメリットがある話だった。

そして会議は始まる。エウロ公国側はアムール公が主導となり、イシュタリカはウォーレンが主導としてその会議に臨む。

アインは、その時点ではスムーズに会議が進みそうなことに安堵した。

城の外では、ついにその時が近づこうとしている。ようやくハイムからの一行が、アムール公の足元にまで到着したのだ。

「な、なりません!」

「なぜならぬのだ!私がここまでわざわざ来たというのに、アムール公は一目も会わぬというか!」

エウロ公国、アムール公の居城……その入り口に、ハイムからの呼ばれていない客人が姿を見せた。

アムール公の居城は、岬の傍に立つ大きな城だ。そのため町を真っすぐ通ってくると、その背後に停泊しているイシュタリカの船が確認しずらい。

「父上……陛下から書状も預かっている!それでも追い返すというのか貴様は!」

「ハ、ハイム国王からですか……っ!?も、申し訳ありません……それでも、私には判断が付かないことでして。ただいまなんとか聞いてまいりますので、なにとぞもう暫くお待ちいただけないかと……」

「……急ぐのだぞ」

大急ぎで城内へかけていく騎士。アムール公や、彼に近い立場の者達にどうすればよいのか指示を仰ぎに向かった。それも仕方がない、この件は一介の騎士には身に余ることだからだ。

「ハイムからの御客人方、客室へとご案内いたしましょう。どうぞこちらへ」

不満そうな様子を、何一つ隠そうとしないハイムからの一行。城の騎士に案内され、客室へと向かう。

通常であれば、このような真似は大きな問題ともなりえただろう。だが大陸で一番強い立場にあるハイムは、他の国に対して強気に出ることが多く、今回もその流れでこうなってしまっていた。

たとえエウロがイシュタリカと取引を行っていようとも、それは変わらなかった。

「殿下。そういえばエウロの城は、良い景観の岬があるとか、そこを見に行ってみるのはどうでしょうか」

「それはいいな。グリントの案を採用するとしよう、そこの。客室でなくともよい、そちらに案内せよ」

案内にあてられた騎士は、彼らの自由さに苦労していた。

「そろそろ休憩にしよう。如何だろうかイシュタリカの方々?」

会議は順調だった。アインもウォーレンの言葉の選び方や、話の進め方を見て、これからの参考にしようと集中してた。そして長い時間行われていた会議だが、アムール公の提案で、一度休憩を入れることとなる。

「そうですね。長い時間有意義な会議が出来た、一度休憩を挟むのも良いと思われます」

ウォーレンはそれを素直に受託する。このような機会が初めてのアインも、おそらく疲れが溜まっているだろうと考えたからであり、アムール公の提案は有難く思えた。

「あまり会議室に籠っていてもつまらないでしょう。如何でしょう?我が城自慢の景色を見て頂くというのは。風も落ち着いてきたようですし、あまり寒くないかと思われます」

「うむそれはいいなエド。如何ですかなアイン殿下、ウォーレン殿」

声をかけられたウォーレンは、チラッとアインの方を見る。

「あぁ。拝見したいと思う、ウォーレン。是非案内してもらおう」

「承知いたしました殿下。ではアムール公、宜しくお願い致します」

「それはよかった。では参りましょう……エド、ご案内を」

「畏まりました」

アムール公の呼びかけにより、エドが先頭に立ち案内を行うこととなった。

それに続いて、アイン達も立ち上がりエドとアムール公に付いてドアを出る。

アインの左右にはクリスとディルが挟むように立ち、その前にはウォーレンがアインを先導するように歩く。ドアを出たアイン達の後ろには、会議室の外で待っていた数人の近衛騎士達が続いて歩き始める。

「ちょっとした行列だなあ……」

「敵国ではありませんが、アイン様のお立場を考えれば当たり前ですよ」

ボソッとつぶやいたアインの言葉に、クリスが小さな声で返事をする。

「まぁわかってたけどね。クリスさん、ディル。頼むよ」

言葉ではなく、頭を振り返事をした二人。アインは頼もしい味方に守られながら、アムール公たちに付いていく。

イシュタリカでは、どちらかというと石材に近い素材や鉱石類、魔物から取れた素材を城の至る所に使っていた。更にふかふかな絨毯を敷き詰め、歩いていて足に負担を感じない。

一方ここエウロの城では、まるで岩石のような素材を主に使っているようだ。美しく織られた布や、彫刻を施したりなどの飾りつけは行われているが、どちらかというと自然に近い印象を受ける城。言葉を悪く言ってしまえば、城の中は温かみがない感想を抱く。

そんな城の中を歩き、階段を下りて外に向かう。

「ところでウォーレン殿」

「はいどうなさいましたかなアムール公」

「実は本日ご報告しようと思っていたことなのですがな、ウォーレン殿たちの船が停泊した場所。あそこの海底で巨大な海結晶の塊が見つかったのですよ」

「っほう……それはそれは。どの程度の大きさなのですかな?」

「直径およそ15m近くにもなる巨大な代物です。如何ですかな」

その言葉を聞いたウォーレンは、隠す様子もなく驚いてしまう。それもそのはず、それほど巨大な海結晶の塊なんて、イシュタリカでも見つかったことは無い。どれほどの数の魔道具に使えるか、考えるだけでも笑みがこぼれる程の代物だ。

「まさかそれほどの大きさの……っ!いや失礼、それほどのは今まで発見されたことがなかったゆえ、驚きを隠せませんでした」

「無理もないだろう。会議が終わり次第、詳しい内容を届けさせましょう」

「是非宜しくお願い致す。それほど巨大では採掘も難儀しましょう、資料を確認後、我々でも案を練らせて頂く」

「それはよいことだ」

休憩に出たはずだというのに、つい取引に関する話がまた始まってしまう。

エドはやれやれといった顔をし、アムール公を諫める。

「アムール公。せっかくご休憩にいらしてるのですから、このような場でお伝えするのは……」

「っと、その通りだ。すまないなウォーレン殿」

「お気になさらず。我々としては良い話を聞けた。感謝しております」

「そう言っていただけると助かりますな……」

罰悪そうな表情を浮かべるアムール公、だがタイミングが良く、出口にたどり着いた。

「中庭から、岬に降りられます。足元にお気をつけてお降りくださいませ」

中庭に出たアイン達は、引き続きエドとアムール公についていく。中庭から岬に出られるらしく、アムール公自慢の城の景色が近づいてくる。

「今日は波も落ち着いていて、風も落ち着いてきて温かくなってきた。丁度良い頃合いでしょう」

夜にイシュタリカを出発し、午前中にエウロへと到着したアイン達一行。ついた頃は少し肌寒かったが、会議などで時間が経過した今では、エドが言う通り昼過ぎの暖かさがちょうどいい。

「気持ちいい海風だ」

「気に入っていただけて何よりだアイン殿下。さぁこちらへ……む?」

アインの言葉に気を良くしたアムール公だったが、中庭から岬への道に数人の騎士達が居るのを見つけ、どうしたのかと疑問に思った。同じくその様子に気が付いたエドが、何事かと思ってその騎士達に尋ねる。

「何をしているのですか?」

「こっ……これはエド様。それにアムール公……いえ、イシュタリカからの方々もお揃いでしたか」

「えぇ。城自慢の景色をご覧に頂こうかと。それで一体ここで何を」

「……お、お客人がこの景色を見て待つと」

客人と言われて、不思議に思うエドとアムール公。

「失礼。もしや我々イシュタリカの者がなにか粗相を……?」

もしやと思いウォーレンが尋ねる。連れてきた騎士達が、横暴な振る舞いをしたのかと思ったのだ。

「い、いえ滅相もございませんっ!お客人というのは……その……っ」

随分と口にしづらそうにする騎士に。アムール公が問いただし始める。

「もうよい……よいのだ。直接行って私が調べるとする!」

騎士を無視しアムール公は階段を降りて、岬に置かれたテラスに姿を現した。

もし本当に客人だったとしても、今日はそんな予定はない。つまり約束のない友人と言うことだった、だからこそ仮にこちらが強気だろうとも、先に無礼な真似をしたのは相手だ。

のしのしと歩くアムール公に続いて、エドが歩を進める。

ウォーレンへと謝罪し、アムール公たちに付いていた別の騎士が先導し、アイン達を案内する

アムール公が到着したテラスには、誰もが予想していない”呼ばれていない客人”が座って彼のことを待っていた。その後ろにはその客人の護衛と思われるものが数人控えている。

「アムール公!遅かったではないか!まさかここまで時間が掛かるとは思わなかったぞ!」

「……な、なぜここにっ……」

岬に降りる階段を上がってきたのはハイム王国第三王子ティグル。彼は数人の護衛と、ラウンドハート家次期当主、グリントを引き連れて一行と出会ってしまった。

「アムール公どうなさったのだ?急にそのように慌てて……」

騎士達に案内されて、アイン達もアムール公に遅れて到着する。ウォーレンがアムール公にどうしたのかと尋ねる。

「……む?誰だアムール公。私を待たせて別の客人の相手をしていたのか?」

ティグルの護衛の一人がその姿に驚き声を上げてしまう。

「っ…そんなっ……嘘、だ。どうして……どうしてお前がここにいるんだっ!」

「急に大きな声を上げてどうしたのだグリント。私に恥をかかせっ……」

ウォーレンの後ろに歩いていた人物を見つけ、グリントは主君を差し置いて、大きな驚きを露にしてしまった。だがそれも仕方ないことだろう。数年前、急に消えた自分の兄……ラウンドハートから逃げたと思っていた兄が、まさかエウロにいて、アムール公と話をしているなんて、思いもしなかった。

「殿下っ!あの男は私の兄……すでにラウンドハートの者ではありませんが、前の名前はアイン・ラウンドハート!実の兄だった男でございますっ!」

グリントはその言葉と共に、アインの方を指さしティグルにそれを伝えた。

その言葉に、その場にいたすべての者達が言葉を失いながらも、アインの方を見た。

それは例外なく、エドやアムール公も一緒だった。

「……久しぶりって言えばいいのかな、グリント……。クリスさん、ディル。大丈夫だからその手を前に動かしたら駄目だよ。みんなも、いいね?」

「……承知致しました」

「はっ……!」

腰につけた 細剣(レイピア) を引き抜こうとしたクリスと、同じく剣を抜こうとしたディルの二人。彼女たちをアインは制止した。クリスとディルが怒った理由はいくつもあるだろう。

まず今この場で、アインのことを”あの男”呼ばわりしたこと。そしてその後の言葉遣いと指をさしたことだ。そして最後に、グリントの家系と殿下という言葉が一番の引き金となった。

ラウンドハートの家系だということ、そしてグリントが口にした、『殿下』という言葉は、つまりハイム王国の王家の人間だと言うことだからだ。

オリビアとアインの過去のことから考えるに、イシュタリカの者達がラウンドハートと、ハイム王家に殺気立ってしまうのは無理もない。

そのため2人がつい剣を抜きそうになったことも、仕方がなかったといえる。本来咎められることだろうが、アインはそれをこの場で咎めることはしなかった。

ちなみにその場で剣を抜きそうになったのは、決してクリスとディルの二人だけでない。アインは『みんなもいいね?』と口にした。アインの背後からは、近衛騎士達が剣に手をかける音が聞こえていたのだ。

殺気立っていたのは彼らも同じだった。

「よくもそんな軽々しく久しぶりなんて口にっ……!」

「失礼。あなた方は——」

ウォーレンが口を開き、会話の流れを手中に収めようとしたが。それはアインに止められてしまった。

「……アムール公。このような状況では休憩どころではない。歩いて気分転換もできた、感謝している。……だが別の客人もいるようだ。新たに会議室を用意し、そこで集まることにしよう」

「あ……兄上!何を急に仕切り始めているのですかっ!」

空気を読まないグリントに、若干苛立ってしまうアイン。

「グリント。お前も貴族の跡取りなら、場に応じた態度を取れ。最初に久しぶりと口にしてしまった私が言うのもなんだが、お前のそれは度を越えている。……アムール公、いいかな?」

「う、うむ……その通りだ。私も状況が分からぬ、皆様方には足を運んでもらっておいて申し訳ないが、城内へと戻ることとしよう」

アインが発する、アイン独特のオーラ。その気配におされ、ティグルたちへ言おうとした文句も鳴りを潜めたアムール公。素直にアインの提案を受託し、城内へと再度戻ることにした。

その時、エドは再びアインの不思議な器の大きさを感じ取り、つい癖で警戒をしてしまう。

「っ……ティグル様は第三王子だ!その王子を前にその態度はっ」

アムール公はアインの提案を受託した、だがまだ諦めないグリントに、ついぞアインは強めに言葉を発する。

グリントのその言葉は、彼がまだアインより幼いとはいえ、度を越えてしまっている。

「……ならば私は王太子だ。"たかが"第三王子と王太子、誰が立場が上かなんぞ幼子でも分かるだろう。それが理解できる頭があるならば、愚か者でないならば……まずは黙ってついてこい!」

その言葉に、グリントとティグルの二人は顔を紅くして興奮を露にしたが、全く意にも介さないアインは、階段を上り城内へと足を進める。ウォーレンやクリス、ディルたちなどの護衛の近衛騎士達も、それに倣って場内を目指した。

「っなんと無礼なっ……!っしかし風が急に強いなっ……おわぁっ!?」

「で、殿下っ!どうか足元にお気を付けください!」

どうやら急に強くなった風が、ティグルたちを襲ったようだ。そんな様子を、階段の上から横目で見たアイン。

「……ねぇクリスさん。なんかした?」

「これぐらいで済ませたこと。感謝してほしいものですね」

どうやらクリスが風魔法を使い、風を彼らに集めていたようだ。集められた強い海風が、ティグルたちの周りを強く吹きまわる。

「クリスさんのそういうとこ好きだよ」

「あ……ありがとう、ございます」

心の中では、色々な思いが交錯していたアインだった。だがクリスの行った可愛らしい抵抗に、少し和んだアイン。

クリスといえば、アインの言葉につい照れてしまう。口調は変わらぬものの……多少顔を下に向け、少し赤らんだ顔を隠していた。

近くを歩く近衛騎士達やディルからも、小さな声で称賛の声が聞こえた。その中には先ほどのアインの態度をたたえる声もある。

そして、先ほどのアインの様子を見たウォーレンが、アインへと語り掛ける。

「アイン様。先程はお見事でした。是非陛下や妃殿下、オリビア様にもご報告させていただこうかと思います」

「……たかが第三王子、何て言って無礼すぎたかと思ったけどね」

「いえいえ。むしろもっと言ってもようございましたよ。なんなら、『王位を継げぬ分際で』などと口走ってもよかったぐらいですな。問題ないかと」

ティグルは第三王子。なにか大事にでもならない限り、王位は継げない。

「……あれ、ウォーレンさんもちょっと機嫌悪い?」

「さぁ。どうでしょうか……」

ウォーレンのような男は、決して態度を表に出すことは無いだろう。だがそれでもアインには分かった、ウォーレンは恐らく機嫌が悪い、意地悪をしようとしてるのだろうと。彼は最後、うっすらと笑みを浮かべアインに会釈をし、元の場所へと戻っていった。

王族としての誇りやプライドがあるのだろうが、イシュタリカという国のことをもう少し考え、言葉を口にするべきじゃないのか?そうティグルとグリントに対して考えてしまう。

「はぁ、無理いってこの名代断ればよかったかな……。どうしてこうなったんだ。お母様とクローネの二人と、ゆっくりしてればよかった……」

……これから始まるであろうことを考えると。ついそんなことを思ってしまうアインだった。