軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なんだかんだと初めまして。

数分の間、アインはその場に立ちすくみ続けた。

そうしているうちに、ようやく気持ちが落ち着きはじめ、その後やっと、地面に落とした剣を拾えることができた。

知ってはいけない事、たどり着いてはならない場所に到達した気がして、心の中に産まれた喧噪の様な存在が、アインの鼓動を更に大きくしていく。

「無茶苦茶な……」

誰もいない墓石に向かって頭を下げ、その場を立ち去ろうとするアイン。

そして考えついたことはただ一つ。……マルコを頼る事だった。彼ならきっとその理由を知っている、今なら疑問だったことをしっかりと問いただせる。

「……お爺様の提案は、渡りに船だったってことだね」

気持ちを踏みにじるようだが、その提案を利用させてもらおう……そう決心した。

「元セージ子爵の領地のことね?今は王家預かりになってるはずだけど……」

「そういうこと。だから王族が視察に行くのが筋って聞いた」

王家墓地での一件から数日が経った。シルヴァードのおかげで、それまでにあった懸念は随分と軽くなった。もはや羽毛程度にまで軽くなってきたその気持ちは、アインとしても大きな負担には感じていない。しかしながら、その後に墓地で発見した事柄については、心境が穏やかではいられない。

「えぇ……陛下が仰ることもその通りなのだけど。それじゃカティマ様の代わりに、アインがってことなのよね?」

クローネの執務室。いつも通り仕事中だった彼女に近寄って、アインは視察についての相談をしている。いつもながら唐突にやってくるアインだが、なんだかんだと彼がやってくることは、クローネとしても嬉しいことで、それを強く指摘することは無かった。

「みたいだね。せっかくだから、いい経験だと思って行くことにしたよ」

「あら素晴らしい心がけですわね王太子殿下」

「でしょー?」

軽口を叩けるようになったアインを見て、クローネも時折アインを見上げて笑みを零す。

「それじゃ日程の調整を……って、あれ……これってもしかして……」

「あれ?どうかしたの?」

大きめの手帳を開いたかと思えば、どうしようと悩み始めたクローネ。

「その日はオリビア様も予定があるの。アインは休日だったから、私もその手伝いとして向かうことになってたんだけど……」

「あーそうだったんだ……。それじゃクローネは一緒に行けないってこと、だよね?」

「……こ、断ってく——」

「大丈夫だよ。それに相手がお母様なんだから、クローネも断るなんてしたくないでしょ?」

物悲しい表情をしてしまうが、内心ではその通りだ。

「ご……ごめんなさいアイン……」

「いやいや、正直この話も急に決まった事だからさ。だから気にしないでいいよ、じゃあディルとクリスを連れて……」

クローネが居ないのは残念だが、ディルとクリス。それに近衛騎士を連れて行ってこよう、アインはそう思ったのだが——

「実はその、クリスさんもオリビア様の側にいる日だから……」

「そういえば、お母様の護衛でもあったね……クリスって」

つまり連れて行けるのはディルのみということだ。……だが少しばかり冷静になって考える、するとこの方がむしろ都合がいいのでは?と、密かに喜べる結果になったことに気が付いた。

「わかった。じゃあディルと一緒に行ってくるから大丈夫!別にただの視察だから心配しないで」

「……本当にごめんなさいアイン」

「だーかーら!別に気にしてないってば、大丈夫大丈夫」

そう言って、クローネの頭をぽん、ぽんっと2回だけ優しく触る。

「……髪の毛乱れちゃうでしょ?」

「はいはい。そうだねー」

不平を口にするならば、もう少し表情にも気を使うべきだ。密かに嬉しそうなクローネを見て、アインはそう考えさせられた。

視察当日は、朝の早い時間から王都を出発した。

時間にすれば、ホワイトローズからおよそ5時間少々の道のりを進み、例の子爵が治めていた地域に到着する。

農業に長けた地域と聞いていた通り、多くの農作物に溢れた地域だ。

王都では見られないような、数多くの出店。床に布を敷いて、その上に商品を並べる簡素なつくりだが、そうした暖かな雰囲気をアインは好ましく思う。

王太子の視察を楽しみにしていた農民たちは、息を吸う暇も無いほどに、アインに多くの声を投げかけ続ける。

「も、申し訳ありませんアイン様……なんというか、クローネ殿はいつもこのような仕事を……?」

視察も佳境、時刻ももうすぐ夕方となる頃に、とうとうディルが音を上げ始めた。

「うん、いつもそうしてくれてるよ。俺もたまに手伝うけど、でもクローネ程はできないかな」

「な……なるほど……」

近衛騎士として、そしてアインの護衛として多くの事を学んでいたディル。

それでもクローネが普段こなしていた仕事は、彼にとっては随分と荷が重かった様子。

「クローネ殿のお力を、強く実感した次第でございます……やはり私は、剣を振るしかできないみたいで……」

「いやいやそんなことないってば。クローネが化け物染みてるだけだよ」

化け物なんて言ったら怒られてしまうが、今この場に彼女はいない。だが実際、そうした文官的な能力に関して言えば、本当に化け物染みている。

「あぁ……こんなにも夕日は美しいというのに、私の力が足りないばかりに……」

「……今日のディルは詩人だね」

だがディルが口にする様に、確かにこの地の夕日は美しい。

近くに見える黄金色に輝く穂。それが時折吹き寄せる風に靡き、赤い夕陽と相まって幻想的な風景を作り出す。

広がり続ける作物の匂いと、肥料や土の香り。そうした独特のアロマが鼻腔をくすぐり、気持ちを穏やかなものとしてくれた。

「殿下!ご指示にありましたお品物ですが、確かに購入して参りました」

「ありがと。お金渡してきた?」

「いやはや……殿下が危惧なさったように、本当に無料となりそうでした。なので無理やり支払ってきた次第でして」

媚びを売りたいというわけではないが、こうした地の者達は、作物を献上したいという念に駆られることが多い。

少量であれば受け取ることもあるが、今回のように私用であったり物量が多い時には、何があっても支払いを行うようにしている。

「やっぱりね……。それで買ったものはもう運んでくれた?」

「はっ!本日夜の便にて、王都に届く予定でございます」

「それは何よりだね。お爺様も楽しみにしていらっしゃるからさ」

シルヴァードには随分と世話になった。そのシルヴァードが楽しみにしているのだから、すぐに届けたいという孫心だ。

「では私はこれで、任務に戻ります」

「うん、ご苦労様」

戻っていく騎士を見て、ディルが再度口を開く。

「ではアイン様。我々も列車に戻りますか?」

「うーん……」

そろそろ時間か……。ディルは反対するだろうなあ、とアインは乾いた笑みを零す。

「でもやらないわけにもいかないから、うん……」

「アイン様?今何か仰いましたか?」

「ううんなんにも。それじゃ戻ろうか、騎士達も休ませないとね」

アインが何かを呟いていたように思えたが、アインがそう口にしたことから、ディルは素直にその指示に従った。

この地へは、王家専用列車を使ってやってきた。カティマがやってくる予定だったのが、王太子に変わったという事実。

だがどちらにせよ、王族が公的な用事でやってくるのだから、王家専用列車が動くのは確定的だったのだが。

ちなみにアインが寝泊まりする予定の場所も、この王家専用列車の中になる。

安全面や設備の面を考えれば、この中が一番都合が良かったのだ。

「ではアイン様。日程は終了……明日も昼頃には出発し、夕方過ぎには王都へと戻る予定です。よろしいですか?」

アインが乗る車両。その中のラウンジ区域に到着した二人は、そうして視察の日程が終了したことを確認し合う。

農地自体は広大なのだが、そこを管理する者達は決して多くない。その管理者たちと面談し、状況の報告を受けてきた。

「……そうだね。無事に終わって何よりだよ」

ディルにそう返事をして、アインは窓の外の風景に目を移す。

穏やかで、心の奥底にぐっとくる美しい景色……それがどこまでも広がっている。

「ではしばしのご休憩を……」

確認が終了したディルが頭を下げて、アインの側から離れていこうとする。

アインはそのディルの仕草を見て、懐から一枚の手紙を取りだした。

「"王家"からの手紙なんだけど……これを運転士の人に渡してきてくれる?大事な手紙なんだ」

「……承知いたしました。直ちに手渡して参ります」

「お願いするよ」

王家から運転士に手紙?一体どんなことが書かれているのだろうか、ディルは手紙の中身が気になってしょうがない。

だが中身を確認することはできないため、アインの指示に従って手渡しに行くことしかできない。

もう一度頭を下げて去っていくディルを見て、小さな声で『ごめんね』と呟いた。

「うん……うん。ほんとクローネ達がいなくてよかったよね、居たらこんな手段通用するわけないし」

彼女なら確実にその内容を聞いてくる。なぜ自分が知らないのか?王太子補佐も知り得ない情報なのか?と強く詰問してくることだろう。

強いて言えば、ただ強気になって拒否すればいいだけなのだが……そうしたクローネの前では、なかなかそれが難しい。

「ディルの忠誠心を利用するみたいで、心苦しいけどね」

深くため息をついて、そうした自分の行いを懺悔する。ディルはもうすぐ運転士のところへと到着するはずだ。そうなれば王家……アインが書いた手紙が届けられ、アインの指示したことが行われるだろう。

ディルになんて言われるか……それを思えば、さすがのアインも気が気でない。

「いっそのこと鍵閉めて拒否……?いやなんかそれはなあ……」

自分のすることなのだから、最後まで責任を取ろう。そう心に決めた。

「あ、サンドイッチあるじゃん。食べちゃお」

小腹の空いたアインは、保冷庫を見て食べ物を見つける。それを手に取って、ウキウキ気分でテーブルに持ってくる。

「んっ……マーサさん製っぽいな。いつもの味だ」

こんなところでも慣れた味。それを口にできることが嬉しくて、アインの顔に笑顔が浮かぶ。

「こうして気力を補うのだ」

この後起きるであろうことに対して、強気でいられるようにと……アインは黙々とサンドイッチに口を付ける。

……そうしてアインが、マーサ特製のサンドイッチを楽しんでいた時の事だった。

「あ、動き出したかな?」

——ガタン……ゴトン……。

水列車が動き出して、線路を踏みしめる音が響き渡る。防音性の高い車両だからこそ、窓を開けてしっかりとその音を耳に入れる。

「うん、ディルがしっかりと届けてくれたみたい」

ゆっくりと進み始めた王家専用列車。窓から見える風景が、少しずつ少しずつ移り変わっていく。

日の沈み込む方向とは真逆、すでに暗くなり始めた方向に向かって、吸い込まれるように列車が進み始める。

「……そうなれば、次に起こるのは」

——ドンドンドンッ!ドンドンドンッ!

「アイン様っ!?アイン様これは一体どういうことですか……!?」

ドアを叩き、外から大声でその疑問を届け始めるディルが見えた。

『あちゃー……』、アインは予想していたことではあったが、このディルの迫力を見ると、少しばかり逃げたくもなってくる。

「とりあえず入ってきていいよ。中で話そ」

民生用とは違った作りの車内。静かな音を立てて扉が開き、その音とは対照的にディルが騒々しい様子でやってきた。

「な……なぜ車両が動き出してっ……」

「手紙にそう書いてあるからだよ」

「やはり先ほどの手紙……王家といってましたが、 内実(ないじつ) はアイン様の手紙だったのですね?」

あははー、とヘラヘラ笑って茶を濁そうとするが、さすがのディルもそれは見逃してくれず。

「ご説明を頂いても……?」

ずいっと近寄り、いつもより数段厳しめの表情をして、アインへと事情を尋ね始める。

「これからバルトに向かうよ。……王太子として、調べなきゃいけないことができたからさ」

「バ、バルトにですか?いくらなんでも急な……陛下達は知っていることなのですよね?」

「帰ったらお爺様には伝えるけど、実はまだ言ってない。言ったら止められるしね」

がくっと項垂れて、両手で頭を抱えだすディル。

「そんなに落ち込まないでよ」

「いえ、どちらかといえば呆れてると言いますか……」

「あーなるほどね……まぁ呆れられても文句いえないねこりゃ」

貧乏くじを引かせるどころか、いつもの事ながら、こうした苦労を掛け続けることに申し訳なく思う。

「あ、それと先に伝えておくけど。何を調べなきゃいけないのかは、バルトに着いたら教えるから、それまでは我慢してね」

「随分と痛い先手を使って来ますね……では私はもはや」

「うん、しばらくは何もしなくていいよ。それと……バルトに着くまでゆっくりしてもらうのと、申し訳ないけど近衛騎士達にこのことを伝えてきてくれる?まぁバルトについても、列車を降りてもらうのはディルだけなんだけど」

饒舌に語る内容を聞いて、ディルはどうしたものかと考え始める。だがたしかに、近衛騎士達へと早急な連絡は必要となろう。

「ですがアイン様?どうして私だけが……」

「だってディルが一番信用できるからさ。……それじゃいけない?」

「……わかりました。では私は、これから近衛騎士達に連絡をして参ります」

今回のアインは何を始めるのか。

正直な心境をいってしまえば、気が気でないとしかいえなかった。しかしもう出発してしまったものもあり、更にいえばアインがそれを指示しているのだから、自分たちには止める権利なんてものは存在しない。諫めることはできるが、もはや今更だろう。

……なにせシルヴァードにまで内緒にしているのだから。

「それじゃ頼んだよ、ごめんね苦労を掛けて」

「いえ……では戻ってきたら、またお話を伺いますからね?」

そういってディルは、頭を下げてからその場から立ち去り始める。

「……一番信用できる、ですか。……ふふ」

急な事でどうしたものかと考え始めた。それでもアインの言葉はディルにとって、何よりも嬉しい宝の様な一言だった。

——その後の事だ。

説明を終えて戻ってきたディルは、バルトへの到着は深夜の時間帯だとアインに告げる。

そりゃそうだと納得し、アインはディルへと仮眠をとるように指示。

ディルがどうしてだ?と聞くと、時間の都合上、到着したらすぐに行動を開始するとのことだった。中々の過密スケジュールだが……こうした急な移動をしているのだから、今更な気がしてならない。

そうしてアインと少しばかりの会話をしながら、早めの夕食をとった。その後はディルに、再度近衛騎士達の許へと向かってもらい、食事や待機の命令をしてもらう。

随分と早い時間だが、到着してからのことを考えてベッドに横になり、アインはバルトへの到着を今か今かと待ち望んでいた。

それからというもの。数十分もすれば、体の疲れも影響してか、アインはゆっくりと夢の世界へと旅立っていったのだった。

——アインが次に目を覚ました時の事だ。

そこは何一つ想定していなかった、穏やかな緑と暖かな空気に包まれた場所。

辺りを見渡してみると、柔らかな風が吹き抜ける草原で、アインはそこにただ一人で横になっている。

夢……だろうか?

「……それで、ここは何処ですか」

自分は確実にベッドで横になった。そして列車はバルトを目指して進んでいる予定で、こんな暖かな陽気に包まれた場所は来ないはず。

……だがこの風景には見覚えがあった。

「あぁそうか。ここって……」

エウロから帰った時の事。エルダーリッチが自分を膝枕していた時、思い返せばここで横になっていた記憶がある。

両手をついて体を起こすと、見渡す限りの美しい緑。そして自分が寝ていた場所は、少しばかり小高い丘の様な場所にあった。

「起きたのか」

芝生を歩く音が背後から聞こえ、急いで振り向いてその方角を見る。

「……え、えっと貴方は……誰ですか?」

黒いシャツに黒いズボン。どこまで黒いんだコイツ、と思いながらも髪の毛は長めの銀髪をしている男。

ここまできたら統一してほしい、そんなよくわからない感情を抱きながらも、アインはその男に問いかける。

「察しの悪さは血縁のせいか?」

軽くため息をつきながら、銀髪の髪をさっとかき分ける。男性的ながらも、どこか憂いを帯びた女性の様な顔立ち。

……服装のせいでわからなかったが、その顔つきには覚えがあった。

「デュラハン……なの?」

「理解が遅いのはいただけない。常に論理的にだな……」

「ちょっとあなた?こんなところでも小言かしら?性格って本当に変わらないのね……」

「っえ……い、いつのまに……っ!?」

アインは背後からぽん、と肩に手を置かれる。

振り向くとその人物は女性で、顔の半分が隠れる程の漆黒のローブに、横には大きな杖を浮かせていた。

「たった今ですよ。……それじゃあなた?私は近くで見てるから、あまり無駄な事はしないでね?」

「……あぁ。わかった」

そう言って歩き出した彼女は、アインとデュラハンの前を歩いていったかと思えば、数歩進んだ場所に立ち止まる。

すると何もない場所へとテーブルと椅子を取り出して、優雅な動きで腰かけた。

被っていたローブから顔を出し、黒曜石よりももっと黒く、そして艶めいた美しい髪が広がった。

披露されたその容姿は、優し気な瞳の美女。……アイン達に向かって、優しく微笑みかけてくる。

「もしかして……エルダーリッチ?」

「俺がいるんだから当たり前だろう。……それじゃそろそろ始めるか」

——ドサッ。

大きな長い剣を取り出して、アインに向かって投げつける。

「始めるって何を……デュラハンが急に出てきて、正直全く意味が分からないんだけど」

「カインでいい。お前と名前は似てるが気にするな」

「あ、はい。それじゃカインさんで……」

「ならいいな?それじゃ剣を取って立て、始めるぞ」

一瞬アインの身体が光り、そして体中が黒い甲冑に覆われる。アインが意図した行動ではなかったので、目の前のカインが何かしたのは明らかだった。

「って、なにこれ!?」

「こうした場所だろうと怪我は駄目だ。精神的に何かの影響があってもおかしくない」

開いた口が塞がらないが、体中を確認するアイン。

この鎧にも見覚えがあった。それはカティマが購入した例の本……それに書かれていた、デュラハンの鎧だからだ。

「それで始めるってのは一体……?」

「"アイツ"のことは力押しよりも、技で倒してやってほしいと思ったからだ」

「……ごめん。意味がよくわからないんだけど」

いきなりこんなところに呼ばれ、更には剣を投げられて始めるぞ。そう言われても疑問符ばかりが浮かんでくる。

「その見るに堪えない剣技を、少しは見ることができるように磨いてやる。そう言ってる」

「いやいやいやっ……!俺の剣を見てくれるってこと?いや確かに嬉しいけど、でも……ってか、カインさんは防具付けないの?」

いつの間にか巨大な剣を持っているカインを見て、アインはこう尋ねた。

「付けても意味ないだろう?」

「いやでもさっき、自分で怪我するのはって」

「だから、児戯程度の剣では届かない。……そういう意味だ」

——カチンと来た。

勢いよく立ち上がって、カインが投げつけた剣を手に取るアイン。

何度か握りを確認して感覚を確かめる。スッと構えて、目の前の 男(カイン) を軽く睨み付けた。

「お前がどれだけ強かったのかは知らない。だけどさ、そうやって人を馬鹿にするだけのは……——」

「彼ね、海龍を真っ二つにするぐらいはできるわよ?」

——あ、へぇ……そう。

「ご指導、よろしくお願いします」

「ん」

なんでここに呼んだのか。何をさせたいのか。あと敢えて聞くならここはどこなのか。……そしてどうして今なのか。

質問はいくらでもあったが、とりあえず稽古を付けてくれるとのことだったので、その質問は後ですることにした。

海龍を真っ二つにするという力……それを目の前で見たいという興味が勝ったのだ。