軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第147話「ヘアーピースと最強陣形の実験をする(前編)」

「完成しました。これが勇者世界の『自然増量ヘアーピース』です」

「……これが、私がお願いしたものですか」

「これをつけると、耳や角が目立たなくなるのですね……」

依頼を受けてから数日後、俺はメイベルとエルテさんに、新作のヘアーピースを見せていた。

場所は、家のリビング。

テーブルの上にはふたつのヘアーピースがある。

ひとつはメイベル用で、もうひとつはエルテさん用だ。

メイベルもエルテさんも、おどろいたようにヘアーピースを見つめている。

たぶん、普通の付け毛に見えるからだろう。

これで角やエルフ耳を隠せるとは、普通は思わないからね。

でも、これは『抱きまくら』の技術を応用した、強力な変形能力を持つヘアーピースなんだ。

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『自然増量ヘアーピース』 (レア度:★★★★★☆)

(属性:水水・風風・光)

強い水属性により、なめらかな肌触りと、自由な変形能力を持つ。

強い風属性により、最高の通気性を持つ。

光属性により、表面の色や模様を自由に変えることができる。

錬金術によって作り出された 付け毛(ヘアーピース) 。

組み込まれた魔石には、あらかじめメイベルとエルテの魔力を 蓄積(ちくせき) している。

その魔力を元に、彼女たちの髪に似た姿になっている。

以前作った『抱きまくら』と同じシステムである。

(変形する面積が小さいため、長時間変形を維持することが可能)

『自然増量ヘアーピース』は、耳や角の近くに装着するようになっている。

通気性が良いので、耳の聞こえが悪くなることはない。

装着すると、本来の耳や角を隠すように変形し、人間っぽい耳や、短めの角を作り出す。常に本人の魔力が供給されるため、使用時間の制限はない。

安全装置つき。

物理破壊耐性:★★

耐用年数:1年。

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「というわけです。エルテさん、着けてみてもらえますか?」

俺はヘアーピースを、エルテさんに差し出した。

「ヘアーピースの根元に金具がありますので、それで髪を挟むようにして装着します。左右にひとつずつ、角の上あたりに合わせてみてください」

「わ、わかりました」

うなずいて、エルテさんは耳の上にヘアーピースを装着した。

彼女が金具をぱちり、と留めると──

「……髪の上が、なにか……もぞもぞするのですが」

「手鏡をどうぞ」

「ありがとうございます……あれ? え、ええええええっ!?」

鏡を見たエルテさんは、目を丸くしてる。

ヘアーピースが勝手に、彼女の角を覆い隠していくからだ。

あっという間に角は髪に埋もれていく。あとに残るのは、お団子状になった髪の毛だ。

さらにヘアーピースの一部が変形して、角のかたちになる。

元々あった角よりも、かなり小さい。長さは親指の半分くらい。

それがエルテさんの耳の後ろから、ほんのちょっとだけ顔を出してる。

「こ、これが、私……? まるで人間のようです……」

あっという間にエルテさんはイメージチェンジ。

角を持つ魔族の女性から、人間に似た姿へと変わってしまった。

やっぱり凄いな、勇者世界のアイテムは。

『通販カタログ』の説明文にあった通り『気になる部分を自然にカバー』してる。

商品説明に偽りなし。それが勇者世界のマジックアイテムなのか……。

「どうですか、エルテさん」

「不思議です。角が小さくなったのに……まったく違和感がありません」

手鏡を見つめながら、エルテさんは呆然とつぶやいた。

「元々あった角は、自然と髪の中に隠れています。ヘアーピースが作り出した角も、本物のような質感です。なんてすごい……」

「メイベルから見て、どうかな」

「まったく違和感がありません……びっくりしました」

メイベルは目を丸くしてる。

「『自然増量ヘアーピース』が作った角は、全然作り物に見えません。本当にエルテさまの角が小さくなってしまったようです」

「ヘアーピースひとつで……ここまで顔の印象が変わるものなのですね」

エルテさんは手鏡を動かしながら、角と髪の状態を確認してる。

真剣な表情だけど……口元がちょっとだけゆるんでる。

うん。気に入ってくれたみたいだ。

「角の大きさは調整できるようになってます」

俺は説明を続ける。

「魔力を込めて魔石を叩くことで、伸びたり縮んだりしますよ。後で説明しますから、エルテさんの好みのサイズにしてみてくださいね」

「は、はい」

「また、安全装置として、角がない状態にもできます」

「安全装置、ですか?」

「はい。完全に人間のふりをしたいときに使ってください」

これは、念のためにつけておいた機能だ。

エルテさんはこれから、交易所で仕事をすることになる。

国境地帯の人たちはともかく、帝国から来た者の中には、魔族や亜人を敵視している者もいるだろう。

そんな相手と顔を合わせたときの対策として、完全に人間の姿になるのは有効だと思うんだ。

帝国の者は、人間以外の種族のことをほとんど知らない。

見た目を同じにしてしまえば、エルテさんが人間なのか亜人なのか区別がつかなくなる。

相手の目をくらませて、ピンチを切り抜けることができるはずだ。

「……錬金術師さまは、そこまで考えて下さったのですか」

「俺はこの『ヘアーピース』には、色々な使い道があると思ってますから」

たぶんこれは、これはソフィア皇女の役にも立つはずだ。

彼女に『エルフに変装できるヘアーピース』を渡せば、 人間の(・・・) ソフィア皇女(・・・・・・) を狙う者から逃げられる。

『なりきりパジャマ』よりも素早く装着できるし、かさばらない。

とっさのトラブルにも対応できるすぐれもの。

それがこの『自然増量ヘアーピース』なんだ。

「──というわけで、これは『防犯ブザー』と『ドライヤー』と合わせて、セキュリティアイテムのベスト3に入ると思ってます」

そんなことを、俺はエルテさんとメイベルに説明した。

「もちろん、これからも新しいアイテムを作ることになりますから、ベスト3は入れ替わるかもしれませんけど。現在のところは3位には入るかと」

「……さ、さすが錬金術師どのです」

「……この『ヘアーピース』は、危険回避に適したアイテムでもあったのですね」

エルテさんもメイベルも、目を丸くしてる。

俺は肩をすくめて、

「まぁ、どっちにしても、これはソフィア皇女にも渡すつもりでいます。魔王領に遊びに来るときに使えますし、彼女なら、エルフや魔族に変装するのも楽しんでくれるはず……と、俺は考えるんだけど、メイベルはどう思う?」

「はい。私もトールさまと同意見です」

メイベルはうなずいた。

彼女も、ソフィア皇女とは何度も会ってるからね。

ソフィア皇女がフレンドリーな人だってわかってるんだろうな。

「そんなふうに、ソフィア皇女がエルフに変装して、エルテさんやメイベルが人間に変装して……魔王領と国境地帯を行き来するようになって、国境地帯の人たちとの交流が深まればいいと思ってますよ。俺は」

ふと気づくと、俺はそんなことを口にしていた。

「そうして、交流が続いて……いずれ国境地帯の人たちにとっては、種族の違いなんかどうでもよくなる……俺は、そんなことを願っています」

大公国の皇女が、時々、エルフの姿をして──

交易所で働く魔族のエルテさんが、時々、完全に人間っぽい姿になって──

そうやってお互いが交流するようになったら、国境地帯の人たちも、見た目や種族の違いになんかこだわらなくなるんじゃないだろうか。

領主のソフィア皇女が、エルフのふりをして遊んでるんだもんな。

魔族の人や、亜人に対する抵抗なんかなくなるよな。

そうなったら魔王領と、国境地帯の人々との交流はもっと広がるだろう。

魔王領の味方になってくれる人も、今よりもっと増えると思うんだ。

今だってソフィア皇女やドロシーさんは、俺たちの味方のようなものなんだから。

「──と、まぁ、そんなことを考えたんですけど」

「…………」

「…………」

あれ?

どうしてメイベルもエルテさんも、ぽかんとした顔をしてるの?

「トールさまは、このヘアーピースに、そこまでの想いを込められていたのですか!?」

「う、うん。そうなったらいいなって」

「す、すごいです! トールさま!」

メイベルは感動したみたいに、俺の手を握った。

細くて、少し体温の低い指。

メイベルは目の前に膝をついて、俺を見上げて、

「わ、私は……トールさまと出会えてよかったです。トールさまのお手伝いができることを 誇(ほこ) りに思います。この『自然増量ヘアーピース』に、そんな意味があったなんて……」

「もちろん、ヘアーピースの本来の目的は、メイベルとエルテさんが自由に人の世界を行き来できるようにするためのものだよ?」

「わ、わかっています。それでも……です」

「それに、魔王領の理解者を増やしたいのは、俺の目的である『勇者を超えること』のためでもあるんだ」

かつて召喚された異世界勇者は、この世界を変えた。

魔族や亜人のみんなが、北の地に追いやられたのも勇者のせいだ。

帝国が強さ重視の国になったのも、人間と魔王領との交流が少なくなったのも。

だから、魔王領の人たちと国境地帯の人たちの交流を進めることは、勇者が変えてしまった世界を作り直すことにも繋がる。勇者を超える一環にもなる。

少なくとも、俺はそう思ってるんだ。

「というわけです。すいませんエルテさん。話がそれちゃいましたね」

俺はエルテさんに言った。

「とにかく、この『自然増量ヘアーピース』は、エルテさんの役に立つと思います。これを使って、国境地帯の人との距離を縮めてください」

「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」

エルテさんは感動したように、つぶやいた。

彼女は胸に手を当てて、一礼。

それからふと、気づいたように、

「それに、私も錬金術師さまのお考えは尊いものだと思います。ですが……ひとつ 懸念(けねん) があるのです」

「懸念……心配ごとですか?」

「はい。このヘアーピースが紛失したり、奪われたりする危険性についてです」

エルテさんは言った。

「これは人間にも、魔族や亜人にも変装することができるものです。悪者が手に入れたら……魔王領への侵入を試みるかもしれません。その対策も必要だと思うのです」

「……なるほど」

もっともだ。

この『ヘアーピース』を使えば、人間は魔族や亜人に、魔族や亜人は人間に化けることができる。

見た目の区別がつかなくなるんだ。

そう考えると……確かに、奪われたり盗まれたりしたときの対策も必要だよな。

「さすがエルテさん。見事な着眼点です」

「い、いえ。錬金術師さまが作ってくださったものに文句を言うようで、心苦しいのですが……」

「そんなことありません。意見はじゃんじゃん言ってもらった方がいいです。マジックアイテムを改良するヒントにもなりますから」

「は、はい。よかったです」

「それじゃ、このヘアーピースの、盗難防止システムの使い方を説明しますね」

「はい。盗難防止システムの使い方を……ん?」

エルテさんの目が点になった。

「あ、あの、錬金術師さま?」

「はい」

「すでに対策をされていたのですか?」

「もちろんです。こんなこともあろうかと『自然増量ヘアーピース』には盗難防止用のシステムを組み込んであります」

「で、では、どうして私をほめて下さったのですか!?」

「えー、だって、貴重な意見をもらったことに違いはないじゃないですか」

「……は、はぁ」

「それにエルテさんのように、アイテムに厳しい意見をくれる人は貴重なんです。宰相閣下が『球体型お掃除ロボット』のアイディアをくれたように、エルテさんが意見もどんどん言ってくれるようにすれば、いつか、桁外れのアイテムを作るヒントをもらえるかな、と」

「…………」

あれ? エルテさん。

どうして壁に頭をくっつけて、ため息をついてるんですか?

立ち位置がどんどん柱の方に移動しているのは……どうして?

「……そうでした。錬金術師さまはこういうお方でした。だからこそケルヴ叔父さまが頭痛を起こされているわけで……」

「あの、エルテさん? 大丈夫ですか?」

「大丈夫です。石壁で頭を冷やしたら落ち着きました」

「よかったです。じゃあ改めて、盗難防止システムの使い方を説明しますね」

俺は『自然増量ヘアーピース』の根元にある魔石を指さした。

「このヘアーピースの根元には、ふたつの魔石が仕込んであります。大きな魔石はヘアーピースそのものを変形させるための魔力の源です。もうひとつが、魔力を登録するためのものです」

そっちは金具とくっついてる、本当に小さな魔石だ。

登録用の魔石には、エルテさんの魔力が入っている。

「『自然増量ヘアーピース』を起動するためには、最初に魔力を登録した人が装備する必要があります。他の人が身につけても、ダミーの角や耳は出てこないわけですね」

「そうだったのですか……さすがは錬金術師さまです」

「ただ、それだけだと心配なので、もうひとつ安全装置を付け加えてあります」

俺は適当な魔石を出して、それを指で突っついてみた。

「髪留めの部分に魔石がありますよね? そこを指先で突っつくことで、角の長さをコントロールするようになっています。それを知らないと、ヘアーピースを使っても意味がないわけです」

「あ、なるほど」

「試しに、魔石を指先でトントン、と突っついてみてください」

「……トントン、と。あ……少し角が伸びました」

「縮めるときは、トトトン、です。早めに叩いてください」

「できました。こういう仕組みなのですね……」

「慣れれば、自在に角を伸ばしたり縮めたりできると思います」

「トントン……トトトン。なるほど。面白いものですね」

「これが、第2の安全です」

「使い方がわからなければ、魔族や亜人に化けることはできないわけですからね。変装するためには、トントン、トントン……と」

「そうです。でたらめに叩いても使えないようになってます」

「すばらしい安全装置だと思います」

「ですよね。使い方を知らずに、連続してトントントントントンと叩いたり、トトトトトトンと叩いたとしても──」

「はい。こんなふうにトントントントントンと叩いたり、トトトトトンと叩いたりしても──」

「──暴走するだけで、魔族やエルフに変装することはできません。安全です」

「──暴走するだけで変装には使えないのですね。それなら安全……え?」

ぶぉっ。

エルテさんの角が、伸びた。

下向きに。まるで、樹木の枝みたいに。

角はそのままエルテさんの腕に絡みつく。

「れ、錬金術師さま!? 私の腕が拘束されたのですが!? まったく、動けないのですが!?」

「ト、トールさま。これは一体!?」

いかん。説明の順番を間違えた。

「これが3つめの安全装置だよ。勝手に使うと、使用者を拘束するようになってるんだ」

「ど、どうすれば解除できるのですか!?」

「俺が解除するよ。メイベルはエルテさんの身体を支えてて」

「は、はい」

メイベルがエルテさんの腰に手を回して、その身体を支える。

そうしてから、俺はエルテさんの耳元に手を伸ばす。ヘアピースの魔石を指で挟んで、押す。10秒間の長押しだ。

しゅるん。

ヘアーピースが動きを止め、エルテさんの角が縮んでいく。

数十秒で元通りだ。

「……こちらが『自然増量ヘアーピース』第3の安全装置になります」

「…………」

「奪った人間が適当に使おうとすると、角や耳が伸びて、装着者を拘束するようになってるんです」

「…………」

「悪用を避けて、しかも犯人を拘束する、一石二鳥の安全装置だと思うんですが……だめでしょうか?」

そういえばエルテさんは、俺の作るマジックアイテムの評価役でもあるんだっけ。

となると……さすがにこれは駄目かな。

暴走して、エルテさんを拘束しちゃったもんな。

この『自然増量ヘアーピース』が使用禁止になっても仕方がないか……。

「…………いえ、必要な安全装置だと思います」

と、思ったら、エルテさんは静かに、うなずいてくれた。

「これは、奪われたら大変なものですからね。錬金術師さまのお気持ちはわかります」

床に座って、胸を押さえて、でも、エルテさんは穏やかな表情だ。

びっくりはしたけど、安全装置としては評価してくれたらしい。

「ただ、もっと別の安全装置は……なかったのでしょうか。それだけが気になります」

「そうですね……」

「はい。これだけ高度なアイテムですから、難しいことはわかりますが」

「ですね。メイベルのヘアーピースは、特定のアクセサリを着けた者にしか使えないようになってますけど、同じシステムにした方がよかったですか?」

「ちょっと待ってください。そんなシステムがあったのですか!?」

「あ、はい」

メイベルはいつも『水霊石のペンダント』をつけてるからね。

彼女の『自然増量ヘアーピース』それをキーにして発動するようにしたんだ。

「で、では、どうして私のものは、押し方を間違えると暴走するタイプなのですか!?」

「エルテさんはより危険な場所に行くわけですから、安全装置も強力にしようかと」

「う、うぅ…………り、理に 適(かな) っています」

「それに、角が伸びて敵を拘束するって、かっこいいじゃないですか」

「む、むむぅ………………ぎりぎり理に 適(かな) っていますね!」

エルテさんは、むむむ、って感じで、うなずいた。

「わかりました。では、私も腕輪を持っていますので、それを『自然増量ヘアーピース』の安全装置にしていただけますか?」

「了解です」

「それと……角が伸びて敵を拘束するシステムは、そのままでいいです」

「いいんですか?」

「わ、私も、ロマンを多少は理解しているつもりです。かっこいいことはわかります。錬金術師さまと一緒にいると……その感覚が暴走しそうで怖いのですが……」

そう言って考え込むエルテさん。

それから、彼女は姿勢を正して、

「では、改めてお礼を申し上げます。私の願いを叶えてくださり、ありがとうございました」

エルテさんは俺に向かって、深々と頭を下げた。

顔を上げた彼女は、なんだか照れくさそうな笑みを浮かべていた。

「錬金術師さまの想いもわかりました。この『自然増量ヘアーピース』を使って、私は魔王領と国境地帯の民との友好のために、力を尽くすことをお約束します!」

エルテさんは真面目な顔で、そんなことを宣言したのだった。

これでエルテさん用の『自然増量ヘアーピース』は実用化にこぎつけた。

実験を参考に、ルキエ用のヘアーピースの製作を進めよう。

ただ……作り始めるのは、交易所の件が落ち着いてからの方がいいかもしれない。

ルキエはヘアーピースを、実際に見てチェックするって言ってたからね。

お互い、時間が取れるようになってからの方がいいよな。

「それじゃ次はメイベルの『自然増量ヘアーピース』を試してみようか」

「……あの、トールさま」

銀色の『ヘアーピース』を手に、メイベルが訴えかけるように、俺を見た。

「私としては……できればトールさまとふたりきりのときに、これを着けるところを見ていただきたいのですが」

「そうなの?」

「はい。私はこれを着けて、トールさまと一緒に『ノーザの町』へ行くことになりますので……」

メイベルは頬を染めて、ちょっぴり恥ずかしそうに、

「服と合わせたり、色々な姿でヘアーピースを身につけて、違和感がないか……トールさまにチェックしていただきたいのです。できる限り、いろいろな姿で」

「そっか。うん、わかった」

俺はうなずいた。

「じゃあ今日の夜でいいかな。ライゼンガ将軍の依頼が片付いてからだね」

「は、はい。夜がいいです。よろしくおねがいいたします!」

昼間はちょっと予定が入ってるからね。

今日は、ライゼンガ将軍に『三角コーン』の陣形を見せることになっているんだ。

本当は交易所でやるつもりだったんだけど、将軍に「まずは安全確認をさせていただきたい」と言われてしまったんだ。

そんなに危険なことをするつもりはないんだけど。

今回の陣形は、ただ、『三角コーン』の一部を、 青竜(せいりゅう) ・ 白虎(びゃっこ) ・ 朱雀(すざく) ・ 玄武(げんぶ) ・ 麒麟型(きりんがた) にしただけだし。あとは陣形を配置するときに、東西南北を合わせるだけ。

それと数個の『三角コーン』で実験したときは、ただ、魔力の流れが変わっただけだった。まぁ、そのときは『三角コーン』の 威嚇(いかく) 能力は起動してなかったけど。

将軍のことだから、きっと実際の戦闘に使えるかどうかを考えているんだろうな。

さすがは魔王領きっての 強者(つわもの) だ。

実験を始めるのは、今日の午後。

場所はライゼンガ将軍の屋敷の近くにある、草原だ。

そろそろ将軍やアグニスたちが準備を始めているころだと思う。

「それじゃ、俺たちも行こうか」

「はい。トールさま」

「で、では、交易所の担当官として、私も同行させていただきます」

そうして俺たちは、将軍とアグニスのところに向かったのだった。