作品タイトル不明
第三十一話 侯爵家の冬は終わらない
レーヴェルト侯爵家の冬は、調停が終わってもすぐには終わらなかった。
ボルク家令の不正が明らかになり、屋敷の帳簿は大きく乱れていた。オルセーヌ男爵家への不透明な送金、エルミーネ夫人の浪費、持参金設備の目的外使用。ギルベルトはそれらを一つずつ処理しなければならなかった。
南翼療養室は閉じられた。
リュシーのために作られた部屋だからだ。
ギルベルトは一度、私にその部屋をどうするべきか尋ねてきた。
私は答えた。
『リュシーが将来、自分で判断できる年齢になるまで、保存してください』
彼はその通りにした。
部屋の鍵は法院の管理下に置かれ、勝手な使用は禁じられた。
侯爵家は社交界で笑われた。
妻の持参金で作った娘の療養室を、幼馴染に使わせようとした家。
家令の不正を見抜けず、温室館の火事まで招いた家。
その噂は、かつて私を責めていた噂よりずっと冷たかった。
私はそれを聞いても、あまり嬉しくはなかった。
ざまあ、と笑えるほど、リュシーの怖がった夜は軽くない。
ただ、必要な結果だと思った。
ギルベルトは月に一度、リュシーへ手紙を書くようになった。
最初の手紙は短かった。
『木の鳥は元気ですか。寒くないように過ごしてください』
リュシーは返事を描いた。
文字はまだ難しいので、木の鳥と冬鈴草の絵だった。私は横に小さく説明を書いた。
次の手紙には、ギルベルトが自分で描いたらしい不格好な鳥が入っていた。
リュシーはそれを見て笑った。
「おとうさま、とり、へた」
「そうね」
「でも、がんばった?」
「たぶん」
リュシーはその絵を、木の鳥の箱にしまった。
父親としてのギルベルトの冬は長い。
簡単に春は来ない。
それでも、彼が自分で薪を割り、火を守るつもりなら、私はその努力まで奪うつもりはなかった。
夫としての彼とは終わった。
父としての彼は、ようやく始まったところだった。