軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談

当主ゴードンが戻り、わるだくみをしていた継母と義妹はいなくなった。

とはいえ、数年間にわたり乗っ取られていたヴェルチェ家は、しばらく混乱に見舞われるだろう――フレデリカはそう覚悟していた。

(お父様はまだ旅の疲れもある。私が支えなくては)

と、内心でこぶしを握りしめていたのだが。

帰宅の翌日には、サラが新しく雇った使用人たちはほとんどが解雇され、かわりにやってきたのは懐かしい顔だった。

「おお、お前たち……!」

「ブランドー! メリー、ケーナも!」

「お嬢様! お久しぶりでございます」

「ますますお美しくなられて……」

「旦那様! 旦那様、よくぞご無事で……!」

顔を見た瞬間、ゴードンとフレデリカ、そして使用人たちは、互いに駆けよってよろこびあった。

彼らはサラやエイベルの不興を買い解雇されてしまった者たちで、フレデリカもどうしているのかとずっと気にしていた。

「レイトにさがさせておいたのです。子爵家を取り戻したら必要な人々でしょうからね」

リーランドはあっさりと言うが、なかなか骨の折れる仕事だったはずだ。

そう思ってレイトを見れば、どこか誇らしげな表情だ。

「ありがとう、レイト」

「お褒めの言葉、光栄です」

レイトはもうすっかりフレデリカを主人リーランドの伴侶と認めてくれているようだ。うやうやしく頭をさげてくれた。

「それでもしばらくは手が足りないかもしれませんが……ノイラの浄化魔法がありますから、家の中はきれいにできますよ。ノイラが疲れたらセレネが回復魔法をかけますし」

なるほど、とフレデリカは感心する。

リーランドの身の周りのことは少数精鋭で、そうやって世話をしてきたのだろう。

「そうです。なので奥様はゆっくりすごしてください」

「ありがとう」

フレデリカは頷いた。

屋敷のことを心配しなくていいのはありがたい。父ゴードンに、この数年で領地経営がどう変わったかを説明するのもフレデリカの仕事だからだ。

「……まあ、フレデリカ様は真面目な方なので、想像もできないかもしれませんが……」

ゴードンと使用人たちが無事をよろこびあいながら出ていくと、レイトがぽつりと呟いた。

「世の中には、遊び慣れているように見えてまったくそうではなく、なんなら人を好きになったのも恋人ができたのも初めて、という方がいらっしゃいまして……その方が、『家のことが落ち着くまでは、フレデリカさんを煩わせたくないから……』とか言うので」

レイトは肩を落とし、しょんぼりとした表情を作ってみせた。レイトがそうすると、レイトに似せたという眼鏡姿のリーランドが思いだされて、フレデリカは目を見開く。

「レイト!」

めずらしくリーランドが慌てた声をあげた。

「フレデリカさん、気にしないで……忙しいうちは、ワガママは言いませんから」

「これなんですよ」

ため息をついて肩をすくめると、レイトも部屋を出ていってしまった。いつのまにかノイラとセレネもいない。

あとに残されたのは、お互い真っ赤になったリーランドとフレデリカだけ。

「えっと……フレデリカさん」

「……リーランド様……」

フレデリカはうつむいた。

リーランドのことが好きだ。それは間違いないし、リーランドと暮らせるようになってこれまでにない幸せを感じている。

ただ、たしかにレイトの言うとおり、リーランドが恋人らしい時間を求めているというところには、考えが及んでいなかった。だからこそリーランドは遠慮し、レイトたちは早く屋敷を立て直さなければと思ってくれたのだろう。

「ごめんなさい、えっと、その……私も、人を好きになったり、恋人ができたりするのは初めてで」

セルシオという婚約者はいたが、幼なじみでもあった彼に対する気持ちはリーランドに対する気持ちとは大きく異なっている、と今ならわかる。

「でも、リーランド様のことを、ワガママとは思いません。だから、その……」

言いたいことは、伝わるだろうか。そう思いつつもフレデリカは口ごもってしまう。

しかしリーランドにはきちんと伝わったようだ。

「……キスしても、いいですか」

肩に手が添えられて、フレデリカは赤い顔のまま頷いた。リーランドも耳まで赤くしてそんなフレデリカを見下ろした。

肩の手が頬に触れ、フレデリカを上向かせる。

「愛しています、フレデリカさん」

そんな言葉といっしょに。

誓いの口付けのように、唇が重なった。