軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

663.聖獣ヴァミ…んん?~モニカ先代王妃side

「月影は、フォルメイト侯爵家の誰かかしら?」

「私もそう考えていたところよ、モニカ。

けれど婚約者候補のフォルメイト嬢ではないはず」

「そうね、ブランジュ。

年齢的に、月影として活躍してきたとは考えられないわ」

ブランジュの言葉に同意しながら、考える。

ジルガリムが国王になった後、ジルガリムが密命を出し、月影というデザイナーを作り、期が熟すのを待っていた?

少なくともリドゥール国三大部族の内、ロベニア国を敵視する2つの部族長を抑えたなら、それはフォルメイト侯爵家の誰かの可能性が高い。

何故ならフォルメイト侯爵家は、外交に長けた人材が揃っている。

私達がまだ公女だった頃、当時宰相を務めていた ベリード公爵(ブランジュの父親) が育てた外交官を輩出した家門。

私達が王妃に就いてからは、外交官長に任命し、今は彼の孫が外交官長を務めている。

三大部族の内、最もロベニア国を目の敵にしていた2人の部族長を交代させてなお、ロベニア国との留学に賛成させられる人物。

もしくは、そうできるカードを 月影(何者か) に持たせられる人物は、現在のフォルメイト外交官長しかいない。

王子達の婚約者候補である、フォルメイト侯爵家の次女の父親だ。

けれど次女のフォルメイト嬢は、月影じゃないはずよ。

彼女が10才程度の頃から、月影としてドレスのデザインを手がけられるはずがない。

月影が商会にデザイナーとして登録されたのは、もっと前だったはずだもの。

何より婚約者候補となる際、1度は身辺調査をしている。

婚約者候補の身辺調査記録は、私もブランジュも目を通している。

ジルガリムが私達の目を欺く報告書を作成していれば、さすがに気づく。

何よりフォルメイト嬢では、王家の影を出し抜くにも実力不足。

だとすれば、フォルメイト侯爵家の長女?

父親の下で外交官をしているもう1人の令嬢かもしれない。

レジルスより1つ年上で、独身。

実は次女よりも、この長女の方がレジルスの婚約者として相応しいのではないかと考えるようになっている。

少なくとも最近の調べで、次女の方はミハイル=ロブールと後々、縁を結ぶ約束を交わしている事が判明している。

私達には秘密にしていたけれど、これでも私達は元王妃。

王族の婚約と婚姻には、私達の承認も必要となる決まりがある。

もちろん既に現役を退いた身。

王子達の婚姻に口を挟むつもりはないけれど、決まりがある以上、立場的にも情報だけは掴むようにしている。

ブランジュと2人して、【月影=少なくともフォルメイト侯爵家関係者説】を確信しかけた時だった。

「ラビ!

大奥監獄シリーズ最新作が返却されたんだろう!

次こそ私が読むからね!」

突然、赤い鳥が現れた。

その姿は、公女だった頃に私の父親が連れていた姿そのもの。

瞳の色だけが記憶と違う。

色は……金が散った藍色。

ブランジュの目が、大きく見開かれる。

そしてそれは、私も同じだ。

「「聖獣……ヴァミリア……」」

同時に呟く。

ヴァミリアは今……ラビと言ったの?

んん?

ちょっと待って?

今、大奥監獄シリーズって、ラビの後に言わなかったかしら?

大奥監獄シリーズ……濃い……アール18だったわよね?

アールのアールって何かしら?

暗号?

18にも意味はある?

いえ、それよりも……ソフトでありながら、ねっとりじっとりじれじれプレイ、だったわね。

公女が口にした言葉、しっかり覚えているわ。

ヴァミリア……きっと私が知るヴァミリアよね。

聖獣特有の、公女時代に直接感じていた魔力ですもの。

私の記憶よりも、羽がフワフワしている?

いえ、この程度の記憶違いは些事よ。

「あらあら、リアちゃんたら。

いらっしゃい。

今日中には返却してもらうってお話ししていたのに、待ちきれなかったのね」

ヴァミリアが公女の頭に止まると、公女が嬉しそうに話す。

そんな公女の頭は、ヴァミリアの羽で赤い鬘を被っているようにも見える。

私の記憶にある、父親とヴァミリアの契約関係よりも、公女とヴァミリアの関係の方が親密そう。

瞳の色から、そして公女とヴァミリアとの親しげな様子から、公女はヴァミリアと契約していると直感が告げる。

ヴァミリアの瞳の藍色は、公女の瞳とそっくり。

ただ1つ気になるのは、ヴァミリアの瞳の色が、藍色一色でない事。

まるでベルジャンヌ王女と契約していたキャスケットや、1度だけ姿を見せたラグォンドルの瞳と同じ。

んん?

また、ちょっと待って?

公女は今、リアちゃんと言ったの?

確か公女の話の中で、リアちゃんが公女の読者であるかのような話が……。

その時、ヴァミリアの瞳が獲物を捕らえるかのようにして、ギラリと……そう、ギラギラと獰猛に光る目で、公女の手元近くにある本をロックした。

「ラビのドエロ小説を次に読むのは、私だよ!

そこの娘っ子!

次にラビが書くエロ小説を1番に読むのは、譲ってやらないからね!

肝に銘じな!」

ヴァミリアは言うが早いか、バサッと翼を羽ばたかせてテーブルに降り、一瞬で体を大きくして嘴で本を挟んで飛び立つ。

壁に当たる前に転移して、消えてしまっ……ねえ今、ドエロって言った?

エロ小説って言った?

「まあまあ、リアちゃんの抜け毛ゲットね」

しんと静まる部屋の中。

公女はテーブルに落ちた赤い羽根を、それはもう嬉しそうな顔になって、いそいそと拾っていた。