軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

649.ベルの正体と死〜学園長side

『嘘だ!

ベルが……ベルジャンヌ王女?!

死んだなんて、嘘だ!』

ベルが姿を見せなくなって、半年が経つ頃。

王女が悪魔を呼び出し、悪魔ごと滅したと公表された王太子が、国王となってからすぐ。

王女は、ベルは、恋敵への嫉妬から、悪魔を呼び出した稀代の悪女と呼ばれるようになった。

そんなベルとは対象的に、新旧合わせた国王と王妃、そして四大公爵家の人間達は、やけに美談でまとめられた話が広まる。

しかし貧民街付近に住む 儂ら(平民) は、呑気に構えていた。

悪魔なんて、本当にいるのか。

貧民街近くに流れてくる噂など、アテにもならないし、自分達には関係ない。

そんな話をしながら、普段の生活を生きるのに精一杯。

王侯貴族(上の連中) が、どうすげ変わろうと、苦しい生活に影響がなかった。

あの頃を振り返れば、当時の儂を殴りたくなる。

ベルが何者かなど、深く考えようとした事もない。

当時の儂も、儂の周りの人間達も、国王や王妃、四大公爵家の当主達が代替わりしたとて、普段通りに日々をやり過ごしていた。

そんな頃じゃった。

突然の来訪者が儂の前に現れた。

目隠しの魔法が掛けられた馬車に、突然連れこまれた。

魔法で拘束された儂の前に座り、盗聴防止の魔法を使ったのは、王家に嫁いだ王妃の1人。

モニカ王妃。

元ニルティ家公女じゃ。

2人きりとは言え、相手は王族に嫁ぐ程の人間。

儂の母を殺したアッシェ夫人の一件もあり、非力な女性などと油断はせず、あの時の儂は只々、警戒心を露わにしておった。

余計な事を喋って不興を買わないよう、口も噤んでいた儂は、ベルの正体と死を伝えられた途端、そう叫んた。

『ええ。

そしてあなたには、アッシェ公爵家の当主に……いえ、正確には、アッシェ公爵家の血を残してもらいます』

平民の意志などお構いなしの、身勝手な貴族特有の考え。

何よりアッシェ公爵家は、儂が最も関わりたくない家門。

『ふざけるな!

俺はアッシェ公爵家なんか知らねえ!』

承服できるはずもなく、相手が最上に高貴な人間である事も忘れ、カッとなって再び叫ぶ。

『いいえ。

あなたの血の半分は、アッシェ公爵家のもの。

その瞳。

元は鮮やかな赤紫だったのでしょう』

『違う!

最初からこの色……』

断定した王妃の物言いに、反射的に否と答えようとしたが、王妃は更に言葉を被せた。

『ベルジャンヌ王女が、治癒魔法を掛ける際、あなたの瞳と髪の色を変えていました』

『……は?』

意外な話すぎて、結局儂は呆けた声を出してしまった。

『あなたの瞳の色は、先代王妃であるスリアーダと、亡くなったアッシェ家前当主と同じ色をしていた。

髪にも、もっと多くの赤が混じっていた。

調べもついています。

ああ、王家の影を使い、正式に調査しました。

否定しても無駄ですよ。

けれど私の父であるニルティ家の前当主と契約していた聖獣も、あなたが大火傷を負った日、ベルジャンヌ王女が治癒すると同時に、あなたの未来を慮り、色を変えた事を報告していたようです。

王女が亡くなるより、ずっと前の事だったようですが』

『はっ……それで俺を見つけたってわけか』

『いいえ。

あなたを見つけていたのは、もっと以前です。

そして見つけたのは、私です』

『どういう意味だ?

いつ……』

『貧民街の近くを流れる川から、王女があなたを引き上げた時ですね』

『どうしてアンタとベル……王女なんて身分の人間が、貧民街を……』

『王女は先代国王となった父王から、魔獣被害を食い止めろと命じられたのでしょう。

あの頃、貧民街近くを隔てる国境沿いで、水性の魔獣が出没しては、人を海に引き込む事件が多発していましたから』

『ベルはまだ5才だった』

確かにベルは魔法に長けた子供だった。

王族だったからかと、この時は納得した。

それでも10才にも満たない子供は、王族であろうと魔法を使わせないのが普通だったと思い直してソレを口にする。

『そうですね。

私はそんな幼い子供が可哀想で、しかし王女こそが、聖獣の契約者だった事もあり、王女に対する全ての不平等に言い訳をしていました。

あの日もそう。

王女が魔獣への対処をし終わるのを待って、身勝手な正義感だけで王女を迎えに行った。

しかしそれ以上の事を、今のあなたに伝える事はできません』

『……はっ、貴族も王族も、腐ってやがる』

『否定はしません。

今もなお、私達は王女の善行に縋り、この国を守れるかどうかの岐路に立って、初めて王女の苦難を肌で感じているのですから』

『善行……小綺麗な言葉を並べ立てやがって……』

『そうですね』

乾いた笑みを浮かべる王妃からは、しかし後悔が見て取れる。

何故と思うも、答えを知ったのは、もっと後じゃった。