軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

648.ベルとの出会い〜学園長side

母が亡くなったのは、父親の正妻が儂の存在をどこかから嗅ぎつけてしまったせいじゃった。

当時の儂の髪は、光に当たると赤みが出るが、黒。

黒は珍しい色ではない。

じゃが瞳は、父親と瓜二つ。

髪色はどうとでもなるが、瞳の色は魔法で隠すにしても難しい。

それ故じゃろう。

当時のアッシェ公爵夫人が、儂と母共々、亡き者にしようとした。

儂ら母子を森に拉致させた上で、直接手を下しに来た夫人は、生粋の元侯爵令嬢。

例外はあれど、基本的には魔力は血に宿る。

由緒正しい高位貴族の娘だった夫人に、準男爵の娘だった母が太刀打ちできるはずもない。

儂もまた、目立たぬ平民として生きており、魔法を学ばずにいた。

なす術なく、殺されるしかないのかと恐怖に震える儂を、傷だらけの母が庇い、最期に儂に保護魔法を掛けてから、こと切れた。

その時、初めて儂は魔力暴走を引き起こし、一帯を焦土と化した。

半分は四大公爵家の血を引いておったが故に、魔力量では夫人を上回っておったのじゃろう。

暴走に巻きこまれた夫人が、ものの数秒で炭化したのを横目に、儂も自身を焼いた。

幸か不幸か、儂は近くを流れる川に飛びこみ、一命を取り止めた。

魔力暴走の中でも、火属性の暴走は重症を負いやすい。

儂自身、身を焦がす激痛を味わった。

なのに意識を取り戻した儂は、軽い火傷の痕が残るのみ。

ただ、視界は真っ暗じゃった。

『ベル!

兄ちゃんが起きた!』

意識を取り戻した儂の耳に届いた第一声は、そんな幼子の声。

『ここは……』

『貧民街近くの孤児院だよ』

『俺は全身大火傷を……ゴホッゴホッ』

『体の内側を焼いた痕を優先して癒やしたけど、声がしゃがれちゃったね。

痛みはある?』

ベルと呼ばれた者の声は、幼女のもの。

声は幼いが、口調はハッキリしている。

魔法が使えるなら、10才を超えている?

それより今、火傷を癒すと言ったか?

治癒魔法は魔力量が多い高位貴族でも、神殿の上位神官でも難しい魔法だ。

中でも、火傷への治癒魔法は高難度。

しかも俺は、重度の火傷を負っていたはず。

そう思いながら、見えない視界の中で体中をまさぐる。

包帯も巻かれておらず、火膨れも感じられない。

『痛みも……ない』

思わず呆然と呟けば、喉には違和感を感じた。

けど、それだけ……。

『助けた時、君の体から僅かだけど、誰か別の人の魔力を感じた。

保護魔法を掛けられてたんじゃないかな?

だから重症の火傷は負ってたけど、ギリギリ死ななかった。

水死もせず、この近くの川を漂ってた』

幼女の声__ベルが静かに状況を教えてくれる。

『皮膚もできるだけ癒やしたけど、今の私の魔力と魔法技術では、今すぐ火傷の痕を完全に消すのは難しい。

一番酷いのは顎下で、こっちは確実に焼痕が残ると思っていい。

だけど君、男の人だし、髭が生えてきたら隠せると思うよ。

薄く残ってる火傷痕は、時間が経てば目立たなくなってくるんじゃない?

目の方は、もう少し時間がかかるけど、視力は戻るよ。

眼球の構造は難しいから、力技でやると四角とか三角に再形成しそうなんだ』

『三角や四角……』

何だ、それ。

絶対嫌だ。

第一、瞼の裏側に角が当たって痛そうだ。

そんな風にドン引きしつつも、視力が戻ると言われた事に安堵した。

『だから、時間を見つけてここ来た時、何回かに分けて治癒魔法を重ね掛けしていくよ。

頻繁に来るのは難しいし、火傷はもう心配いらない。

髪と瞳の色が、もしかすると変わるかもしれないけど。

明日からは孤児院でできる仕事と、魔力操作を学ぶように。

君、年齢的には孤児院でいられる年じゃないから。

今が特例なだけで、目が見えるようになり次第、追い出されるよ。

魔法が使えるようになれば、平民でも仕事の幅は広がるし、魔力暴走も起こしにくくなるから』

更に、そんな風に釘を刺された。

ベルの言う通り、儂の髪は赤みが更に抑えられた黒に、瞳は平民にもいそうな、くすんだ赤茶に変わったが、この時はそうなると知るはずもない。

儂が12才、ベルが7才じゃった。

ベルは孤児達に文字だけでなく、魔力が少しでも多い子供には魔力操作や生活魔法以外の魔法も教えていた。

数カ月に1度、来るか来ないかの頻度じゃったが。

視覚を取り戻すまでの間、儂は孤児達に魔力と魔法の扱いを学んで過ごした。

ベルとは言わずもがな、ベルジャンヌ王女。

じゃが視覚を取り戻した後も、ベルが髪色と瞳の金環を隠しておったのもあり、儂は王女だとは気づかぬまま過ごした。

ただ、ベルが貴族だという事だけは、直感で理解しておった。

ベルが孤児達を含め、孤児院や貧民に生きる術を教え、時に助けているのを直接見たからこそ、儂は父親を、ひいてはロベニア国の貴族を憎まずに済んだ。

母を手にかけた アッシェ公爵夫人(犯人) を、事故とは言えど、自分の手で葬ったからかもしれん。