軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

594.浮気、者……

「ほら、アヴォイドの事もちゃんと考えて、落ち着け。

な?」

もちろん考えているわ。

諭しにかかる旦那さんに、再び心の中で返事をする。

アヴォイドは私がジルガリム国王に支えられながら展開した、強制解除の魔法陣に干渉した。

今ならわかる。

それはベルジャンヌだった私が、輪廻の輪に入る前にした約束を、叶えさせる為だったの。

アヴォイドの望みの先。

そこには私を焼き縛る誓約から、私を自由にする事も含まれているのではないかしら。

今思えば、ベルジャンヌが輪廻の輪に飛びこむ直前にした会話で、私とアヴォイドの間に誓約が成立していたのだと思う。

ベルジャンヌがアヴォイドを自由にする。

そうと口にした言葉を守らなければ、今世の私は、いつまでも聖印に焼かれ続ける。

そしてアヴォイドの望みは、ヴェヌシスを解放する事。

もしくはそれに近い何かを望んでいる。

アヴォイドが魂の存在となって、この場所からロベニア王家の直系に祝福を与え続ける事態。

この事態を解消しなければ、そもそもアヴォイドは自由になれないわ。

とは言え万が一にも、お兄様がブローチを通して視た、ヴェヌシスが堕ちた過去の出来事が表沙汰になるわけにもいかない。

だってヴェヌシスの名を封じる事で、結果的に悪魔ジャビの力を弱めていたのだから。

ジャビだなんて名乗っているのは、ヴェヌシス本人が自分の名を忘れているのではないかしら?

覚えていれば、名前を先に復活させそうですもの。

私がラビアンジェとして生を受けた今世。

ベルジャンヌだった事が周囲にバレそうになると、聖印が焼きにくるシステムよね。

それもあっての事じゃない?

だってベルジャンヌの真実と共に悪魔の存在が表沙汰になれば、ヴェヌシスの名前が復活してしまう可能性だってあったのだから。

もちろんそれとは別に、ベルジャンヌがアヴォイドを自由にするという約束。

これが叶えられていない事も、罰の対象となっている。

となると……タイムリミットはいつだったのかしら?

ふと、ある事に思い当たる。

叶えるのに無限の時間が与えられるなら、今世で罰を発動させる必要はない。

来世でも良かった。

少なくともアヴォイドは、私がこの世界に戻って転生する最初の人生に、誓約成立のフォーカスを当てていたはず。

最大限の期限は、ラビアンジェとして転生し、ラビアンジェとして死ぬその時まで。

そして今の私は死を迎える瀬戸際。

むむむ、これは急がないとまずいわ。

ああ、だから旦那さんはお兄様に、船の上で次が最後だと言ったのね。

それにしても、あなた?

アヴォイドと一緒にずっといたなんて、ちょっぴり妬けちゃうのだけれど?

「ん?

何か殺気立ってね?」

もちろんよ。

広義の浮気だわ。

もちろん今世で生を受けた時から、旦那さんの魂と私の魂が繋がっていたと知れたのは嬉しいけれど。

「浮気、者……」

「は?

え?

ちょっ、何がどうして、どうなったら、そうなんだよ?!」

慌てる旦那さんに、僅かに溜飲を下げる。

私も今世は、王家の血を継いだ体だからかしら?

何だか旦那さんとのプロポーズなエトセトラを思い出して、懐かしい殺意が湧いてくるわ。

旦那さんは黒歴史だって言っていた、あのプロポーズよ。

「よし、とりあえず俺はミハイル達を手伝ってこようかな。

ここにいたら何かヤバい気がする!」

「ま、まて!

逃げるな!

お前の嫁であろう!」

「いやいや、アヴォイドの娘みたいなもんじゃねえか!

頑張れ、お父さん!

いや、お母さんか?

性別は何でもいいや!

ジェンダーレス時代も良いぞ!

じゃあ行ってくるな、月和!」

「あ、おい!」

まあまあ、逃げられてしまったわ?

仕方ないわね。

そうね。

思春期女子のイライラ捌け口は、祝福を贈ってくれている素敵な お父さん(お母さん) に解消してもらうに限るわよね。

お兄様達には旦那さんが援助してくれるようだし……。

「ふふふふふふふふ……」

「……不気味……」

まずはあなたの望みを知ってから、楽しみましょうね?

アヴォイド?

うふふふふふふふふ……。