軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

273.時は戻りあの時男子寮でのラビは(前編)

「では、ここにいるこの方の手ほどきに従って腕を磨いて下さるかしら?」

「み、磨く!

何でも言う事に従う!」

王子やガルフィさんと入ったのは、男子寮にあるワンコ君のお部屋。

彼のお父様の了承はもちろん、ワンコ君の力強い了承を得られて心の中でガッツポーズよ!

やったわ!

これでリアちゃんの満足度を上げられる挿し絵つき小説ができるはず!

お兄様の棟に用意された自室で目を覚ましてからというもの、こっそり持ってきちゃった彼のノートをチラ見してはずっと滾る妄想を文字に書き起こしてきたのだもの!

せっかくの逸材を見つけたら挿し絵への欲望は抑えられない!

「それでは今日からこの方とアトリエで暫く過ごして下さいな」

「ガルフィよ」

「だ、誰だ!

平民か?!

平民が教えるのか?!」

「ふふふ、それは秘密でしてよ。

ただあなたも既に平民と変わりませんわ」

ガルフィさんは一応どこぞの貴族のご落胤設定ですものね。

それに実際は王家の影。

そもそも平民なのか貴族なのかわからないのが素敵オネエ様なの。

「ど、どういう意味だ?!」

「アッシェ公爵は父親としてはもちろん、当主として第3公子であるあなたを見限られましてよ。

アッシェ家は既に入金した今年度いっぱいの学費と寮費、学園にいる間の必要な諸経費以外はもう負担なさらないし、来年の卒業後はアッシェ家から除籍し、本日よりあなたの事には一切関わらないと決まりましたわ。

来年の春からは事実上の平民になってしまいますわね。

騎士にはもうなれませんし、今の様子では傭兵も難しそうです。

私が拾わなければ卒業後の生活は浮浪者街道まっしぐらでしてよ」

「そんな……俺は……どう、すれば……」

足に縋りつかれているから震えが伝わって私が震えてるみたいな感覚になっちゃう。

それよりそろそろユストさんが来る頃かしら?

アトリエを用意してもらったし、お礼を直接言いたいけれど、王子がいてちょっと邪魔ね。

もちろんユストさんがこの件に関わるのは後々の利益があるからよ。

メガホンとウチワを売り出すのだけれど、まずは小説の中でそれを使っているシーンを登場させてから大衆観劇で売り出すつもりなの。

私の小説の知名度がそこそこ上がって貴族階級にも読者がいるから、ゆくゆくは素材のランクを上げた物をそちらにも流行らせる予定よ。

アトリエを用意したのは暫くの間、雑音をシャットアウトして人物像以外の描き方を学んで貰いたいから。

昔の作家が編集者に入れられたという缶詰め部屋ね。

魔法呪の影響で精神ボロボロみたいだし、寝られていないようだからちょうどいいんじゃないかしら。

寝られないなら体が自動で寝てしまうまで寝かせてあげないわ!

「という事で、あなたの事は私が頂く事になりましたのよ。

慰謝料もあなた個人から取り立てる事になりますけれど、公女たる私を貶め続けた期間を考えても平民で将来は浮浪者となると、支払いは一生奴隷となって肉体労働しても間に合わないかもしれませんね」

「あ……あ、あああああ!

ゆ、許してくれ!

奴隷は嫌だ!

頼む!

謝るから!

頼むよ!」

あら、誰も奴隷になれなんて言っていないし、他国はともかくこの国に奴隷制度はないわよ?

悪くて北の強制労働施設行きかしら。

元義妹で従妹のシエナがそこに送られたみたいね。

眷族ちゃん達が教えてくれたわ。

あの子にも私が望む才能があれば囲いこんだかもしれないけれど、完全に魔法呪の依り代になって老化してしまって手が震えていたの。

私も前世では60代くらいから少しずつ震えるようになって、80代の頃には湯呑みのお茶はこぼさないように半分しか入れられなくなったのよね。

老化って怖い。

なんて考え事をしていれば、やっと足を離して貰えたわ。

なのにやっぱり自分が震えてるみたいな感覚がするって面白い。

「ねえ、この子がラビに直接謝ったのってこれが初めてよね?

普通に悪いと思ってたんなら、もっと早く謝れたんじゃないの?

騎士を目指してた割には性根が悪すぎるわ」

ずっと影として私を見てきたからこその嫌悪ね。

ワンコ君は私への恐怖から会えなかったというのが大きいと思うわ。

もちろん本当に謝罪すべきだと感じれば、それでも会いに来て謝罪はできたでしょうし、騎士としての資質は無いかもしれないけれど。