軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謁見1

懐かしの王宮ですね。いや全体は私も把握していなかったけれど。

なんていうかこのキンキラした感じとか、働いている人たちがツンケンしてプライド高そうなところとかが、なんだか懐かしい気がするよ。

あれよあれよという間に私たちは王宮の前に立っていた。なにしろ「ロワール殿下からのお召し」だからね、謁見が最優先で観光なんてもってのほからしいですよ。だから謁見の日時が決まるまで私たちは王都にある簡素な宿に監禁同然で留め置かれたのだけれど、意外にもその謁見がすぐに決まったのだ。

私としては心のどこかでこの話がお流れにならないかなーなどと密かな期待をしていたのだけれど、まあそう簡単には物事はひっくり返らないということですね。現実は厳しい。

でもとりあえず、どうしてもマズい状況で絶体絶命になったら私だけでもロロに暴れてもらって逃げても良いということにはなっているので、私はきっとロロさえいれば生き残ることが出来る……と期待している。

え、二人を見捨てる? でもレックは何故か凄く自信満々で「大丈夫」なんて言っているから、きっとどうにかして逃げるんじゃないかな。まさか一人で逃げることも想定せずに敵陣の中枢に乗り込もうなんて、さすがに考えてはいないでしょう。神父様にいたってはきっと「加護」スキルをフルに使って悠々と脱出する気がするぞ。

一番か弱いのは私。そして命が狙われているのも私だ。出来るだけの安全策はとっておきたいよね。

「ロロはのう、本気になるとそれはそれは怖いぞ?」

と、神父様も言うしね。ただ、

「にゃーん」

『まかせてー』

って、一番快適そうな場所を真っ先に陣取って、べったり寝そべりながら片目だけちょっと開けて言う子猫に言われても、説得力ってものがね? 全然ないんだけどね……。

「まあ、本気になれば、なんだけど……」

ほら、神父様もちょっと自信が無さそうだよ……。

でもそれでもロロは強力な武器になると私は信じている。それに私には他にも魔術という武器がある。

あとは死に物狂いで頑張るのみ。

それに王宮に入る前に、私たちは予定通りに準備をしていた。

私は顔を見せないように厚手のベールをかぶることになったのだ。

神父様が用意してくれたベールをすっぽりと被る。私もよく見えなくなるので、腕にはロロを抱いてロロの視界を共有した。

「君はベールでよく見えないだろう? 転んではまずい」

ここでなぜか、ピリピリしはじめた私の空気を全然読まずににこにこ嬉しそうに自分の腕を取らせようとする男、レック。

は? いえ見えてますが。知っているよね?

「それに見えない体裁の方が自然だよ? さあどうぞ」

それでも私の躊躇を全く気にせずに慣れた様子で気障に腕を差し出しウインクするチャラ男がそこにはいた。

なんか楽しそうだな、レック。念願の敵の王宮に入れるのがそんなに嬉しいのか。

まあ、はいそうですか。いいですよ。雇用主の言うことは素直に聞いておきましょう。

私は差し出されたレックの腕を、ロロを抱いていない方の手で掴んだのだった。

はい前を歩く神父様はニヤニヤしないでねー。「若いっていいのう。眼福眼福」とか小声で言っているのもロロを通して全部聞こえているんですからね?

別にいちゃいちゃしているわけじゃあないのよ。レックはただの歩く支えだ。杖となんらかわらない。神父様にはベールの中の私の据わった目をぜひご覧にいれたいところですね。

私がこれから自分の命を賭けてなんとか乗り切らなければいけない緊張の場面にとうとう突入だというのに、なんでこの人達はこんなにも呑気なのかしらね……?

そして私たちはその状態で、揃ってロワール王子との謁見の部屋なるものに足を踏み入れたのだった。

それほど大きくないけれど、それはそれは威厳というか威圧というかキンキラでゴテゴテな装飾過多なお部屋の中でその上座は一段高くなっていて、そしてロワール王子とその婚約者がそこに並んで鎮座したこれまた豪華な椅子に座っているのが見えた。

わあすごい……お金ってあるところにはあるのね……。

私がこの王宮のすみっこから出てからは、簡素な護送馬車とか貧乏な教会とか、辺境のこれまた清貧かつ実用一点張りな治療院とかにばかりいたから、まずはこの豪華な感じに思わず目を見張ってしまったのだった。

だけどもちろん次に見るのは、その部屋の主の片割れとして座るヒメの姿だ。

それはそれは豪華な衣装と宝石に身を包んで、貫禄十分という感じで堂々と座っているヒメ。

私が必死でこの世界の庶民として生活に溶け込み、地道にポーションを作って名前を広める活動をしている間に、彼女のほうは王族の一員としての態度なのかオーラなのかを見事に身につけたようだった。

心なしかうっすらと、光が彼女の周りを舞っているような気さえするよ。

まさかその衣装が反射板みたいな素材というわけではないだろうから、きっと自信やプライドからそういうオーラを出しているのだろう。

たった数ヶ月で、私たちは全然違う立ち位置になったのだなとその時私は思ったのだった。

お互いがそれぞれ全然違う環境と立場で、この世界に自分の居場所を作ったということなのだろう。

周りにはずらっと王宮の臣下らしき人たちが控えている。

私たちはその人たちの前を通り、壇上の二人の前で跪いた。