軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と謎解き2。

いくつかの部屋を越えて、死の危険を孕んだ分岐で正しい方を選んで。メイプル達は水中遺跡を正しいルートで進んでいく。

「うわ、また変な所に出た」

「怪しいね。何だか嫌な感じだ」

「どうしよっか?」

鉄扉を開けるとそこは大きな正方形の部屋。全ての面に同じような鉄扉があるものの正解がどれかは分からない。

メイプル達は部屋に踏み入る前に、扉の周りや手前の通路に暗号がないかを確認するもののそれらしきものは見当たらない。

「とりあえず奥の方も見て、何もないなら入ってみよう」

「そうしようか。引き返すわけにもいかないからね」

「はいっ、双眼鏡!」

「ありがとう。さて……」

通路ギリギリに立ったサリーはメイプルから双眼鏡を受け取って、部屋をくまなく確認していく。多少酸素を使うことになっても、得体の知れない部屋はしっかり確認すべきだ。

「……何も、ない。ないね」

「んー、どうしようか?三人でまとまって入るか、メイプルに頼む方法もあるけど」

メイプルに頼んで一人で入ってもらった場合、ほとんどのダメージ系トラップを無効化できるだろう。逆に扉がロックされたり、転移させられたりした場合は裏目となる。

どちらのリスクが大きいとみるか、三人で相談した結果、今回は全員で入ることにした。

「防御魔法は準備しておくね」

「私もどれもすぐ使えるよ!」

ソウの【擬態】でメイプルに変身することも考慮すれば、防御スキルは十分確保できている。

ダメージを与えるトラップであれば受け切れると判断し、三人は孤立させられるリスクをケアすることにした。

「雲の迷宮でも分断させられたばかりだからね」

「うん!皆で行こう!」

「よし、入るよ」

三人で足並みを揃えて同時に部屋へと飛び込む。すると背後の扉はガシャンと閉まってロックされた音がした。

三人がが警戒する中、ゴゥンという何かの起動音が響き水中に投影される形で暗号文字が表示される。ただその分量にサリーは顔を顰める。

「長い……!」

「カナデ、読んで!」

「……!分かった!」

メイプルの指示を受けてカナデは間違いのないよう正確に文字を読む。

表示されていた文字は数十秒で消えてしまったが、一度見たものは忘れないうえに解読も早いカナデにとってそれだけ時間があれば十分だ。

「分かりやすいように伝えるよ!これからこの部屋に各方向から石柱が伸びてくる。潰されたらアウト。安全な座標か安全な部屋、指示された所に入る必要がある!」

「指示の方法は?」

「浮かんだ文字と座標を示す光、妨害にモンスターも出てくるから対応しないと!」

二つの情報を合算して正しい安全地帯を導き出す。そのために最も重要なのはカナデだ。

「メイプルはモンスターの対応をお願い!カナデは文字を読んで欲しい!光は私がやる!」

「分かった!」

暗号でできた長い文章を素早く読むのはサリーとメイプルには難しい。

継続的かつ高威力な範囲攻撃ならメイプルが適任だ。

残ったサリーは光を担当することにしたが、ここも最適なのは瞬間記憶が可能なカナデだ。

ただ、カナデは二人はいない。

「大丈夫?難しそうなら僕がどっちも……」

「心配しないで任せて。カナデ程の記憶力はないけど、私も安全な場所を記憶するのは得意」

「そっか、そうだね。分かった!そっちは頼んだからね!」

「オーケー!」

サリーは集中力を高めると部屋全体に意識を巡らせる。

変化はすぐに起こった。部屋を小さな正方形に分割し、その中で座標のいくつかが赤く輝く。

サリーの目はその赤以外の位置全てを危険箇所と認識、即座に脳にインプットする。

捉え方を変える。いつもの回避技術の応用で、光った場所のみが安全地帯である、部屋全域への範囲攻撃だと認識すれば、サリーの脳はスムーズに完璧に安全な位置を記憶する。

それはサリーをここまで生き残らせてきた根幹となる技術。未だなおノーダメージを貫く怪物にミスはない。

「【全武装展開】【攻撃開始】!」

メイプルのすべきことは二人が集中できる環境を作り上げること。大きく開けた口に一つの砲を装備した魚型の機械が四隅に開いた穴から次々に出てくるが、メイプルは展開した兵装でそれを次々に撃ち落とす。

「【古代兵器】【滲み出る混沌】!」

水中であるため【毒竜】こそ使えないが、メイプルの攻撃は十分敵を殲滅するに足る。

大盾使いでありながら、敵の数がさらに増さない限りは攻撃によって味方を守ることができる。

【身捧ぐ慈愛】と【救済の残光】、【イージス】まで構えながらメイプルは二人の指示を待つ。

「うん、僕が読んで正解だった」

カナデは投影され浮かぶ文章に目を通す。カナデならば一目でわかるものの、文章には明らかに無駄な文字があり、解読者を迷わせるようにできていた。

文を読み切り、適切な文字だけを抽出する。短時間でそれをやってのけるのはカナデにしかできない。

「オーケー、カナデ。こっちは見終わった!」

「こっちも大丈夫。情報を合わせよう!」

互いの得た情報を素早く照合し、今回向かうべき安全地帯を明らかにする。

それとほぼ同時、四隅から溢れてきていた魚も打ち止めとなり、天井や床からそれぞれバラバラに石柱が隆起し始める。

「「メイプル、こっち!」」

「うん!」

確信を持って呼びかける二人についていくメイプル。三人は入り口から見て右斜め奥の上の隅を目指しそこで静止した。

ガリガリと音を立ててぶつかり合う石柱。次第に柱に塗りつぶされていく視界。すぐそばまで迫った石柱はしかし三人が身を寄せ合う場所までは届かずにその動きを止めた。

「ふー、ちゃんと合ってた」

「まだ数回あるからね。僕らも気を抜かずにいこう」

「二人とも頑張って!モンスターは近づけさせないから!」

まずはここを乗り越える。ミスをすればリカバリーする間もなく圧死するのは間違いない。大事なのは確実に正解を導くこと。カナデとサリーはしっかりと役目を全うすると決意を固めて次を待つのだった。

そうして凌いで凌いで凌ぎ続けて、その先でカナデとサリーは遂に望んでいた答えを得た。

「メイプル、正面の鉄扉!」

「行こう!さ、急いで!」

「うん!」

急いで泳いでいったメイプル達は鉄扉を開けてその先に逃げ込む。

そこに合ったのは長く伸びる廊下。それはすなわちメイプル達があの部屋を突破したことを示していた。

「ふー……何とかなったか……」

「やるねサリー。本当に覚えきっちゃうなんて」

「あれくらいならね。そうじゃなきゃいくらメイプルがいるとはいえ、今日まで生き残れてない」

「脱出成功、だよね?」

「うん。僕らは上手くやりきった」

「やったー!二人ともすごい!」

「メイプルも最後まで一匹も攻撃させなかったでしょ?」

「お陰で僕らも集中してやれたしね」

全員が一つのミスもしなかった。その事実にそれぞれがそれぞれを讃え合って、三人はより奥へと進む。

長い長い通路を通って、階段を下りて、襲いくる罠をメイプルで受け、モンスターは齧ってみて。ともかく、三人は水中遺跡の攻略をほとんど完了させていた。

「結構暗号は解読したけど……いやー」

「カナデに勝つのは難しいね……」

「挑戦してくれるのは楽しくて嬉しいよ。ふふ、負けてあげる気はないんだけど」

「真剣勝負だからね!」

「そういうこと」

ハンデをもらってもメイプルとサリーはカナデの解読速度には敵わないままである。

一秒あれば分かったと宣言してくるカナデ相手では、それも無理のないことではあるのだが。

そうして泳ぎ続ける三人は、索敵のため曲がり角でサリーがちらと先を見て、二人の方を振り返った所で立ち止まった。

「……暗号アリ」

「……!カナデ、ストーップ!」

「ふふっ、分かったよ。じゃあ今回は一分だ」

一分間で解読する。そう目標を設定して曲がり角から顔を出したメイプルは、その先にあった文字を見て目を丸くした。

「カナデ!」

「まだ数秒だけど?」

「『宝物庫』だって!」

「……なるほど。最後に解読対決で負けちゃったかな?」

長文ならまだしも、簡単な単語一つならメイプルとサリーも一分かからず解読できる。

「勝ちを譲ってもらったって感じだけどね。また次の機会があったらリベンジするかあ」

「ふふっ、いつでも待ってるよ。じゃあ行こうか。宝物庫は僕らが目指した最深部だね」

ここで酸素不足になっても馬鹿らしいと、三人は真っ直ぐに宝物庫へ向かいその扉に手をかける。すると、扉はゆっくりと開いていき、中に眠っていた宝物が三人の目に飛び込んできた。

「おおー!」

「ゴールにふさわしいね」

「そうだね。ここに求めてたものもあるはずなんだけど……」

部屋は扉の裏に展開されたエネルギーフィールドによって、水が入ってこないように守られていたようで、中には光り輝く金銀財宝がずらっと並んでいる。

しかし、カナデが目的としていたのは財宝ではない。

「あ。あれかな?」

カナデは部屋の中にあった一つの円盤を手に取る。それはくすんだ鉄色をしており、中心に何やら紋章が刻まれたものだった。

「これ?そんなにいいものなの?」

「うん。大事なアイテムなんだ。八層エリアの最後の鍵ってところかな?」

カナデは手に取った円盤のアイテム名を確認する。それは『深きに沈みし大国の紋章』という八層エリア用のイベントアイテム。

「これを使って『魔王の魔力』を取りにいく。ようは閉ざされた場所に入るために必要なものなんだ」

「なるほど。だったらこれで道は開けたってことになる?」

「八十パーセントくらいかな。まだ数体ボスを倒す必要があるんだけど……ここみたいに長くないし、二人ならさくっと倒せるよ」

「じゃあもうひと頑張りだね!」

「うん。二人とも最後まで頼んだよ?」

「勿論。『魔王の魔力』は逃せないし」

「任せて!さくさくっとクリアしちゃおう!」

メイプル達はこの長いダンジョンに対する報酬として、詰められるだけ財宝を詰めると、出現した魔法陣に乗って水中遺跡から脱出するのだった。