軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と日常5。

メイプルは扉を開けると早速中の様子を確認する。前方、左右に扉。正面には二階へ続くゆるやかな階段が二つあり、二階にも正面と左右に一つずつ扉が確認できる。

六つのルートを順に選んで探索するより他ないだろう。

「おお?なかなか広いな」

「外観通りね」

「僕らが入ってきたところからでも見える大きい古城だったから、この先も長そうだなあ」

「さてどこから行こうか?」

「マイ、ユイ、メイプル。どっちにする?」

探索を順調に進められているのは【身捧ぐ慈愛】と浮かぶ大槌による部分が大きい。

三人に決めてもらってついていく。どのみち正解のルートもまだ分からない。故に異論もなかった。

「やっぱり真ん中がボスに繋がってそうだよね」

「じゃあ右か左にします?」

「隅々まで探索するならそうした方が……」

「そうだね!」

せっかく見つかった隠しエリア。探索漏れがあってはもったいない。

八人はまずは一階右の扉を開けて先へ進むことにした。

扉を開け、トラップはないかと様子を窺うと、壁にかけられた明かりに照らされて、三体のモンスターがうろついているのが見えた。

外と同様黒いもやを漂わせ、大きな帽子と長い杖が特徴的なその姿はまさに魔法使いといった風だ。

「杖……見た目は魔法系っぽいですね」

「遠距離か。実体はありそうか?」

「透けているようには見えないな」

「マイ、ユイ、お願いできる?」

「「はいっ!」」

実体があるならこっちのもの。遮るものがない廊下での戦いは、基本的に射程で劣る分、一撃もらうことすら許されないマイとユイが不利だが、メイプルがいれば関係ない。

鉄球を使ってちまちま戦う必要もない。

機動力を優先し大槌を二本減らしてツキミとユキミにまたがり、【身捧ぐ慈愛】の範囲外に出ないようメイプルも後ろに乗せると、二人は一気に加速した。

それに気づいた魔法使いが真っ黒な魔法陣を展開する。そこから噴き出る黒い炎は先頭を行く三人に直撃するものの、その炎を裂いてツキミとユキミが突進する。

「うんっ!大丈夫、防御は任せて!」

「「はいっ!」」

ダメージがないなら心配することはない、そのまま二人は炎を放つ魔法使いへ接近し大槌を振り抜く。

「「えっ!?」

直後二人は目を丸くする。敵を粉々にする感覚はない。

それもそのはず、魔法使いの姿は瞬時に消えて僅かに後ろへ。短い距離をワープして、二人の攻撃を躱してみせたのだ。

それだけでなく、次なる魔法。魔法使いが大きく杖を振るったその瞬間。

「「「えっ!?」」」

魔法使いか自身をそうしたように三人の体が別々の位置にワープさせられる。

視認可能な距離ではある。しかし突如起こった陣形操作は二人を【身捧ぐ慈愛】の範囲の外へ弾き出した。

「【カバームーブ】【マルチカバー】!」

「「クロムさん!」」

迫る炎を受け止めたのは駆けつけたクロムだった。複数人を庇うスキルで攻撃をしっかり受け持ちマイとユイに炎を通さない。

「【血刀】!」

カスミが鞭のようにしなる液状の刀で牽制し、噴き出す炎を止めると、クロムも自己回復しながら敵を見据える。

「流石に一筋縄じゃいかないやつが出てきたな!」

「カナデ!」

「オーケー」

「【ウォーターボール】!」

「【トルネード】!」

直接攻撃がダメなら魔法だ。

吹き荒れる風と勢いよく射出された水の塊は、魔法使いに見事ヒットしそのHPを削り取る。

「絶対避けるってわけじゃないのね!それなら……!」

イズは取り出したいくつかのクリスタルを小さな砲にセットする。爆発音と共に射出されたクリスタルは数秒後弾けて、暗い廊下に黄色いスパークを走らせた。

ばら撒かれた強烈な麻痺攻撃により動きは止まった。これなら外すこともワープすることもない。

「【タイダルウェイブ】!」

炎のお返しとばかりに放たれた強力な水魔法。基本の魔法の修練により手に入れられるそれは真っ当に順当に強く、大波で廊下を埋め尽くしモンスターを飲み込んでいく。

うねる水の音に混じってパリンとモンスターの消失音が響き、水の消えた廊下には八人だけが残された。

「うん。威力はこれで十分だね」

「水魔法の中でもかなり強いから、範囲も広いし魔法使いはこういう時頼もしいね」

「本の在庫がないからさ、しばらくは真面目に上げておいたこっちで戦おうかな」

「十分」

イベントで使いに使ったカナデの魔導書は現在在庫確保中。切り札と呼べるものは減ってしまったが、それでもただ魔法使いに戻るだけだ。

それでも十分頼もしい。それに加えて、ソウもここぞという場面では活躍してくれるだろう。

「魔法以外は転移する感じか?カスミの【血刀】も避けたしな」

「詳しい条件を確かめてもいいが……カナデが倒せるなら問題ない」

「ごめーん!マイ、ユイ大丈夫だった?」

「はい!」

「クロムさんがしっかり守ってくれました」

「ま、こんなことでもないと流石に必要ないからな。緊急時に即動けるくらいの心構えはしてるってわけだ」

「やるわねークロム」

「二段構えならなお突破しづらいだろ?」

「ですね。さっきのモンスターはカナデメインで倒しましょう。本を使わなくていいのも大きいです」

節約できるところは節約して、より簡単に適切に勝つ。八人であることを最大限活かし、苦手も隙もカバーしあえばそうそう崩せはしない。

これくらいなら突破してやると、自信を持って八人は暗い廊下を進んでいくのだった。