軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と天下分け目2。

ペインとサリーがリリィとウィルバートに突撃していく中、両軍のぶつかり合う主戦場はモンスターも入り乱れての大混戦となっていた。

「【灼熱】!」

ミィも容赦はしない。イグニスに乗って高速で飛び回り、空から放つ業火は受けきれなかったプレイヤーを焼き払っていく。

上空に意識を向けさせれば地上が楽になる。

「【攻撃開始】!」

「【破壊砲】!」

「イグニス!」

当然それを放っておく【楓の木】ではない。ウィルバートをサリーとペインが抑えたことで、ある程度安全が確保されたメイプルも鉄の箱から飛び出て攻撃参加を始めた。

ミィに好き勝手はさせないと、最後方からメイプルによる弾幕とカナデによる魔法攻撃が空へと放たれる。

動きを制限する為にばら撒くメイプルの弾幕の範囲はかなり広く、ミィの上空からの火力支援を的確に妨害する。

「【豪炎】!」

それでも隙を見つけては攻撃するが、中々大きな被害につなげられない。

想定していたことではあるが、改めて向き合うとやはり苦しい状況と言える。

「ウィルバートから……そうか」

ミィは届いていたメッセージを確認すると、一旦引いて、メイプルの射撃や、飛行能力を持つテイムモンスターを連れたプレイヤーの追撃を避け、ギルドメンバーにメッセージを送った。

「【極光】!」

降り注ぐベルベットの雷がプレイヤーを焦がす。連続して次々に降る雷の雨はミィの炎よりも防御が難しい。

本当ならば敵陣深くに飛び込みたいところだったが、今はヒナタがいない。【重力制御】なしでは飛び込むことはできても帰り道が確保できないのだ。

そして、そんなベルベットも自由にさせてはもらえない。常に後方に気を配っていなければ巨大な鉄球が飛んでくる。

「【パリィ】!そっちいったっす!わっ……!?」

ベルベットは眼前に迫る鉄球を弾く。しかし、直後発生した爆炎に包まれ、回復のために下がらされる。

「本当、器用っすね!」

声は届かない。最後方に見える四つの影。飛び回り魔法を放つカナデ、高台に陣取りいつもの兵器で固定砲台となるメイプル、同じく鉄球による火力支援を行うユイ、作り出した砲台で爆弾を撃つイズ。

ステータスも武器も全く違う四人だが、その遠距離攻撃はどれも超高水準のものだったのだ。

最後方から攻撃できる。ただそれだけでも十分な強みだ。どれだけ倒したくとも射程の短いプレイヤーは手出しができないからである。

「メイプル、何人か突っ込んでくる」

「分かった!【古代兵器】!シロップ【精霊砲】!」

メイプルを何とかするのは自分達の役目だと、モンスターに乗り空を飛ぶプレイヤー達が接近せんとする。

最早そこに放たれるのは漆黒の弾丸による弾幕だけではない。当然追加で飛んでくる地上からの妨害、そしてメイプルの隣でガトリング砲のように回転する二つの筒から撃ち出される青い光弾。

二重、三重の弾幕が分厚い壁のようになって近付くものの行手を阻む。

「せーのっ!」

人間の出す音とは思えない轟音。隣でユイが殴りつけた球体は高速で飛翔すると空中で爆散し、辺りに大ダメージを与える。

ユイの放った球自体が直撃したわけではないため即死は免れるが、無事とは言い難い。

「イズさん上手くいきました!これなら当てられます」

「いいわね。余ってるからどんどん使っちゃって」

高速で動くプレイヤーに鉄球は当てにくい。それが空を飛び回るなら尚更だ。

ならば威力は落ちてしまうものの、的確に当てるため爆破させるのが一番だ。

空中への対策も完璧。イズも敵陣に向けて惜しむことなく爆弾を連射する。

「ふふふ、投げるしかなかった頃よりずっといいわね!」

敵陣で間を置かずに発生する爆発を見て、イズは満足そうだ。

人数で勝るメイプル達は次第に敵を押し込んでいく。リリィの召喚兵に支えられていた前線が崩壊し、大量のプレイヤーが雪崩れ込んで敵を分断する。それはサリー達の戦いが決着した頃とほぼ同時だった。

「【権能・超越】【陣形変更】!」

分断され、蹂躙されるしかなかったはずのプレイヤー達がその場から消失する。

【権能】により移動距離と効果範囲を大幅に強化した【陣形変更】により、メイプル達の前から一瞬にして脱出したのだ。

それでも有利なことに変わりはない。相談などせずとも全員の意思は一致していた。

王城へ向けて追撃する。元より勝つにはそうする他ない。ここで引く理由はどこにもないのだ。

前方で指揮をとるペインと別れて、サリーがメイプルの元へ戻ってくる。

「メイプル!大丈夫だった?」

「うんっ、何ともないよ」

「ペインさんと二人でウィルバートさんは倒してきたから、これでかなり安全になったはず」

「本当!?すごーい!流石サリー!」

「まだ皆コレのこと良く分かってないからね。まあ、不意打ちみたいなものだけど……勝つために使えるものは使わないと」

サリーは【偽装】によって見た目を揃えたダガーをくるくると回す。

「メイプルさん乗ってくださーい!」

「分かったー!」

メイプルはここまで来た時と同じようにユキミの背に乗せてもらって進軍についていく。

「ミィとベルベットは?」

「倒せてないと思う。こっちまで来なくて……」

「大丈夫大丈夫。もし倒せてたら、作戦も変わるだろうし一応確認しただけ。皆が偵察してくれてるから、【黎明】と【雷神の槌】に合わせるのだけはミスしないようにしよう」

「おっけー!」

「うーん、責任重大だなあ」

大規模な範囲攻撃に対して少ないリソースで対応できるのが【方舟】の強みだ。

サリーは【虚実反転】を既に使っているため、今回はカナデとソウがその役割を担う。

ソウがメイプルに【擬態】すれば、サリーとはまた違ったアプローチで【方舟】を二箇所同時に使用することができる。

進軍が続く中、辺りに索敵スキルのエフェクトが広がっていく。

撤退したと見せかけて、隠れて奇襲を狙っていたなどといったことがないように、多くのプレイヤーで警戒網を敷く。【楓の木】の面々は良くも悪くも尖ったスキル構成であるため、それを手伝うことはできない。その分戦闘できっちり貢献するのが役目となる。

遠くに見える王城の影。敵が守る場所も自分達が攻める場所も同じである以上、必ず再び戦闘は起こる。再戦の時はそう遠くないことをここにいる全員が感じている。

集中力を高め、行手を阻む敵モンスターを薙ぎ倒し、メイプル達の軍勢は勢いを落とさずに侵攻を続けるのだった。