軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とリスク。

ガシャンと音を立てて地面に激突した黒い塊は、破片をばら撒きながら勢いよく転がっていく。光り輝く地面の上に元の形が分からなくなった残骸が散乱する中、塊はようやく勢いを失い、やがて砂煙を巻き上げつつ停止する。

「とうちゃーく!」

「奇襲してる途中よりよっぽど疲れたかもー」

「ま、特に何もなく無事帰ってはこれたね」

黒い塊の正体はメイプルだった。爆発の勢いで遥か上空を移動するメイプルを追撃してくるプレイヤーなど当然存在せず、狙い通り自陣王城周辺への墜落に成功したのである。

「流石に追ってきてはないかなー」

「流石にね」

「一旦中まで戻る?」

「うん。そのつもり。メイプルはまたどこかで上手く攻撃参加してほしいな。同じやり方ならフレデリカと一緒に」

「またコレで帰るのはなしだからねー」

「フレデリカが派手にやりたいっていうからさ?」

「地味なのも悪くない。うんうん、思い直したかもー」

今度は穏便にやることにしようと、フレデリカは一人頷く。敵に見つかって追撃を受けるような派手な戦闘を起こさなければ、シロップに乗ってゆっくり帰ってくることができるだろう。

「じゃあ戻ろっか!もし狙われてたら大変だし!」

「そうだね。どんなときも油断は禁物」

三人は急いで町の中へと戻っていく。メイプルの自爆の腕も上がったもので、より正確に目的地付近に落下するコツを掴んだことで、町まではそうかからなかった。

「ふー……お疲れー。やっぱりあの高さまで行けるのはいいねー、ノーツも大きくなれるようにならないかなー」

「……ならなそう」

「何だか想像できないかも」

「普段はレイに乗せてもらうからいいけどねー。もっと本格的に戦う時はまた言って。バフならいくらでもかけるからー」

「うん!」

「その時は【集う聖剣】全体と足並みを合わせてかな?」

「そうだねー。その方が私もやりやすいしー」

三人は一応空に何か不審物が浮かんでいないかを確認しつつ、王城の方へと歩いていく。

自分達がしたことを相手がしてこないとは言えない。

ベルベットとヒナタにも、リリィとウィルバートにも、そしてミィとマルクスにも飛行能力があることはすでに確認済みだ。最も警戒している三つのギルドには上を取って攻撃してくる可能性が存在する。

そして同時に、それらのプレイヤーは少人数で広範囲に大きな被害をもたらすことができる。来ないと思っているより、いるかもしれないと思っている方が慌てず対応できるというものだ。

「夜はこのまま時々攻めたりって感じになるのかなあ」

「それで済むなら楽だけどね」

「どうかなー。ベルベットなんかはいつ突っ込んできてもおかしくないタイプだしー」

戦闘を続けた昼。そして休息に入っているプレイヤーが増えた夜。互いに何もせず防衛をメインにして町に篭れば大きく状況は動かないだろう。だが、疲労や暗闇、プレイヤー数の減少を攻め時とみて一気に攻勢に出るギルドがあれば、再び大きな戦闘が起こりうる。

「そうなると夜は周りが見にくい分支援は難しくなるかなー」

「確かにそうかも……」

「それでも相手がやるっていうなら戦うしかないからね。メイプルも準備だけはしておいて」

「うん!分かった!」

仕掛けられれば、応戦するしかない。そうでなければ一方的に被害が出るのはこちらになる。

「だから仕掛けられるくらいなら、状況を整えてこっちから仕掛けたい。ほら、さっきの奇襲もこっちが有利な状況から一気に攻めきったでしょ?」

「うんうん」

「でも、それを考えるとやっぱりウィルバートが嫌だよねー」

「そう。だからどこかで」

「何とかして倒さないとねー」

まだウィルバートがどこかにいる。そのプレッシャーは強烈だ。フレデリカなどは、察知できなければ一瞬で撃ち抜かれて倒されてしまうだろう。

「できるかなあ……」

「そこまで防御が硬いわけじゃないだろうから、近づければね」

「それが難しいんだけどさー」

どうやら常時発動しているらしい異常な広さの索敵能力はノーツよりもさらに強力だ。あの目があれば先に仕掛けることも、接近に気づいて離れることも思いのままなのだから。

「何とか考えてみる。もっと現実的ないい案もね」

「ふーん」

「頼りにしてるよサリー!」

「任せて」

少なくとも一つは思いついているのかと、フレデリカは既にある案とやらが気にはなった。しかし、サリーの言い方から、それが相当ハイリスクで実行を躊躇うものであると察し、特に深く聞く必要はないと聞き流す。

「いい案があったら教えてねー。んー、勝率80%くらい?」

「欲張りだね?」

「そー?」

「でもそれくらい上手くいくなら嬉しいよね!」

今回は上手くいった。次も上手くいくように頑張ろうと二人を鼓舞してメイプルは少し早足で二人の隣を歩いていく。

「んー、確実に勝つ方法か……」

サリーは歩きながら考える。

当然、そんなものがないことは分かっていた。サリーの持つ幻影を操るスキルを相手が把握できていなかったように、こちらも把握できていないスキルがあるだろう。

それは戦闘から絶対の二文字を消失させる。

そもそもデスまで追い込むためには、相手が撤退せず、最後まで戦闘に付き合ってくれなければならない。

そのためにはこちらが何らかのリスクを負うこと。今戦うことで相手が有利を得られると思えるだけの餌。それが必要だ。

サリーには一つ心当たりがあった。それでも、それはサリーには選べない策だ。

「ま、考えておくから、メイプルはゆっくり待っててよ」

改めてメイプルにそう言うと、サリーは背後にそびえる壁の外へ意識を向ける。

敵が今最も撃破したい対象。そして狙うべき相手。

【不屈の守護者】がないメイプル。

日を跨ぐまで、安全に。それがベストだ。

いかに強力なプレイヤーでも城の中までは踏み込めない。

逆ならまだしも、サリーにはメイプルを囮にしてリスクある作戦を実行することなどできないのである。