軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と即死。

メイプル達が夜空に流れる星となっていたその頃。敵陣営の町の中では毒の雨が降っていることなどまだ知らないまま、メイプル達がそうだったようにそれぞれが休息をとっていた。

そんな中でも、イベント前から話し合って作戦を立てていた【thunder storm】と【ラピッドファイア】は、この後のことも話しつつ、次の出撃タイミングを合わせるつもりで時間を過ごしていた。

「……こうして黙っていると、印象も違うけれどね」

リリィの正面には先程まで戦場に雷を落とし、プレイヤーを殴り飛ばして屠っていたのと同じ人物とは思えない落ち着いた様子のベルベットが座っている。

「そうでしょう?ふふ、見直しました?」

「黙っていなくとも話し方がそれなら。と訂正しておこう」

何気ない細かな所作からは確かな育ちの良さが感じられるが、何をどう間違ったら拳で戦うインファイターになるのかとリリィは不思議そうだ。

「ベルベットさんは落ち着かないといけない時はよくこうするんです」

「外面から作る……ということなのでしょうか」

「まあ確かに、これなら先頭切って突撃してはいかなさそうだけどね」

落ち着いて休めているなら何でもいいと、現実世界でのあれこれを必要以上に聞くことはせず、リリィは用意した紅茶を飲む。

「ふぅ、日も沈んだことだ。どこかでウィルとフィールドに出たいところだね」

「ベルベットさんはどうしましょうか」

「予定通りだと……」

「はい、私は待機ですね……ちょーっとだけ。ほんの、ちょーっとだけ行きたいっすけど!」

「おっと、中身が出てきたね」

どう見てもちょっととは言えないその様子にリリィは苦笑する。とはいえ、後方支援を主とするリリィとウィルバートや【重力制御】によって移動のほとんどをベルベットに任せているヒナタと違い、一日走り回ったうえハードな戦闘も多かったベルベットの疲労は大きいものだ。

大事な場面で動きが鈍るようなことがあってはならない。

「外が騒がしいですね……?」

「何かあったのでしょうか……」

ウィルバートとヒナタは扉の向こうから何やら慌てたような声が聞こえてくるのに気付いた。

「ウィル、見に行ってみよう。奇襲の可能性もある」

「ヒナタ、ヒナタ!」

「はい。でも……無理はしないでください」

四人で揃って外へと出ると、そこでは数人の男達が錯乱した様子でギルドメンバーに事の顛末を語っている最中だった。

「分かんねえ。外で突然どっかから攻撃されたんだ……」

「よければ私達も聞かせてもらっていいかな」

「ああ勿論だ!」

そうして改めて詳しく内容を聞くと、それがいかに対処しにくいものかが分かってくる。

「なるほど。聞かせてくれてありがとう。私達もフィールドに出る時には気をつけることにするよ」

「そうしてくれ。ああ……酷い目にあった」

疲れた様子で去っていくプレイヤー達に別れを告げて、四人は聞いた内容を整理する。

「地中、もしくは上空からの攻撃だと思いましたが、リリィは?」

「同意見だね。どうにも突然の雨が怪しい。どちらかというと空かな」

死人が出る前にあった分かりやすい変化は雨だ。当然、空から降っていたものが実際は雨でない可能性もある。

「それに!もう一つ気になることがあったっすよ!」

戦闘の気配にもう落ち着いて休んでいる場合ではないと、戦闘モードに完全に切り替わっているベルベットは、もう一つの違和感について指摘する。

「攻撃されたのにダメージエフェクトがない……ということですよね」

ダメージエフェクトが出ない。これはおかしなことだ。

たとえばウィルバートが遠距離から狙撃によってプレイヤーを撃ち抜いたとする。プレイヤーはひとたまりもないだろうが、着弾と同時に激しいダメージエフェクトが噴き上がるはずだ。

プレイヤーを一瞬で葬る攻撃とはそういうものである。

「即死かな。かなり珍しいし、私もプレイヤーが使っているのはほとんど見たことはないが」

リリィの見たことがあるスキルも効果の強力さと引き換えに、射程や範囲がかなり制限されているものだったため、今回のケースには当てはまらない。

ただ、即死であればダメージエフェクトを出さないという条件には当てはまる。

「気づいたら攻撃されていた。ということがないようにしないといけませんね。こうなってしまうと、流石に仕方ありませんか……」

ウィルは少し顔を顰める。その理由はリリィだけが分かっていた。

「ああ、頼むよ。より広範囲を索敵する必要がある。念のため、頼めるかい?」

「ええ。すぐそこまで来ていたのは事実ですし、まだ隠れて待っている可能性もあります」

「ならやろう。いくぞウィル【休眠】」

リリィはスキルを使い、少しして対応するスキルである【覚醒】によって宣言前の状態に戻した所でウィルバートに問いかける。

「どうだい?」

「……いませんね。問題なさそうです」

「むむむ、それテイムモンスターを呼ぶときのスキルっすよね!」

「とっておきだからね。秘密兵器さ」

「【休眠】……その後【覚醒】ということは今もいるはずです、けど……?」

姿は見えないうえ、リリィでなくウィルバートに効果があるらしく。二人はどういうバフなのかと首を傾げるしかない。

それでも、この状況である。嘘をついてはいないことは確かだ。本当に索敵は済んだのだろう。

「さて、索敵は済んだ。ふむ、どこかで二人の相棒も見たいものだね」

リリィ達のテイムモンスター以上にベルベットとヒナタのそれは謎に包まれている。何せ見た者は一人もいないというのだから。

「機会があれば、って感じっす!」

「期待しておくよ」

さて、仕掛けられたからにはこちらも仕掛けなければならないと、リリィ達は策を練る。

生き残ったプレイヤー数も重要になるため、やられっぱなしでいるわけにはいかないのだ。

そうして、次の戦いを待ち、夜はさらに深まっていくのだった。