軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と索敵範囲。

戦闘の結果は出撃メンバーの全滅という形で敵陣営に伝わった。

ほんの一瞬の出来事。次々と、しかし間をおかずに全員が倒されていくのが、青いパネルに表示したギルドメンバーリストによって確認できていた。一人また一人とこのフィールド上にいない表示に変わっていく。それの何と異様で恐ろしいことか。

「……?何だか向こうが騒がしいっすね?」

「ちょっと聞いてきますね。ベルベットさんは待っていてください」

ヒナタが何やらざわついているプレイヤー達に訳を聞いて戻ってくる。

そうして、ベルベットもまとまって行動していたプレイヤーが突然大量死したことを知った。

「【集う聖剣】が出た方とは逆側っすね」

「はい。ペインさん達であれば確かに可能だとは思いますが……」

リリィ達との交戦後、素早く再出撃していれば逆側まで行けないこともない。足の速いプレイヤーを集めフレデリカのバフをかければ移動速度はかなりものだ。

「うーん……違うような気もするっすね。リリィ達にもどう思うか聞いてみるっすよ!」

二人も今は再出撃していないはずだと、ベルベットはリリィに連絡を取る。

ほどなくしてやってきたリリィとウィルバートに聞いた話をそのままま伝えると、二人もベルベットと同じように違和感を覚えたようだった。

「あの様子ならば王の攻撃での被害はなかったでしょうし、【集う聖剣】の層の厚さなら再出撃は簡単にできると思いますが……」

「全員が一瞬でまとめて死亡した。というのは気になるね。【集う聖剣】は確かに強いが、そういった戦闘スタイルとは少し違うように思う」

【集う聖剣】は適切なバフと防御スキル、各個人のレベルの高さによって、丁寧に目の前の戦いに勝ち続けて優位を築く。そんな正統派な強さで戦うギルドだ。だからこそ隙や弱点が少なく、いきなり突き崩されるようなことがない安定感がある。ただ、それは今回のような一瞬で決着する戦闘にはなりづらいことを意味する。

「もっと……ミィやそれこそベルベットのような。そういった範囲火力とそれに合わせた支援がいるだろうね。フレデリカとドラグがその役割を担った可能性もなくはないが……」

リリィの直感はそうでないと告げている。

「【楓の木】だと思うね。メイプルが見覚えのない兵器を展開するのを見ている。あれが確認した防御能力以上のものを持つとしたら……未知のスキルによるものだとしたら」

ありえるような気がしてくるだろう。と、そう言うリリィに三人は賛同する。目についたプレイヤー全てを逃さず倒し切る爆発力。それがイメージさせるのは【集う聖剣】より【楓の木】だ。

「ミィからは上手く跳ね除けたと聞いていたが、敵も反撃が早いね。どうやらもっと戦っていく必要があるみたいだ」

有利を取ったと思っても、少し隙があれば逆転される。ならばこちらも攻め続ける必要がある。それも、より効率よくだ。

「小回りも効く。四人で行こう」

「了解っす!」

「ヒナタにはいつも通り敵の足を止めてもらいたいね」

「はい。大丈夫です」

「ではどちらに行きますか、リリィ?」

「ウィル。その『目』で敵の中心になっているプレイヤーを探してくれ。各ギルドのトップがいいね。こちらの被害が大きくなる前に戦況を変えられるプレイヤーを消す」

「分かりました」

「んー!燃えてきたっす!」

的確に、適切に。敵陣営を支えるプレイヤーを倒す。この四人ならそれができる。

大規模な戦闘だけが戦況を左右する訳ではないと、四人は町を出る。

「じゃあぱぱっと走って行くっすよ!【エレキアクセル】!」

ベルベットが全員の移動速度を上げ、ウィルバートがさらに追加でバフをかける。ヒナタがいつも通り重力操作によってベルベットの横に浮かぶ中、ベルベットはさてどこへ行こうかとウィルバートの方を見る。

「流石にまだ範囲内には誰もいませんね。中央の主戦場は【炎帝ノ国】が陣取っていますし、崩れないでしょう」

「ならどうするっすか?」

「……そうだね。じゃあ早速例の大量死があった方を見に行こうか。ウィルの索敵があれば待ち伏せもされないからね」

未知の脅威、推定【楓の木】がそのまま侵攻を続けているかを確認する必要はある。現状、部隊を全滅させた何者かが何をしているかリリィ達には全く分からないのだ。

次の犠牲者を出さないために、早いうちに確認しなければならない。

「町を出る時にしばらく誰もあの一帯に近づかないよう言っておいてもらったからさ」

少人数ならウィルバートが先に敵を発見しヒナタが足止めをすれば被害なく撤退できる。リスクはできる限り減らして、四人は移動を開始した。

「うーん、上手く入り込まれたってことっすよねー。全く他のプレイヤーがいなかったってこともないっすから」

「そうですね……姿を消すスキルとか、そういうものかもしれません」

「ドレッドさんもテイムモンスターでパーティーごと姿を消していましたから、スキルを使って監視の目が薄い場所を突破していた可能性はありますね」

「気をつけておくっす!」

町の近くには流石に敵プレイヤーもおらず、問題のエリアが近づいてくる。

四人はそこへと続く間欠泉が点在するエリアを歩いているが、今のところ敵は見当たらない。

「死んだのはこの先の霧の中か……」

「奇襲にはちょうどいい場所です……気をつけないと」

「はい。いつでもスキルを発動できるよう準備をしておいてください。いるかいないかは私が確認しますから」

ウィルバートはそう言って少し先に見える霧に煙る一帯に目を向ける。

「おっと、これは……」

「何か見えたかい?」

「……この先は爆弾をはじめとして、罠があちこちに」

「なるほど。もし来ようものならまた消し炭にしてやるということだね」

「この先の霧の中っすか?」

「はい。ただ……ちょっと確認したいことがあるので入りましょう。敵はいませんし、私の後ろについてきていただければ大丈夫です」

ウィルバートは罠が仕掛けられていることに確信を持っているようだった。ベルベットも本来別ギルドであり、基本はライバルであるため詳しいことは聞いていないが、ウィルバートのそれは予測や予想ではなく、その目で見てあることを既に確認済みであるというような話ぶりだ。

「むむむ、スキルも使ってないように見えるっすけど……」

「どうだい?いい目だろう?」

「はい。罠を避けられるのは……本当に助かります」

霧の中、言われた通りあとをついていき、ウィルバートに合わせて三人は立ち止まる。

「このタイプなら触れただけでは爆発はしないので……さて」

「何もないっすよ?」

ウィルバートは何も無い空間に手を伸ばし、見えない何かを持ち上げると、それを上空へ放り投げて素早く弓を構える。

「ヒナタさん。万が一のため構えておいてください」

「わ、分かりました」

返事を聞いてすぐに放たれた矢は空中で何かに着弾し、霧を吹き飛ばしつつ大きな爆発を起こした。

「引火は……していないようだね」

「おおー、びっくりしたっす」

「この辺りは見えない爆弾があちこちに設置されています。導火線も繋がっているので、下手に爆破させるとこのエリア全て……」

「ウィルがいないと近づけないか」

「ええ。何か看破する方法があるかは分かりません」

爆弾が設置時間の限界を迎え消滅するか、取り払うかしなければここは踏み入ることのできないエリアになる。敵に好きなタイミングで起爆されれば大きな被害が出るのは間違いないからだ。

「なら全部掃除していくっすよ!せっかく見つけてくれたっすから!」

「はは、その感じ……力ずくでだね?」

「それしかできないっす!」

「オーケー。なら一旦離れるとしよう。巻き込まれたら洒落にならないからね」

四人は一旦爆弾地帯から少し離れると、リリィとウィルバートは装備を変更して兵士による壁を展開。ヒナタはそこに氷の壁を付け加えて前方からの衝撃に備える。

「いつでも構わない」

「【雷神再臨】!」

ベルベットがスキルを使うとスパークと共にその身を雷が駆ける。

「【紫電】!」

ベルベットが突き出した拳から直線上に紫の電撃が走る。それが霧の中へ吸い込まれた直後。視界全てを覆う爆炎が全てを飲み込みながら一帯を焼き焦がす。

「【傀儡の城壁】!」

「【氷壁】!す、すごい威力ですっ……!」

アイテムが引き起こしたものとは思えない異様な威力に、急いで防壁を追加して迫る炎と衝撃をシャットアウトする。

もしも四方から爆炎が襲ってくる場所での起爆となっていればただでは済まなかっただろう。

「……終わったみたいっすね」

「爆弾は全て連鎖爆発したようですね。これで安全は確保されたかと」

「私からメッセージを送っておくよ。敵陣に踏み込んでいく時に、この仕掛けがあるかもしれないと共有しておかないとさ。あっちの与えてくるプレッシャーも中々だね」

ウィルバートが待ち構えている可能性があることは、メイプル達の陣営の進軍を止める圧力となっているが、この爆発にはそれに負けない集めがある。

「ウィル、このままこの先も索敵していく。そのまま敵陣で戦闘に入ろう」

「分かりました」

「いよいよっすね!」

「少し……緊張します」

「常にこちらの有利なタイミングで仕掛ける。楽に構えていてくれていればいいさ」

ここを安全に突破するには自分達が適任であると、ウィルバートを先頭にして四人はさらに爆弾処理を続けながら先へ進む。

目の前にはメイプルがその防御力によって無理矢理進んできた地形が続いている。

四人は攻撃能力に関しては優れているものの、防御面はメイプルには敵わない。いくつかの地形は迂回するより他にないのだ。

「この辺りは地形のせいでルートが読まれやすい。ウィル以上の射程の攻撃はそうないだろうが……そろそろ敵陣営だ。気をつけよう」

「ふー……そうっすね」

ベルベットも会敵の瞬間が近づいてきていることを肌で感じ取って集中力を高める。

そうして進むこと少し、ウィルバートの索敵範囲にプレイヤーが入り込む。

「います。かなり先ですが、二人。どこかのギルドの偵察役のようですね」

「やれそうかい?」

「バフさえいただければ」

「オーケー。【王佐の才】【戦術指南】【理外の力】【賢王の指揮】【この身を糧に】【アドバイス】」

リリィのスキルによって体からオーラを放つウィルバートは、少し移動し位置を調整すると弓を構えて引き絞る。

「【ロングレンジ】【引き絞り】【渾身の一射】!」

赤いエフェクトの尾を引いて、木々の隙間を縫って射程を伸ばした必殺の矢が飛んでいく。ウィルバートは続いてもう一度矢をつがえると、また三人にはよく見えない遠くの敵に矢を放った。

「ふぅ……大丈夫です。倒しました」

「ほ、本当っすか?」

見えないまま倒したと言われてもベルベットに実感がないのも当然だ。

「ウィルが言うなら間違いないさ」

「これで倒せてしまうと相手はできることがないですね……」

信じ難いことではあるが、ウィル曰く、前方確認のため木の陰から顔を出した一瞬を射抜いたとのことだ。

「倒せそうな相手……かつ少人数なら私が倒しましょう。そうでない相手は援護と退路確保に回ります」

「その時は私達の出番っすね!」

「はい。そういうことです」

ウィルバートはその後も異常な精度の先制攻撃により、彼にのみ見えている離れた敵を一方的に葬っていくのだった。