軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と援軍2。

その頃、落下する三人を見送ったシロップの上のサリー、カスミ、イズ、クロムの四人は自分達がきちんと【身捧ぐ慈愛】の範囲内にいることを確認し、飛び降りる準備をしていた。

「八本持ちはヤバイな。攻撃力がとんでもないことになってるぞ」

「きちんと強化までしてあるもの。武器に付与できる増加【STR】は装飾品よりも多いし、両手持ち武器なら尚更よ」

ダメージ量を見て、苦労はしたものの、いいものを渡すことができたとイズは満足そうに頷く。本来一本しか装備できないことを前提にしている大槌の高い【STR】値を八本分も参照すればそれだけでも滅茶苦茶になる。二人の場合はそれをさらに倍にしていくスキルがあるのだから、こうなるのも当然と言えた。

「でもすごいね。先に降りてもらって怯ませたところに降りるって言ったけど、本当に生き残るとは思わなかった」

「ああ、貴重なものが見られたな。あの二人の攻撃を耐える生物がいるとは」

それぞれに目の前の惨事に感想を述べつつ、巨大イカを倒しきるために、四人はメイプル達を追って飛び降りる。

その攻撃力が今までとは桁違いに強化された、対ボス特化決戦兵器であるマイとユイが戦場に投入されたことにより、一気に戦況は有利となった。

地面に叩きつけられた巨大イカの上にそのまま降り、メイプルに守られながら、二人はとてつもない威力の通常攻撃を続ける。いくら初撃を耐えられたとしてもそれは全身全霊の必殺技でも何でもなく通常攻撃なのだからどうしようもない。

さらに超高ダメージにより巨大イカの放つ水が止まったことで、生き延びた面々は今がチャンスだと一気に攻勢に出る。

生まれた分かりやすいチャンスを生かすため、全員が持てる限りの大技で攻撃する。その中でもやはり一際目立つダメージエフェクトを散らせているのは地面に横たわる巨大イカの上に陣取る【楓の木】の周りだった。

「うん、やっぱり僕のギルドの皆は頼もしいや」

こうして、カナデ達三人が出会った巨大イカは一転攻勢により光となり爆散したのだった。

戦闘が終わり生き残ったものがそれぞれに感想を口にする中、メイプル達はカナデの元まで駆け寄ってくる。

「ありがとう。ごめんね?急に呼んで」

「ううん、大丈夫!でもすっごいのがいてびっくりしたよー」

カナデとメイプルが話していると、リリィもそれに混ざってくる。

「驚いたね。聞いていたより随分たくましくなっているようだ」

その目線の先にはマイとユイがいる。両脇に浮かんでいるものも合わせて、八本の大槌を持っている姿はあまりにも異様なものである。

「ふふふ、特訓の成果です!」

「なるほど……そうか。いや、随分凄い特訓をしたね本当に」

「ええ。私も大槌が八本見えた時は見間違えたのかと目を疑いました」

マイとユイは全く違う操作感に慣れるために五層で大槌を振り回していたため、最新の層である七層に入り浸っている多くのプレイヤーからすると今回初めて見ることになる。

その常軌を逸した後ろ姿に、あちこちからざわざわと驚いたり狼狽えたりした声はそのためだろう。

と、ここで全員に運営からのメッセージが届き、そこには今回の巨大イカが何だったのかを示す内容が書かれていた。

「なるほど……イベント期間が長いのはこれがあるからだったと。そういうわけだね」

「巨大ボス出現?」

「イベント第二部、レイドボス討伐の後半戦って感じかな?他にも変更点はあるみたいだけど。メインはこれだね」

リリィはさっと読み終えて内容を把握し、同様に内容を把握したサリーはメイプルに説明する。

期間を半分程残して、限定モンスターを一定数倒すことに成功したプレイヤー達に、次の目標として各層に現れる巨大ボスを倒すことが告げられたのである。

リリィ達が感じていたように、これは一パーティーで倒すようなものではなく、事前に決まった時間にマップ上に示される場所へと向かって多くのプレイヤーで撃破を狙うものである。出現からしばらくすると消えてしまうため、適宜討伐に向かう必要がある。

「これも撃破数に応じてイベント後にメダルが貰えるのと、また別の素材のドロップもあるらしいよ」

「おおー!じゃあまた頑張らないとだね!」

今回の出現は特殊で、カスミが四層の町の最奥に初めて辿り着いた時と似ており、イベントモンスターの討伐数がちょうど最後の報酬まで届いたために発生したものだった。カナデ達が居合わせたのも偶然というわけである。

「【楓の木】も奮って参加してくれると助かるね。あの巨体を吹き飛ばす攻撃力は唯一無二だ。二人の力は是非とも欲しい」

マイとユイは高く評価されて照れているが、その評価も妥当だと言える。討伐をスムーズに終えるのにマイとユイはこれ以上ない貢献ができるだろう。

「対モンスター……しかもあれだけの巨大だと当てやすいし、戦いやすいだろうね」

動きがそこまで速くないため、カナデの言うように避けられにくいのは大きい。ともかく、今回はここまで。また次の戦闘まで待つことになるだろう。

「予期せずして二人の成長も見ることができた。いい収穫だったさ。ウィル、ギルドメンバーをまとめて戻るとしよう」

「ええ、そうしましょうか」

「えっと、またボス戦で会いましょう!」

「ああ。そうなると嬉しいね。また会おう【楓の木】」

リリィはそう言い残すとウィルと共に去っていく。ここからは期間に余裕のあると思われていたイベントで突如始まった後半戦。メイプル達は改めてイベントに臨むのだった。