軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と塔二階3。

暗い通路を、メイプルが後ろ、サリーが前で進んでいく。

「今の所は何も……」

「さ、サリー!?」

「メイプル?」

唐突にメイプルが声を上げ、サリーが驚いて振り返る。

後ろにいたメイプルは、地面から伸びた手の形をした黒い影に足と兵器を掴まれて動けなくなっていた。

「大丈夫!?」

「うー、動けないだけみたい?わっ!?」

「っ!ごめん!」

メイプルがそう言っているところに、いくつもの牙の生えた本が飛んできてメイプルの全身に噛み付いていく。

サリーは飛びのいたものの、拘束されていたメイプルは身体中を噛まれてしまった。

「サリー!外して外して!こ、この装備は壊れるから!」

「待ってね、すぐ外す!」

サリーはメイプルに接近すると、まず本を斬り捨てていく。

相変わらず耐久力はないようで、簡単に全てメイプルから剥がすことができた。

「後は手の方……消えた?あれ……」

「装備は大丈夫そうだけど、後で直してもらわないと」

メイプルはそう言って、壊れても問題ない黒の装備に切り替える。

当然メイプル本人にはダメージはない。

そこでひとまず落ち着いたサリーはメイプルの変化について話し始めた。

「メイプル?【身捧ぐ慈愛】消えてるよ」

「あれ?何でだろう。んー……しかも使えなくなってる。三十分だけみたいだけど」

「封印系かな?メイプルだけ狙った理由は……【身捧ぐ慈愛】かランタンかなあ」

「でも消すわけにはいかないし……あ!でもこれで私がまだ狙われたらランタンとか光るものだって分かるね!」

「光るだけなら私も【剣ノ舞】のエフェクトがあるし、まあ何かあるとは思うけど、メイプルの防御力ならとりあえず安心かな」

メイプルが狙われる分には、一応問題はないのである。

目標であるノーダメージは達成できなくなるものの、【不屈の守護者】により一度は攻撃を耐えられるため、即座にやられるということはない。

「ふふーん!流石の鉄壁ってことで!」

「まー、その通りだね。貫通攻撃は私が見切るよ【ピアースガード】は意識しておいて」

「うん、大丈夫!」

メイプルは自信ありげに盾を構える仕草をする。

「そんなこと言ってたら、早速次が来たみたい。多分……?」

サリーが少し自信なさげに呟く。

サリーが指差す暗闇の奥。そこにはひっそりと立つ人型の影が見えていた。

その影は一つだけの赤い目を本棚に向けたまま全く動かない。

「どうする?サリー」

「近づきたくないけど、一本道だし、んー上の方通っていく?でも一応、どんな敵かだけ確認した方がいいか……」

「上……通れるの?」

「まあ、メイプルが自爆するよりは静かにいけると思うけど。やる?」

モンスターが避けられるならと、メイプルはサリーの提案に乗った。

「ん、じゃあちょっと待ってね」

「うん、分かった」

サリーは下準備というようにメイプルに糸を巻きつけると二つ指輪をつけて【STR】を上げ、氷柱を出現させた。

「じゃあ、いくよ」

「え?」

メイプルは糸でサリーと繋がったままぐんと引っ張られる。サリーは壁と氷柱を経由して天井に張り付いた。

メイプルは糸に巻かれて宙吊りである。

「お、おー……」

メイプルはふらふらと空中で揺れながらサリーに運ばれるままである。

そうして二人はモンスターの遥か上を通り過ぎていき、十分な距離を取ったところで地面に降りた。

「ふぅ、思ったより上手くできたかな」

「す、すっごいね!忍者みたい!」

「まあ、またどこかでは使えるかな。メイプルさえ良ければ」

「たまには楽しいかも!新感覚?って感じで!」

「まあ、現実ではできないだろうけど。にしても本当に動かないね……」

サリーが振り返ってモンスターの方を見ると相変わらず一切動いていなかった。

移動すらしないのだろうかと、サリーは少し観察

してみるものの変化はない。

「近づくか、攻撃するかかなあ?普通に進んだら避けられなさそうなところにいたらやってみようよ」

「そうだね。ボス部屋に取り巻きとしていたら怖いし、まあ一体しかいないならボス戦で警戒することもないと思う」

危険度が分からないため、二人は今回のところはスルーすることにしたのである。

「じゃあ、進もうか、メイ……」

「サリー……また捕まったー!」

進もうとしたメイプルの体を再び黒い手が拘束している。

サリーは今度はメイプルに噛み付く前に、飛んできた本を叩き落としていくが、その途中であることに気づいた。

「メイプル!ちょっと待ってて!」

「ん、んんー?分かったー!」

両手で本を引き剥がそうとしながらメイプルが答える。

サリーは先程スルーしたモンスターの方へ走っていく。

そのモンスターは青い光を放っており、黒く染まった地面からはゆらゆらと手が伸びていた。

「やることが分かれば問題ないっ!【ダブルスラッシュ】!」

サリーが攻撃するとすぐにモンスターはどろりと溶けて床に染み込んでいった。

「あ!外れた!外れたよーサリー!」

メイプルを拘束していた手は同じようにどろっと消えてなくなっていった。

後は、もう慣れたものというように本を剥がすだけである。

それが終わったところでサリーが話し始めた。

「んー、さっきのモンスター多分倒せてないんだよね。逃げたみたい。定期的に出てきそうだなあ。どこかに隠れている可能性もあるし」

「どうにもできない?」

「どうかな?通ってない道もあるし、対策できるものがそこにあったかも」

メイプル達は今回全ての道を通っている訳ではない。見落としがあるかどうかは分からなかった。

「ボス部屋?にもいるかな?」

「もしかしたらね。そうだと大変だけど」

「入ってすぐ全力で倒すとか!」

「それもありだね。どのスキルも封印できるとしても、その前に倒せば終わりだし」

ボスを蹂躙するだけの力があると言ってのける二人だったが、もしこの場に誰かがいたとしてそれを否定するかは微妙なところである。

そうして、二人は改めて歩き出した。