軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化とアイテム。

買い物を済ませた日から少しして、メイプルは最早ジャングルなどそっちのけで、雷降る雲海を歩いていた。

「勝てるかなー……どうなんだろう」

不安を抱くメイプルだが、インベントリにはメイプルが今回のために買い集めたあれこれがぎっしりと詰まっている。

どれか一つでも有効打となれば道は開けてくることだろう。

「無駄になっちゃいそうなのも結構買ってる……?いや、もういい!全部試して駄目だったらもう一回考えよう!」

そんなメイプルの前にあの玉座がまた姿を見せた。

「よーし。やるぞー、やるぞー!」

メイプルが玉座の方へと足を踏み出すと、前回と同じように玉座の上で光が形を成す。

地面には聖なる輝きが広がり始め、光の矢も打ち出され始めた。

「もうそれは相手にしないよ?」

メイプルは今回は撃ち合いをするのではなく、その身で矢を受けながら、真っ直ぐに王の元へと歩いていったのである。

そうして大きな光の王の足先にやってきたメイプルは、矢の雨の中インベントリを開いてアイテムを確認し始めた。

「んー……一つずつ試してみよう」

メイプルはインベントリから一枚の紙を取り出すと光の王の足先にピタッと貼り付ける。

直後、その紙は赤く光って、音を立て燃え上がった。

「あー……効いてない?炎も効かないのかな、じゃあ次はこれ!」

メイプルは同じような紙を再び足先に貼り付ける。

すると、高い音を立ててその部分が凍りついた。

「おっ、ちょっとだけHPが減ってる!よーし……」

メイプルはインベントリを開いたまま足先の前に座ると、一枚一枚紙を取り出してはそれを貼り付けるといった作業に入った。

光の王の足先を執拗に氷漬けにして攻め続け、HPを一割だけ削ることができたのである。

「んー……なくなっちゃった。別のアイテムを試そう」

そうしてメイプルはまた別のアイテムを使い、それがなくなれば別のアイテムを使う、という風にしてボスのHPを削っていく。

途中ボスの攻撃が激しくなったり、追加効果が増えていたりしたもののメイプルはそれらを弾き続けているのだからどうということはなかった。

「あ、魔法攻撃アイテムは全部使い切っちゃったかな……炎と風も効かないから、これはどこかで使う時が来るまで取っておくとして……んー」

メイプルは光の王のHPゲージを確認する。

それは確かに減っているものの、まだ六割は残っていた。

そもそもメイプルの使っているアイテムの与えられるダメージというのがごく小さいため仕方ないのである。

それなりに高いアイテムで、効果もかなりいいものを持ってきて、ようやく少しダメージを与えられる程度だったのだ。

「じゃあ、ここでこれだ!」

メイプルが取り出したのは、赤色でメイプルのてにちょうど収まる程度の大きさの石だった。

メイプルはそれを投げて足先に当てる。

するとそれは弾けて、一ダメージを与えた。

これがメイプルが町を歩いている時に聞こえてきたものである。

安価で購入することができ、一から三のランダムダメージを固定で与えることができる力を持ったアイテム。

メイプルが部分的に聞いた話とは、これを使ってメイプルを倒せないかというものだった。

その話は結局のところ貫通スキルを使った方が何倍も楽という結論に至ったのだが、それはメイプルの知らないことである。

「まだまだ……まだまだたくさんあるよー!」

普通の用途とは違っているものの。

メイプルはそれを取り出しては投げ、取り出しては投げ、そうして確かにHPを減らしていく。

時間がかかることは確かだが、相手にダメージを与える手段がメイプル側にしかない今、勝つ可能性があるのはメイプルだけだった。

インベントリを埋める膨大な赤い石を投げ尽くすまで続くのである。

「とうっ!とーうっ!よしよし、半分!ん?」

メイプルが石を投げ続け、ボスのHPが半分まで減少したところでボスの周りに二人の天使が現れた。

それらはふわふわと浮かび、メイプルに向かって矢を放ってくる。

「効かない効かない!こともない?なにこれ?」

メイプルの体には金色に輝く糸が巻きついており、それは雲の地面と繋がっていた。

メイプルが移動すると金の糸も切れることなく伸びてくる。

「うーん、何が……あ、MPが取られてる。でも、まあいいや、私には関係ないし」

拘束するような見た目通り【AGI】も減少しているのだがゼロはゼロのままなため、これもメイプルに影響はなかった。

「よーし。じゃあもう一回」

そう言って光の王の方に向き直ったメイプルはその変化に気づいた。

頭には光の輪が浮かんでおり、またそれだけでなく、薄い光で形作られた大きな羽が玉座を貫くようにして確かに見えていた。

そして最も悪い変化として、そのHPがじわじわと回復していたのである。

「へっ!?ま、待って!」

メイプルが急いで攻撃を再開するものの、回復量がダメージを上回っており、メイプルが多くのアイテムを使って削ったHPは全回復してしまった。

「ズルいよ、ズルだよそれ!」

メイプルがつま先を短刀でぐりぐりと突くがダメージは与えられない。

「いー……!あー、もう。じゃあ間違って買ったこれでもどうぞ!」

メイプルはそう言ってインベントリを操作して数十個の漬物石をそのつま先に落とした。

確定ダメージを与える赤い石を売っている店は、パネル操作で買い物をするタイプの店だったため、買う際に間違ってしまったのだ。

これはメイプルが売ることもなく、どこかで使えるかもしれないと淡い期待を抱いて、そのまま持っていたものである。

「帰ろう……はぁ……もー」

メイプルは巻きついた糸もそのままに矢を受けながらとぼとぼと帰っていった。

「うう……無駄遣いさせてくれちゃってさあ」

そして、その日はログアウトして普段より少しむっとした表情で、部屋でゴロゴロすることとなったのである。

次の日。

「わっ!すごい雷ですね……」

「うう……びっくりしました」

「私も最初はびっくりしたよー」

そう言ってその背に白い翼を輝かせるメイプルが微笑む。

「えっと……今日は確か」

「うん、すぐ終わるから。本当ごめんね手伝ってもらって……」

メイプルがそう言って申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえ、私達もジャングルの探索はちょっと厳しくて諦めたところで……ね?お姉ちゃん」

「そうだよね、ユイ。ちょうどよかったね」

以前手伝ってもらった時のお返しでもあると、そう言う二人を連れて、メイプルはあの玉座の前に三度やってきた。

「ぜーったい倒すからね」

そう言ってメイプルは王の間近に迫らんと歩き始めたのだった。