軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防御特化と後衛。

迫る前衛に向かってイズが放り投げた爆弾は彼らの頭上で十倍に増えて降り注いだ。

爆炎と衝撃に視界を奪われる中、盾に身を隠すことでやり過ごそうとしたのも仕方ないことだ。

ただ、それら爆弾はカナデが増やした幻でしかなかった。

数は変わっておらず、増えた分のダメージも当然ない。

ならばなぜそんな魔法を使ったのか、それはまず一つが今日限定で使える【 神界書庫(アカシックレコード) 】のスキルだったことである。

出し惜しみをせずともこの後で魔導書にすることが出来るのだから問題ない。

そしてもう一つの理由が時間を稼ぐためである。

彼らの視界が戻った時、カナデはバチバチとスパークする白い球体を体の前に浮かべていた。

「よし……!」

それは圧縮されどんどんと小さくなっていき、危険を察知したプレイヤー達が防御の姿勢を改めて取ったところで眩い光とともに弾けた。

カナデの使ったスキルは【破壊砲】。

それはカナデの真正面を白い光で焼き尽くしていく。

光が収まった時、固まっていたプレイヤー達を二つに裂くように誰もいなくなった一本道が伸びていた。

「イズ、あまり魔導書を使いたくないから……」

「分かったわ、アレね」

それを聞いてイズがポーチから真っ黒い液体の入った瓶を取り出しカナデに手渡した。

イズがカナデに渡したアイテムは【新境地】で作ることが出来るようになった、MPの回復速度を短い時間異常な程に上げるものだ。

カナデはそれを飲み込むと、我に返ったプレイヤー達の目に新たに展開される無数の魔法陣を焼き付ける。

それらは暗に告げている。

死にたくなければさっさと帰れと。

「くっ……止めだ!撤退だ!」

盾を構え防御を緩めないまま後ずさりして出て行こうとするプレイヤー達のうちの何名かを発動させた魔法で打ち抜いて葬ったところで撤退は完了した。

彼らが退くことが出来たのは、カモだと思っていたギルドが実はそうでなかったことが分かった時には全員殺されていたということがなかったためだ。

ユイとマイがいた場合はそうはいかなかっただろう。

メイプルでもそうだ。

「強力な魔導書は限られてるからすぐに退いてくれたのは嬉しいな」

カナデは【 神界書庫(アカシックレコード) 】で引き当てた魔法は全て魔導書に変えて保存してあるが、毎回目当ての魔法を引き当てられる訳ではないため、使い所のないような魔法もある。

勿論【破壊砲】のような魔法もあるがカナデの言うように少数である。

「【集う聖剣】がくる可能性が高いし、大事な魔導書は残しておかないといけないね」

今回はあっさりと退いてくれたが次もそうとは限らない。

ただ、二日目にして死亡回数に余裕のないギルドも増えてきているため慎重になって退いてくれる可能性はかなり高くなっていると言えた。

メイプルはシロップに乗って飛行中だった。カスミ、クロム、メイプルの三人で行動する場合これが最も足並みを揃えやすい移動方法である。

「最近は私を見たら皆すぐに貫通スキルを使ってくるようになって……」

「まあ、そうだろうな」

「私もそうするな」

メイプルの存在が知れ渡り、今はもうメイプルを見れば貫通スキルを使うことが全プレイヤーの常識となってしまった。

メイプルとしては第一回イベントの時と比べてやりにくい環境になっていることは間違いなかった。

「【ピアースガード】だけじゃ囲まれると間に合わないし……何かないかなぁ」

「とりあえず周りに毒を撒けば近づきにくくなると俺は思うけどな、まあこれも耐性持ちが増えてきているが……」

そんなことを話していると目的のギルドに近づいてきた。

「飛び降ります!」

「……ああ」

「……分かった」

クロムとカスミはそれぞれメイプルと手を繋いで地面へと飛び降りるのだ。

メイプルのスキルでダメージは受けないものの身構える高さである。

「メイプルは何とも思わないのか?」

カスミがメイプルに聞く。

「現実では無理だけど……ここなら絶対に痛くないから!」

それを聞いてクロムは思った。

メイプルの変わったスキルを生み出す行動パターンを真似ることは出来ないだろうと。

普通から一歩外れた所にあるスキルを手に入れるのに必要なのは自然にズレている部分を持つことだと。

そう、そんなことを考えながら。

三人は十メートルの高さから地面に向かって飛び降りた。

「オーブは貰うよ!」

地面から生える化物とクロムとカスミが守るメイプルに対して貫通スキルを当てるのは困難だ。

しかし、天使の翼は貫通スキル以外の攻撃を許さない。

「はっ……心配するだけ無駄ってやつだな」

クロムは呟き、攻撃を盾で受け止め斬り返す。

メイプルがシロップの上で言っていた貫通攻撃への対処方法のこと。

そんなことは気にするまでもないことなのだ。

そもそもメイプルがそんなにギリギリになる程に囲まれてしまう光景がクロムには想像出来なかったのである。