軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

425 リザルト (2)

なんで? あれ、ウマいぞ?

二重の意味で。

「この辺りだと、ちょっと難しいかも」

「そうなのか?」

タスク・ボアーを狩るときのネックは、見つけるのが難しいことだが、トーヤはそれなりの精度で探し出していた。

シャリアたちも同じ獣人なのだから、トーヤには劣るにしても、見つけることはできそうなものだが。

「ここって結構大きな町でしょ? 獣人も多いし、近くの森だとすぐに狩られちゃうんだよね、お肉が好きな人は多いから。遭遇できたら、かなり幸運っていうか……」

「お、おぅ……、そういえばそうか」

ラファンの辺りであれば、獣人の能力は大きなアドバンテージになるはずだが、この町の多くは獣人。つまり、索敵の精度が高く、肉好きが多い。

人口も多く、肉の需要も高いとなれば、近場の獲物は狩り尽くされるのが必定――かもしれない。

「それに冒険者が獣狩りをすると、バカにされるにゃ。『魔物も斃せないのか』とか、『狩りがしたいなら、冒険者を辞めて猟師になれ』とか、いわれるにゃ」

「獣を持ち込んでも、冒険者ランクは上がらないからねぇ」

「大半はやっかみですけど~。低ランクの冒険者からすると、猪一匹分の収入は大きいですから~」

「競争相手が多いってことか。なら、拠点を変えるってのはどうだ? この町にこだわりがなければ、だが」

ヴァルム・グレには戦闘の基礎を教えてくれる道場や、ギルドに併設された自由に使える訓練場があり、それはルーキーにとってかなりありがたい存在だが、便利な町だけにルーキー向けの依頼という面では競争率が高いだろう。

俺が確認した範囲でも、ギルドの掲示板に残っている依頼はかなり割安な物ばかりで、シャリアが今回の依頼に手を出したのも納得できるような感じだったし。

「拠点の変更、かぁ。考えなかったわけじゃないけど……ほら、ボクたちって、全員獣人でしょ?」

「そうだな?」

「町によっては、獣人は差別されるって聞くにゃ。町を移動するにはお金も掛かるし、なかなか踏ん切りが付かないにゃ」

「少なくともこの町なら、その点は心配がないですから~」

「そういう問題があるのか……」

公には禁止されているが、偏見というのはなかなかに難しい。

ネーナス子爵領を出てこの町に来るまでに俺たちが通った集落でも、なんとなくそんな視線や空気を感じることはあった。

俺たちの場合はメンバーに人族がいるし、通り過ぎるだけだったのであまり気にならなかったが、そこで暮らすとなると問題は出てきたと思われる。

アエラさんも店を開く場所を決めるまで、いろんな町を巡ったと言っていたし、事前情報もなしに拠点を変えるのはなかなかにハードルが高いのだろう。

「なら、俺たちが拠点にしている町に来るか? ここに比べると田舎だが、獣狩りを厭わないのなら、猪の取り合いになるようなことはないし、生活に困らない程度は十分に稼げる。町の雰囲気も、獣人が暮らしにくいってことは――」

「ないの! 良い町なの!」

「ってことだ。難点はギルドにある依頼が微妙ってことだが、装備を調え、ある程度の腕が上がるまでと考えれば、悪くない町だと思うぞ?」

何だったら、避暑のダンジョンに案内してやっても良い。

少なくともトーヤは大賛成してくれることだろう。

全員が獣人の女の子だからして。

ハルカたちも積極的には賛成しなくても、反対まではしないんじゃないだろうか?

そんな俺の提案に、シャリアたちは顔を見合わせて考え込んだ。

「えっと、ボクたちって今、実家暮らしだからなんとかなっている部分はあるよね?」

「でも、そろそろ家を出ないと、家族の視線が痛いにゃ」

「私は先日、兄の結婚が決まったので、待ったなしです~」

「わぉ。それはおめでとう?」

「あんまりめでたくないですよ~。お嫁さんもしばらくはいて良いよ、とは言ってくれてますけど~」

「それ、本当にいたら、『なんでいるの?』と白い目を向けられるやつにゃ」

「小姑なんて、邪魔なだけだもんね。『しばらく』ってあたり、本音が出てるよね」

家を継げない実家暮らしの世知辛さを見た。

成人してすぐに追い出されていないだけ、シャリアたちはマシなのだろうが、大なり小なり、冒険者になる奴らはこんな感じなのだろう。

その後もしばらく、自分たちの収入やこの町の宿代、食費などを計算して唸っていたシャリアたちだったが、出した結論としては――。

「えっと、すぐには答えは出せないから、待ってもらっても良いかな?」

という、先延ばしであった。

「構わないぞ。俺たちもしばらくはこの町にいる。疑問があれば俺に訊くなり、メアリに相談するなり、すると良い」

「はい、なんでも相談してください。きっとナオさんよりも私の方が適当だと思いますから。ナオさんは、あまり一般的とは言えませんし」

「そうか?」

「そうです。パーティーメンバーの半分以上が魔法使いだったり、既に大きな家を持っていたり、そこにわざわざお風呂を作ってみたり。――しかも、冒険者になって二年足らずで。他にも色々ありますよね?」

含みのあるメアリの言葉に、俺はふむと頷く。

なるほど、ダンジョンを私有していたり、マジックバッグを持っていたりか。

確かに俺の常識は、ちょっとズレているかもしれないな。

「うにゃー、それはまったく参考にならないにゃ。メアリ、よろしくにゃ」

「はい、いつでも」

「ミーも! ミーだって教えられるの。冒険者の先輩として!」

先輩呼びが羨ましかったのか、ミーティアがピッと手を上げて自己主張。

それを見たシャリアたちは、微笑みながら頷いた。

「ははは、うん、ミーティアにも相談するね」

「ミーティア先輩、よろしくにゃ!」

「むふんっ! 任せると良いの! 越してきたら、面倒を見てあげるの!!」

ミーティアとシャリアたち、ランクは違えど、キャリア的には微妙な差異だと思うけどな。

「ま、色々と考えてみると良いんじゃないか? 俺は良い町だと思っているが、欠点がないわけじゃないしな」

具体的には飯の不味さ。

微睡みの熊のように美味いところもあるが、屋台は安い代わりに大抵不味い。

自炊をするなら関係ないが、屋台で食事を済ますつもりなら、結構キツいだろう。

「そうだね、考えてみるよ、色々と」

シャリアはそう応えて、しばらくの間、下を向いて静かに食事を進めていたが、やがて顔を上げ、俺の顔を見て少し迷った末に再度口を開いた。

「……ねぇ、ナオ。考えてみるで思い出したんだけど、今回のお仕事、結論としては『ロック・ワームが掘った穴からゴブリンが侵入した』で良いんだよね?」

「ほぅ。なるほど、そっちも考えてみたのか」

俺が少し感心して声を漏らせば、タニアが隣でウンウンと頷く。

「シャリアはちょっと迂闊だけど、考える頭はあるのにゃ」

「迂闊は酷いな!? 否定はできないけどさぁ……」

「これでも一応、私たちのリーダーですから~」

「一応……うぅ、頑張ってるのに~」

「事前に頭を使えるようになれば、もっと頼れるにゃ」

アーニャたち二人の赤裸々な言葉を聞き、シャリアが項垂れてテーブルに顎を乗せる。

そんな彼女の肩を、わざわざ椅子から降りて歩いたミーティアがポンポンと叩く。

「シャリア、めげちゃダメなの! 依頼の後で反省するのは良いことなの。先輩冒険者であるミーは知ってるの!」

「ははは……ナオさんたちも、食事のときとか、よく話してますもんね」

ミーティアが先輩風をビュウビュウ吹かせ、メアリが苦笑するのを見つつ、俺は口を開く。

「さて、どうだろうな?」

「違うの?」

「シャリアも疑問に思ったから、尋ねたんだろう?」

「そうなんだけど……」

困ったように、シャリアは眉尻を下げる。

何か引っ掛かるところはあっても、具体的には列挙しづらいってところか。

「正解は俺にも解らないし、調べるつもりもないが、いくつか不可解な点があるだろ?」

問い返すように俺がシャリアの顔を見返すと、彼女は目を瞬かせた。