軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39話 呪い

「…………サイラス先輩、そろそろ我慢の限界です。あの勘違い男の口を永遠に塞いでもいいですか?」

「気持ちは分からんでもないが、今あいつの口を塞がれると、俺が一人で魔物退治をすることになるから勘弁してくれ」

駄目か。いえ、しませんよ? 一々馬鹿にされて腹立ちますけど、仕事はしていますし、割り切らないと! 腹立ちますけどね!

「くそ! 行き止まりか!」

前方にそびえ立つ大きな壁に苛立つクリフ様。

「アレン殿下、こちらは通れないので迂回しましょう」

相変わらず、アレンには礼儀正しいクリフ様。まぁ、魔法使い隊長で第三皇子のアレンにあんなふざけた口利いてたら、神経を疑うけど。

何は兎も角、クリフ様が勝手に誘導しようとしてるのを止めないと。

「クリフ様、止まって下さい、そちらは危険です」

「何だと?」

私の発言に、アレンもサイラス先輩も足を止めたけど、クリフ様だけは進む足を止めなかった。

「馬鹿なことを言うな、何が危険だ。進む道はここしかないんだぞ」

「罠です」

「罠などない」

全く私の言うことを信じない! 私だって別に言いたくないけど、仕事だから言ってるのに!

「クリフ様」

「しつこい! 君ごときに何が分かるというんだ!? 僕が身を以て安全を証明してやる!」

めんどくさいなぁ……! 勝手に先に進むし、どうなっても知りませんよ?

「わ、わぁぁぁぁああああ!」

案の定、魔女の罠に嵌ったクリフ様からは、大きな悲鳴が聞こえた。

透明な球体に捕らえられ、地面に頭を向け宙に浮いているクリフ様の姿は、見事に魔女の罠に嵌った人間で、少し前の『僕が身を以て安全を証明してやる』の台詞が滑稽過ぎて呆れてしまう。

「大丈夫ですか?」

「な、何だこれは!?」

ダンジョンの罠と言えば定番の落とし穴とかが頭に思い浮かぶけど、おばあさんが用意した罠は一味違うみたい。

「さぁ? 何でしょう」

「ふざけるな! さっさとここから出せ!」

ふざけるなはこっちの台詞よ。自分から進んで罠にかかりにいったクセに、どんな口の利き方してるの?

「ふざけていません、本当に分からないんです」

見たことも感じたこともない魔力の種類。

『何だと!? こんな時にも役に立たないとは、本当に魔法使いは使えないな!』

あら、ここにはアレンもいるのに魔法使い全体を馬鹿にするなんて珍しい。

クリフ様はアレンに喧嘩を売る気はないはずなのに、と、驚いていると、クリフ様自身も自分の発言に驚いたように、口を塞いだ。

「なっ、僕はこんな事を言うつもりは……!」

「……クリフ様は、騎士ばかりを前線に立たせる魔法使いがお嫌いなんですよね?」

『嫌いに決まってるだろ! しかも、どうしてリネットなんかを守らないといけない!? どうせ今回の特殊任務に選ばれたのも、アレン殿下の婚約者だからと優遇されただけのくせに!』

ああ、そんな風に思ってたのね。

「ち、違います! そんなこと思って――『います! 事実だ!』

否定しようとしたクリフ様の思いとは裏腹に、事実と認める発言。これはやっぱり、魔女の呪いね。

「どうやらクリフ様は、嘘がつけない呪いにかかってしまったみたいですね」

「呪いだと!?」

おばあさんは色々なガラクタを集めるのが趣味と言っていましたし、本当に種類豊富な魔道具をお持ちみたいですね。

「早く呪いを解け!」

「む、無理です、この呪いは私には解けません」

パッと見ただけだけど、難し過ぎる! こんなの……無理! こんな難解な呪いの魔道具を扱えるって、おばあさんはどれだけ凄い魔女なの……!?

「じゃあ、俺はここから一生出られないのか!?」

「ああ、いえ、そこから出すくらいなら、出来ると思います」

手をかざし開錠の魔法を唱えると、捕らわれていた球体から解放されたクリフ様の体は、頭から地面に落下した。

「もう少し丁寧に出せ!」

助けてあげただけで感謝しろ。

「勝手な行動をとったクリフの責任でしょう。リネットを責めるのは止めて下さい」

「……っ」

アレンに対して、何の返事もしないクリフ様。

何を口走るかが怖くて、話せないのね。でも、黙っていれば嘘をつくこともないから、呪いは発動しないのか。

「てか、どうするんだ? この道が通れないとなると、先に進めないぜ」

サイラス先輩の疑問は当然。

「問題ありません、こちらの壁は、幻ですから」

行き止まりとなった大きな壁。ゴツゴツとした岩の感触はまるで本物みたいだけど、違う。その証拠に開錠魔法を唱えると、跡形もなく姿は消え、新たな道が現れた。

「な、何だ!? あの壁が幻だと!?」

「クリフ様、魔女を相手にしてる自覚あります? 魔女は魔道具の使い手ですよ。ダンジョンの殆どは魔女の産物だとも言われてるのに」

今のラングシャル帝国のダンジョンは学生の訓練にも使われる場所になっているが、昔は違う。

魔女の数が減り、全てのダンジョンが攻略されて過去の産物となってしまったが、本来のダンジョンは、魔女が魔道具を駆使し作った、難攻不落の迷宮だ――

「以前、トルターン学校の校外学習で来た時は奥に到着するのにこれだけ時間はかかりませんでしたし、空間が歪んでいるのは確実でしょう。私達は今魔女のテリトリーにいるんですから、油断は禁物です」

「ダンジョンを作るだと!? こんな大きな迷宮を!? あんなヨボヨボの老婆が!?」

「魔女の実力にもよりますが、おばあさんの魔女としての実力は、それ程凄いものなんです」