軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35話 ルルラシカ公爵

「今からルルラシカ公爵に詳しく話を聞きに行きますが、ルルラシカ公爵は娘のこととなると見境がなく暴走する方なので、注意して下さい」

見境がなく暴走?

「分かりました」

あまりよく意味は汲み取れなかったけど、とりあえず注意はしておこうと思い曖昧に頷いたが、ルルラシカ公爵様が待つ帝国騎士団本部の応接室に着いた瞬間、意味を理解した。

「お願いだ! 早く娘を! セリエを見つけ出してくれ! 金なら幾らでも払う! 宝石でも土地でも何でも、望む物をやる! だから早くワシの前に連れて来てくれ! お願いだアレンーー!」

応接室に入るなり、アレンの体に激しくすがりつくように体を密着させるルルラシカ公爵。

「落ち着いて下さい、ルルラシカ公爵」

「頼むアレン! ワシには娘しかいないんだ! 娘を見付けてくれたら、お前とセリエとの結婚を許してやってもいい!」

「結構です! 最初から望んでもいませんし、俺にはもう最愛の婚約者がいるので、誤解を招くような発言はお止め下さい!」

誤解を招く前にそうやってハッキリ断言してくれるから、私が不安になることはないけど……ルルラシカ公爵様、物凄く錯乱していますね。溺愛する一人娘がいなくなって、不安定なんでしょうけど……

アレンの体に抱き着いたままのルルラシカ公爵は、暫くの間、私達の声が届かないように、泣き叫んでいた。

「――すまないアレン、ワシはどうやら娘のことになると我を忘れてしまうようで……」

少し落ち着きを取り戻したルルラシカ公爵様は、やっとアレンの体を離し、椅子に座った。

私はルルラシカ公爵様の斜め前の椅子に座ったが、初めてお会いしたルルラシカ公爵様は血の気の引いた青白い顔色をしていて、本気で娘のことを心配しているのが伝わった。

「大丈夫です、重々承知していますから。それで? セリエがいなくなった時のことを話して下さい」

「ああ、ああ……あれは、何の変哲もない穏やかなワシとセリエの日々の一日のことだった。仕事を終え、セリエと夕食を取ろうと部屋に迎えに行くと、そこにはっ! そこにはっ! うゔっ!」

「ルルラシカ公爵、いちいち泣かずに最後まで話して下さい。一向に話が進みません」

アレン、気持ちは分かりますが、ルルラシカ公爵も令嬢がいなくなって辛いんですから、もう少しだけ優しく聞いてあげて下さい!

「わ、分かった――ワシが愛しい娘と夕食を共にしようと部屋に迎えに行くと、セリエの姿はもう跡形もなくなっていて、すぐに辺りを捜索させたんだが、どこにも姿がなかったんだ!」

「セリエの様子は、普段と変わりなかったんですか?」

「ああ、いつも通りの愛らしい娘だった! 朝は『お父様、大好き』と、抱きついてお見送りをしてくれたんだ! あの時の可愛さと言えば――」

「それ以上は結構です。もし誘拐だと仮定した場合、何か心当たりはありますか?」

「あんな目に入れても痛くない可愛い娘なんだから、誰からも狙われるに決まっているだろう! だからワシは、三百六十五日毎日、護衛を付けていたんだ! なのに、こんな事になるとは……!」

「特定の心当たりはないんですね」

「きっと、誰かが無理矢理セリエを連れ去ったに違いないんだ! 頼む! 愛しい娘を取り戻してくれ!」

「お話は分かりました。ルルラシカ公爵は誘拐の可能性を考えて、自宅で大人しくしていて下さい。誘拐犯から連絡があれば、報告を。捜索はこちらで請け負いま――」

「ああ、可愛い可愛いセリエ! 無事でいてくれ! お前が無事でいてくれるなら、ワシは! ワシは全てを投げ出してもいい! セリエーーーー!」

ルルラシカ公爵様を何とか宥め、応接室を出た私達は、一足先に捜索当たっていた騎士からの目撃情報があった場所へ、足を進めた。

「大丈夫ですか? アレン」

掴み引っ張られて乱れていていた魔法使いの制服を整えるアレン。激しく揺さぶられていましたもんね。

「叔父で無ければ不敬罪を適用して牢にぶち込みたいところですが、そうはいきませんからね」

うん、止めましょうか。激しかったな、とは思いますが、全ては大切な娘がいなくなったからくる錯乱なので、目を瞑りましょう。

「リネット、アレン殿下!」

「サイラス先輩……と、クリフ様」

目的地にはサイラス先輩とクリフ様の姿があって、クリフ様は明らかに不機嫌な様子で、私を睨み付けた。相変わらずですね、未だに私を、妹を虐めた意地悪姉だと信じて疑わない。別に構わないけど、学習能力がありませんね。

今のクリフ様は、好き嫌いで組む魔法使いを選べる立場ではない。

魔法使いを堂々と冒涜したクリフ様は、全ての魔法使いからパーティーを組むのを拒否されている。これを解消しない限り、普通の任務に戻れることはないのに。

「クリフ、問題を起こすことは許しませんよ」

「……はっ!」

今回、アレンがクリフ様と同行するのは、お目付け役の意味も含まれているのだろう。

「ここで数時間前、セリエ嬢の姿が目撃されたようです」

「雑貨店ですか」

サイラス先輩が指したのは、ルルラシカ公爵邸から少し離れた街にある、路地裏の小さな小さな古びた雑貨店だった。扉を開けて中に入ると、店内は薄暗く、至る所に怪しい置物やお香、壺や人形、可愛いコップやアンティークの椅子など、様々な物がごちゃ混ぜに置かれていた。