軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第019話 お持ち帰り

「あれ……?」

フィリアは目をこすりながら上体を起こし、俺を見てくる。

その間、蛇が再び、フィリアの身体に巻き付いていた。

「おはよう」

「うん……もう! 起こしてよー!」

フィリアはかわいい顔で文句を言ってくるが、寝ぐせが立っていた。

立ち上がると、フィリアの隣に座り、髪を押さえ、寝ぐせを直す。

「あ、ありがと……いつからいたの?」

「ついさっき」

本当は2時間前。

「嘘だー……」

フィリアは信じていないようだ。

まあ、そうだろうね。

「男の部屋で寝るなって教わらなかった?」

「時と場合によるって教わった」

そうですか……

まあ、下に見張りがいるしね。

「それで? 用事があるんじゃないの?」

「あ、そうそう。砂糖の件なんだけどね。思ったより早めに捌けそうだよ」

「そうなん?」

「知り合いの商人に少しずつ売っていってるんだけどね。商人の横の繋がりが思ったより、強かった。教会に他の商人が来たよー」

商人ギルドがあるくらいだしなー。

それに商人は商機を逃さないように常に目を光らせているのかもしれない。

「早いに越したことはないし、良かったわ」

「それでなんだけど、トラブルを防ぐために商人ギルドのギルマスに割り振りをお願いしようと思うんだけど、いいかな?」

「その辺は任せる。教会にまで来るくらいだしな。大丈夫だとは思うが、身の安全もある」

占いによるとフィリアには当分の間、危険はないと出ている。

とはいえ、占いは絶対ではないし、たかが砂糖のために変な恨みを買うべきではない。

「じゃあ、そうするよー」

「ギルマスって、オリバーか?」

「そうそう。知ってるの?」

やっぱりあれがギルマスか……

代表って言ってたからよくわからんかったが、やはり商人のボスらしい。

まあ、よく考えたら領主様を連れてたから大物であることに間違いないか。

「午前中に会ってきた。占いに許可がいるか確認してきたんだよ」

「あー、ゲルドさんに言ってたやつね。大丈夫だって?」

「うん。特に問題はないそうだ。ただ、今後、物を売る場合は許可が必要そうだな」

オリバーは信用できる人物だと思うが、所詮は商人だ。

利益を重視する人間であり、命を預けていい人間ではない。

適度な距離感が大事だろう。

「許可かー……その辺をどうするかだねー。何を売るか決まった?」

「まだだな。色々と調査をしているが、わからん。俺は人を騙して売りつけることは得意なんだがなー」

「やっぱ詐欺師じゃん」

もう詐欺師でいいよ。

霊媒師や占い師なんて半分、詐欺師みたいなものだ。

「今後も砂糖を売っていく場合は必ず出所を聞かれる。その他もだろう」

「出所って?」

「聞きたいか?」

「その辺がわからないと相談にも乗れないねー」

まあ、そうだろうなー。

フィリアは金にがめついが、信用できる人間なのは確かだ。

それこそ命を預けていいレベルかもしれない。

今後の事を考えれば、言ってもいいかもしれないな…………

「俺は異世界の住人であることは知ってるな?」

「そりゃね。リヒトさん本人から聞いたし」

言ったね。

「俺はそこに普通に帰れる」

「……マジです?」

「マジです」

「えっと……どうやって? 魔法かなんか?」

これ、魔法か?

よくわからんな。

「その前に聞きたい。これまで来た異世界人ってどんなだ?」

「どんなって?」

「ギフトをもらえることは聞いた。どういう風に生きてきた?」

「強力なギフトを使って、ひとかどの人物になってるよ。英雄になったり、商売で儲けたりねー」

だから領主様が俺に目をつけてるわけだ。

「そいつらの最後は?」

「うーん……どうだろ? 普通に豪勢に生きて死んだんじゃない? まあ、語られないだけであっけなく死んだ人もいるだろうけど、わかんないなー」

こっちで死んだケースが多いんだろうな。

ということは自由に元の世界に帰れるのは俺だけの可能性が高い。

「俺以外の異世界人はどれくらいいる?」

「それこそわかんない。少なくとも、私は初めて会った。ただ、この国の噂は聞いたことがあるよ。この国では何人かはいるみたい」

珍しいことは珍しいが、そこそこはいそうだな。

「そいつらの元の世界の話は聞いたことがないか?」

「ごめん。聞いたことない」

同じ世界なのか確認したかったが、無理っぽいな。

余裕ができたら会いにいってもいいかもしれない。

「わかった。どうやって帰っているかだったな? お前、危ない橋を渡る覚悟はあるか? 具体的には俺に呪われる覚悟だ」

「……しゃべったら殺すってこと?」

「殺さないよ……ただ、二度とトイレに行けない呪いをかけてやる」

「いや、いっそ殺してよ。最悪じゃん」

フィリアの身体に巻き付いている蛇がめっちゃ睨んでるし……

冗談だよー。

蛇を落ち着かせるために蛇を撫でる。

「……なんで肩を撫でるの?」

「気にしない気にしない」

「……リヒトさん、たまに私の身体を変な目で見るよね? 何を見てるの?」

「その言い方だと、いかがわしく聞こえるねー」

「……じゃあ、何が見えているの?」

おやおや、これ以上はバレそうだなー。

この蛇をどうこうするのはまだ先だ。

「気にしない、気にしない。それよか、どうする?」

「しゃべらないよ。女神様に誓いましょう」

教会の修道女にとって、この言葉は重いのかもしれない。

「ではでは、これを見てー」

ポケットからスマホを取り出し、アプリを起動する。

「何これ?」

「この画面をよーく見るんだよー。怖くないよー」

「めっちゃ怪しいよ……」

フィリアの腕を掴み、アプリのぐるぐる画面をフィリアに見せながら自分もスマホ画面を見た。

直後、目の前が光に包まれ、何も見えなくなる。

さーて、どうなるかなー?

フィリアをお持ち帰りできるかなー?