作品タイトル不明
第011話 フシャー! ★
「猫ねー。猫は好きだけど、めんどくせーな……」
「やっぱお前、猫が好きなのか……」
当たり前だろ。
犬より猫に決まっている。
犬は何故か、俺に向かって吠えてくるから嫌い。
なお、母さんにも。
「好きだよー……でも、猫は俺が嫌いなんだよねー」
多分、色々と怪しい俺は猫からすげー警戒されているのだろう。
「そんな気はするなー。お前の占いで探せないか?」
「探せるけどねー。実際、そういう仕事もやったことあるし」
家出したペットを探してくれという依頼は結構あるのだ。
「じゃあ、探してこい。報酬は銀貨1枚だ」
やっす。
1000円かよ。
「相場がわからんが、さすがに安くないか?」
「安いな。依頼主が8歳の子供なんだ」
親が出してやれや!
「うーん、女の子かー。じゃあ、やるかなー……」
可愛がってた猫っぽいな。
「そこまでわかるのか……すごいな。というか、男の子ならやんねーのかよ」
「自分で探せって言うか、稼いでこいって言うなー」
男なら自分でやれ。
「お前、結構、ひどいんだな」
知ってる。
「じゃあ、この依頼をやれば、冒険者にしてくれるんだな?」
「してやる」
ふむ。
では、やるか。
「えーっと、あっちか……」
左を見る。
もっとも、そこにあるのは壁だ。
「ついでに町を探索するといい。正直に言うが、この依頼はそういうのも兼ねている」
この町を知ってこいってことか。
俺のためでもあるわけね。
「わかったー。じゃあ、行ってくる」
「おう!」
ギルドを出て、町の探索を兼ねた猫探しを開始した。
ミケやーい!
どこだー?
◆◇◆
「ギルマス、どう思いました?」
胡散臭い詐欺師がギルドを出ると、すぐに受付に座っていた女性が立ち上がり、俺のところにやってきた。
「まあ、本物でしょう。アンナやミケ、フィリアの報告通りです」
その女性に敬語で話す。
「ですか……私のことも勘付いたでしょうか?」
「どうでしょう? 絶対にあなたのところに行くと思ったのですが……」
「ふふ。ものすごく嫌そうに貴方のところに行きましたね?」
この人は多分、美人と評されて機嫌が良いのだろう。
「ですね。実際、私はあいつがあなたのところに行けば、奥に連行するつもりでした」
「そこまでしなくても……」
「いえ、そういうわけにもいきません。領主様に何かあってはいけませんので」
正直に言えば、この人がそこに座ること自体を反対した。
だが、強く言われたら自分の立場ではどうしようもない。
「あまり手荒なことはしてほしくありませんけどね。貴重な異世界人ですよ?」
「まあ、それはそうなんですが……」
あれが貴重か?
いや、能力は高そうだったが、ひ弱そうだったし、何よりもあんな胡散臭い笑顔を見たのは初めてだ。
いかにも胡散臭いですよーって主張している笑顔だった。
「ギルマス、実際、あの御方をどう見ます? 我らの味方になると思いますか?」
我らねー……
俺、あんまり関係ないんだけどなー。
冒険者は自由に生きるもんだ。
「策を講じたり、強引にいくのはやめた方がいいでしょう。あの力ならば、すぐに看破されます」
無理やり捕えようとしても、下手すると、計画する前に逃げそうだ。
未来予知をしてくる相手にはどうしようもない。
「でしょうね。上手くここに留まってもらう方が得策ですね」
「どうすればいいのかわかりませんけどね」
「一番良いのはこの町で所帯を持ってもらうことですが……持ちそうにないですね」
うーん、あいつ、軽そうだが、人を信用しそうにないもんなー。
絶対に結婚しそうにない奴に見える。
「こればっかりはわかりません。奴もまだ若いですし……」
あ、でも、25歳だったか。
「ミケでも差し出しますか?」
「発言に気を付けてくださいよ」
ミケは獣人だ。
今の発言は下手すると、差別的に大問題になる。
「冗談です。まあ、今のところはどうしようもないですね。下手に動いても看破されるでしょうし……この町に留まってくれることを祈りましょう」
あんたがデートしてやればいいと思う。
あいつもそう言ってたし。
「気にはかけておきますよ」
「よろしくお願いします。占いか……今度、占ってもらおうかしら?」
女は占いが好きだよなー……
あのアンナですら占ってもらったって言ってたし。
◆◇◆
冒険者ギルドを出た俺はあちこちを見ながら猫を探している。
この町は北が商業区、西が冒険者ギルドや宿屋、飲食店となっている。
そして、南と東が住居区っぽい。
今は猫がいる商業区にいるのだが、店を見たりして、売れそうなものを確認している。
だが、はっきり言って、よくわからない。
よく考えたら俺はあくまでも霊媒師であり、詐欺師的なことは得意だが、商才はないのだ。
うーん……これは誰かに相談した方が良さそうだな。
まあ、商人のゲルドしかいないんだけど。
当面の目標は金貨30枚を貯めて、フィリアの爺さんにスキルを鑑定してもらうことになる。
うーん……どこに行っても金かー……
世知辛いね。
店を調査することをやめると、依頼の猫探しに集中することにした。
そして、30分くらいが経つと、お目当ての猫を見つけたのだが……
「フシャー!!」
相変わらず、猫にはめっちゃ嫌われている俺がいた。
「猫ちゃん、ご主人様のところに帰ろ? 待ってるよー?」
優しく声をかけながらそーっと近づく。
「シャー!!」
猫ちゃんが牙を向けてきた。
「ハァ……ダメだ、こりゃ」
思わず、ため息が出る。
「リヒトさん……?」
項垂れていると、名前を呼ぶ声が聞こえたので後ろを振り向く。
すると、そこには蛇を身体に巻きつけた金髪の女が俺を見ていた。
もちろん、フィリアである。