軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7. ダンジョン探索 2

ダンジョンの入り口は、現在閉鎖されている。周囲を警戒している軍人と民間の探索者がまばらにいるくらいだった。

4人はサクサクとダンジョンに入った。何の気負いもない二人と、緊張感あふれる二人。前者が薫と秋人であることは言うまでもない。

薫は収納魔法から杖とローブを取り出した。

ローブは「無法者狩り」の時に着ていたものではなく、ごく普通のブルゾンのような形状をしているものである。しかし、機能的には同じで、動きやすさは雲泥の差だった。

秋人も同じようなブルゾンにカーゴパンツ、足元は編み上げのブーツ。どちらもごく一般的な装備だった。

軍人二人は、アニメやゲームのような装備をしてくるのかと思っていたので、少し驚いた。民間の 探索者(シーカー) はそういうコスプレのような恰好が多いからだ。ましてや、日本はアニメと漫画の国である。日本では世界的に見てもその傾向が強いのだ。

「もしかして、普通の恰好だなあとか思ってます?」

ニヤニヤ笑いながら薫が尋ねる。二人は視線を反らした。

「最新鋭のアイテムですよ。動きやすさ、機能性、魔力の保持…どれもこれも最高レベル。お値段もお高い」

にこりと薫は笑った。

「メイド・イン・ジャパンです」

ちなみに、薫はこのブルゾンとカーゴパンツの開発に出資しており、それなりに稼いでいる。

自分が出資しているので、パンフレットのモデルもやっている。密かにパンフレットがプレミアになっていて転売されているのだが、本人は知らない。

「薫、始めるよ」

「OK」

秋人がダンジョンのごく入り口で一つ息を吸う。

【 迷宮探索(マッピング) 】

秋人の詠唱と共に、彼の目の前に多重構造の3Dモデルが空中に展開し始めた。

それは壁などは透き通っていて3Dレンダリングのような映像だった。

「まさか…」

パトリックが呟く。

「ダンジョンの地図…なのか?」

「なんだって!?」

エヴァンスが絶句する。

入る前のダンジョンの地図、それもかなり精緻なものが目の前に構築されていく。5分ほどで地図は動きを止めた。

「ふーむ。48階層かな」

「うん。ここが迷宮核のある場所だね」

二人はフムフムと地図を見て検討を始めた。

だが軍人二人は思わぬことで言葉もない。こんなチートな魔法がこの世に存在しているなんて知らなかった。

「その魔法は民間の 探索者(シーカー) なら誰でも知ってるのか?」

エヴァンスは恐る恐る尋ねた。

だとしたら、自分たちはどれほど無駄な労力を使っていたのか…と目の前が真っ暗になりそうだった。

工兵隊としてダンジョンの地図を作る役目を多く果たしてきたパトリックに至っては、茫然自失である。

「まさか!こんな魔法みんな知ってたらもっと有名になってるでしょう」

薫の言葉に二人はほっと安心した。

「これは秋人のオリジナルです。秋人のレベル以下のダンジョンなら、迷宮核のあるところまで書き出せます。それ以上だと、地図の構築は秋人のレベルの階層まで。今回は迷宮核まで書き出せたので、秋人のレベルよりは低いダンジョンですね」

薫の説明に、軍人二人はあいまいに頷いた。もはや、意味が分からない。

「その魔法、教えてもらうわけには…」

「教えてもいいけど…」

秋人は首を傾げた。

「かなり魔力を食うので、高位の魔法師じゃないと無理かなあと」

「デスよねー」

二人は肩を落とす。

そう簡単にこの魔法が習得できるなら、とっくに日本で話題になっているだろう。

「しかし、綺麗ですね」

工兵として道を作ったり、マッピングしたり、鹵獲したアイテムを修理する専門家のパトリックは、目の前の美しい地図に見とれた。ガラスでできたオブジェのようである。

「これはもう消してしまうんですか?」

パトリックの問いかけに秋人は首を振る。

「この辺にフロアごとに展開させて進むよ」

くるくると秋人は己の頭の斜め上らへんを指で示して言う。百聞は一見にしかずということで、少し進むと地図は形を変え、1階のフロア図となり秋人の頭上に移動した。

「モンスターの攻撃とか当たっても大丈夫だから、これ守るために防御とかしなくていいからね」

秋人の言葉に軍人二人は慌てて頷いた。この子、心が読めるのでは…と怖くなる。

「いや、君たち顔に書いてあるから。秋人じゃなくても分かるよ、それ」

と薫の言葉に二人は撃沈した。

薫は準備運動としてラジオ体操第一を今の今までしていた。

そこから屈伸などを少ししてからうーんと伸びをする。

「さて、と。行きますか」

秋人は軍人二人に向き直った。

「えーっと、ここからは7階層の休憩所まで走りますので、全速力で追いついてください。モンスターは気にしなくていいです」

秋人の言葉にエヴァンスは首を傾げる。

「いや、1階層からでもモンスターは出るぜ」

ごく当たり前のことだ。ここはダンジョンの中なのだから。

秋人が説明しようと口を開くが、少しためらったあと、ちらっと薫の顔を見る。秋人の顔に「助けて」と書いてあって、薫は苦笑した。

「秋人が全部倒します。お二人は身体強化を使って全速力で走ってください」

「は?」

パトリックが思わず聞き返す。

「いいから、そうじゃないと君たち連れて終わらないでしょ。探索」

薫の言葉に軍人二人は声を無くした。

「それでは、出発」

薫の言葉にドンっと衝撃音がして、傍らにいた秋人の姿が消えた。

「はやく!」

気が付くと薫もいない。はるか先から薫の声がする。

「走って!!」

軍人二人は慌てて身体強化を唱えて、走り出した。

しかし、早い。けた違いに早いのだ。秋人はともかく薫までこんなにも早いとは思っていなかった。

二人にとってダンジョンの探索とは、もっと慎重に歩き、壁や天井からモンスターが出ないか警戒しつつ、ゆっくりゆっくり進むものだ。間違っても全速力で駆けるものではない。

しかし、日本からきたSランクの 探索者(シーカー) は違った。

全速力で走る。前方を行く秋人が全てのモンスターを切り伏せていく。走る傍らにモンスターの残骸が無造作に転がっている。

「魔石とか取らないんですか?」

パトリックが叫ぶと、遠くから薫の声がした。

「今回は閉鎖が目的なので、よほどのもの以外は放棄です」

「ひいいいい」

よほどのものがどのレベルかエヴァンスはには分からないが、足元に転がっているモンスターの角や魔石だけでも5千ドルは軽く稼げる。

「秋人の入学式に間に合わなかったら恨みますよ」

薫の言葉に軍人二人は慌てて足を速めた。この男は絶対に怒らせてはいけない。それは先ほどの訓練場の惨劇からもよくわかっていた。