軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6. ダンジョン探索 1

薫はすっかり冷え込んでしまった雰囲気に、肩を竦めてジョージに尋ねた。

「本日の探索はどうしますか?」

「予定通りに」

ジョージが応える。薫は「大丈夫か?」と目で促したが、ジョージは首を振った。

「秋人は4月から高校生だろう?いきなり欠席させるわけにはいかないからな」

ジョージの言葉にニコリと薫は笑った。

その顔は「分かってるじゃないか」という顔なことはジョージは理解している。おそらく、ここで延期などと言おうものなら、契約違反としてさっさと帰国してしまうつもりだったのだろう。

「それで、案内役は?」

薫が尋ねるとジョージは一人の細身の軍人を呼んだ。

「パトリック・オルソン准尉。工兵隊の隊長で 探索者(シーカー) としてはCランクだ」

「よろしくお願いいたします」

綺麗な姿勢で敬礼して見せた。

薫と秋人はここで初めて見る敬礼に感心しきりである。

「おお、なんか軍人らしい人に初めて会ったな」

「うん」

二人の言葉にジョージは苦笑いである。

「小柄な人で 探索者(シーカー) をってことだったので、彼を推薦したんだが問題ないか?」

ジョージの言葉に薫は秋人を見る。

「どう、いけそう?」

「うん。彼なら大丈夫。さっきのエヴァンス軍曹とかだとちょっとめんどくさいから」

「うん?」

秋人の返事にジョージは首を傾げた。

「いざって時は秋人がオルソン准尉を背負って走るので」

代わりに薫が応える。

「いや、私は軍人ですので、背負われるとか…そんな」

オルソン准尉は不本意そうに訴えたが、薫は遠くを見る。

「うん、まあ…一緒に行けばわかるよ」

薫の言葉に不穏なものを感じてジョージはオルソン准尉を見つめる。

「いけるか?」

「はっ」

彼も不吉なものを感じつつ、命令に従うと決めた。すると、横から声がかかった。

「ちょと待った!俺も連れてってくれ!」

エヴァンス軍曹である。

「いや、君さっきの秋人の言葉聞いてた?君は背負って走るの大変だから無理」

薫がばっさり切り捨てたが彼は諦めない。

「や、俺は放っておいてくれていい。助けてほしいとか言わん」

「いや、だからって見殺しにはできないでしょ」

「自分のケツは自分で拭く。死んでも訴えない!ほら、あんたが証人だ」

エヴァンスは薫を指さして言う。

「ううん…まあ確かに契約では我々が守る義務があるのは一人だからね。あなたは範囲外になるけどいいの?」

薫の言葉にエヴァンスは大きく頷く。

ジョージは勝手な事をするなと言いたいところだったが、この男に最高級の 探索者(シーカー) の仕事を見せるのは、今後のアメリカ陸軍のダンジョン活動におおいに有効だと判断し、黙認することにした。

「お前、減俸だからな」

しかし、勝手な行動はそれなりに処分しないと、軍の組織は成り立たない。ジョージの厳しい発言にエヴァンス軍曹は情けない声で「そんなぁ」とつぶやいていた。

ニューヨーク・マンハッタン第5ダンジョンへは、エヴァンスの運転する車で向かった。

二人が特に何の装備も用意していないことに、パトリックはハラハラしていたが、Aランクの探索者であるエヴァンスは気にしない。

「着いたぜ」

街中にぽっかりと開く入り口。

ここがニューヨーク・マンハッタン第5ダンジョンである。

薫はフムフムと周りを見渡す。

「マンハッタンのど真ん中とか、まあよく今まで閉鎖しなかったもんだ」

「いや、東京は、ほとんどの区にもあるじゃないか」

エヴァンスの言葉に薫は肩を竦める。

「大物を残してるのは銀座、渋谷、新宿くらいで、あとはほとんどDだよ。秋人!」

薫が秋人に声をかけると秋人は大きく頷く。

「たぶん、B判定くらい」

「そっか」

ダンジョンのレベルを図っていたらしい。

雑談をしているのかと思っていたら、秋人の方が重要な役目をしていたようである。見逃したことに二人は青ざめた。

今回の任務はもちろんダンジョンを閉鎖するのが目的だが、もう一つ重要な役目があった。

それはSランクの 探索者(シーカー) のやり方を学ぶことだ。

現在、アメリカ国軍にはSランクの 探索者(シーカー) がいない。

何度かチャレンジはしているのだが、ギルドはガンとしてカードを更新しない。ランクの更新だけは 探索者(シーカー) ギルドのアメリカ支部しかできないので、いやがらせなのではないかと軍では言われている。

その事を車の中でエヴァンスが話したところ、薫はエヴァンスにカードを見せろと言った。そして、エヴァンスのギルドカードを見て一つため息をつく。

「ああ、これではそりゃあ、Sにはしてくれませんね」

薫の言葉にエヴァンスもパトリックも驚いた。

「判定の基準が分かるのか?」

「簡単ですよ。ほら、ここに小さくレベルが書いてあるじゃないですか」

ランクの下に小さく数字が刻まれている。その横には日付が一緒に記載されていた。

「これは、あなたが50レベルになったことと、その日付がかかれている。なんと3年前です」

「こんな小さな数字気が付いてなかった」

エヴァンスの言葉に薫も秋人もあきれ顔だ。

「アメリカの軍隊は、ちゃんとギルドに教えを請うた方がいいと思いますよ。Sランクはレベルが51にならないと貰えません。3年以上更新されていないということは、エヴァンス軍曹はSになるには決定的に、何かが足りないとダンジョンに判断されているんです」

「ダンジョンに?」

パトリックが思わず尋ねた。

「そう、ダンジョンに。レベルとジョブはダンジョンから与えられる恩恵です。そこには必ずメッセージがある。何を為すのか、何を目指すのか。あなた方はダンジョンに対する畏敬が足りない」

薫の言葉に、二人は納得のいかない顔だった。

しかし、おそらく二人はこれから知ることになる。ダンジョンの声に応えた 探索者(シーカー) のすさまじさを。