軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四年目の学園生活     前編

皇都に雪が降り、今年も学園の始まる季節がやってきた。

四年目ともなると慣れたものよ。

試験の結果で何人かは入れ替わるけど、大多数が四年間ずっと同じ教室で過ごしてきているから、仲のいいメンバーは固定され、身分や性格等での距離感も出来上がっている。

私の性格もすでに知られていたので、世間がようやく気付き始めたことに呆れていた。

「だから何度も話したのに。信じてくれなかったのよ」

「儚げな雰囲気は、あくまでも雰囲気なのよね」

「いやあ、黙って座っていても圧がすごいじゃないか」

本人が近くにいるのにそういう会話が出来るってことは、おまえ達こわがっていないだろ。

それなのに妖精姫はこわいよとか強いよとか言うものだから、他所の組の生徒達が本気にしているじゃないか。

おかげでカーラの話題に触れる生徒がいないからいいけどね!

教室では三人でいることが多かったから、カーラがいないことに未だに慣れなくて、つい話しかけそうになっちゃうこともあった。

ヨハネス侯爵家の寮は無人状態で誰も近付かず、このままだと廃墟になって幽霊話が出そうな雰囲気よ。

手紙では元気にやっていると書いてあったけど、カーラは今頃どうしているんだろう。

年末や新年の祝いの時は、ノーランドで過ごすのかな。

心配だけど、ずっとしんみりしてはいられない。

今年も開園式の後に皇族の寮で高位貴族だけを招待したお茶会が開かれた。

公爵家、辺境伯家、侯爵家の子供だけでも結構な数よ。

新しい魔道具を開発して一躍有名になったデリルや、エセルの弟でもう海軍の船に乗って海賊退治に参加しているというヘンリー、そしてエルダも参加している。

「この人数が集まり、大人の目を気にせずに話せる機会はそうないだろう。俺のことは気にせず情報交換するなり親睦を深めるなり好きにしていい。学園では身分は関係ないからな」

俺様風兄貴大好き大型犬皇太子殿下は、ざっくばらんで気取りのない男に成長している。

成人したら陛下の手伝いをするらしいから、帝国は当分安泰なんじゃない?

本当は陛下もクリスお兄様も今年が最終学年なんだけど、即位したばかりで忙しすぎて、一年早く卒業してしまったので、今年からはエルさんが茶会の主催者だ。

「殿下、賄賂をお持ちしました」

「言い方」

「ご注文を受けていた小型冷凍庫です。中にジェラートをぎっしり詰めておきましたよ」

もう冷凍庫製造はフェアリー商会以外でもされている。

魔道省だっていろんな機能を詰め込んだ物を開発しているのよ。

ただしデザインセンスが悪い。

魔道省も職人も男ばかりで、しかもおっさんばかりで作っているからよ。

「冬にジェラートは……」

「わかっていませんね。雪の日に暖炉の前でぬくぬくしながら冷たいジェラートを楽しむ贅沢を」

「そういうものか」

濃灰色の冷凍庫は、凹凸だけで模様や王家の紋章が入っている。

シンプルだけどおしゃれだし、男性が持っていてもおかしくないデザインよ。

「これは普通に売っているフェアリー商会の冷凍庫と同じ物?」

デリルに声をかけられてちょっと驚いた。

アランお兄様とは仲がいいみたいで、もう私に対してわだかまりはないと聞いてはいたけど、会う機会がほぼなくて会っても挨拶くらいしかしなかったの。

デリルは部屋に籠って魔道具を作ったり魔法を開発しているのが好きな性分だから、皇宮で見かけることがほとんどないし、私も皇宮に行く時に訪れる場所が決まっているからまず遭遇しない。引き篭もり同士が交流するって、ネットがないこの世界では難しいのよ。

「エル……殿下しか」

「おまえはいつも何を言いかけているんだ?」

やめよう。エルっちもエルさんも言いやすすぎて、つい口から出てしまう。

考える時もちゃんと殿下にしよう。

「殿下以外には開けられないように出来ます」

「おおお」

「なぜその機能の説明よりジェラートの話を先にした」

最近突っ込み要員になっているよ、このヒト。

意外と細かい性格なのかな。

「登録しますか?」

「俺の話をスルーして先に進めるな」

「こういう説明は苦手なんで、アランお兄様に頼もうと思っていたんです」

「登録するところを見せてください!」

デリルが私と殿下の間に割って入ってきた。

「出来れば僕にもひとつ、登録出来るやつをくれないか。お金はちゃんと払う。分解してみたい!」

「分解? もらったものを分解するって失礼でしょ」

「え? すぐまた組み立てるよ。ちゃんと使う。組み立てるのも楽しいんだ」

あー、いるいる。

なんでも分解しちゃうやつ。

組み立てるのも好きなら、プラモデルなんて渡したら徹夜で作るかも。

建物のプラモデルなら、この世界でも人気が出るかなあ。

素材が問題だな。

「なんだ。おまえ達会話するんだな。同じ学年なのに一緒にいるところを見たことがなかったから、デリルはディアが苦手なのかと思っていた」

「僕も後悔しています。もっと早くこうして話して、彼女の性格を正しく認識するべきでした。そうしたら」

「そうしたら?」

「気が合うところもあったと思います。いい友人になれたでしょうし、フェアリー商会で新しい物を作るところを見られたかもしれません」

「友人なんだな」

「友人ですね」

つまり私の本当の性格を知った後では、恋愛感情は湧かないと。

性格に難ありだと言いたいのか。

「失礼なやつだ」

「アランお兄様、さりげなく侮辱された気がします」

「ち、違う! ディアはあらゆる意味で型破りすぎて、僕では釣り合わないという話で」

「型破りって女性に対して使う言葉だったか」

「殿下までそんな風に言わないで助けてください」

話すとこういうやつだったんだ。

いつもひとりでいるイメージがあったんだけど、意外と弄られキャラ?

そういえばエルダがおもしろい子だよって言っていたっけ。

「実は女の子は、みんなこういう性格なのよ」

「ない。それはない」

「あってたまるか」

デリルだけじゃなくて殿下まで即座に否定しやがりましたわ。

「それはないよ」

アランお兄様まで?!

私、そんなに変な性格してる?

「そんなことより! ちょっと作ってみたいものを思いつきました」

「ディア、向こうで」

「なになになに?! この話の流れならきっと僕が好きなやつでしょ!」

デリルってこういう性格だったのか。

「俺も知りたい」

「殿下」

「まあまあアランお兄様、大丈夫です。むしろ意見が聞きたいわ」

「よく考えて話すんだよ。思いつくままに話しちゃ駄目だよ」

そんなにいつも思い付きで話しているかなあ。

発言が問題になったことなんてあったかな。

「余暇を過ごすのに、細かい部品をちまちまと組み立てて物を作り上げて遊ぶのって楽しいと思いますか」

「思う!」

「おもしろいと思うのはデリルだけなんじゃないか?」

「細かいという時点で駄目だ」

アランお兄様も殿下もアウトドア派か。

「私はそういうの好き!」

エルダはそう言うと思ったわ。

お茶会には参加しているみたいだけど、基本は家に引きこもって小説を書いているからね。

「家にいる時間が長いのは女性ですもの。女性でも出来る物ならいいと思うわ」

モニカも簡単なものならチャレンジしてくれそう。

狙いは女性陣?

可愛い小物や細工物を組み立てるキットの方が売れるのかな。

「もうセットになっていて、説明通りに組み立てていけば完成するの」

「それなら出来そう」

「簡単な物から本格仕様まで三段階くらいに分けて試作品を作ってもらおうかしら」

「一番難しいのをやりたい」

真剣な表情でデリルが手をあげた。

そんなすぐには出来ないわよ。今思いついたんだから。

あ。

「もっと簡単に作れるものがあるじゃない」

ジグゾーパズルの三千ピースくらいのやつを作ってデリルに渡してやろう。

暇つぶしに最高よ。

可愛いイラストを描いてパズルにすれば、女性も喜んでやってくれるんじゃない?

「有意義なお茶会だったわ」

「ひとりで勝手に思いついているだけだし、まだ始まったばかりだぞ」

「全部ボケを拾って突っ込みを入れてくれるってすごいですね」

何を褒められているのか殿下はよくわかっていないみたいだったけど、自分が中心になってやれそうなことを思い付けてよかった。

最近は家具やカートリッジみたいな大掛かりなものが多くて、私は新作のスイーツくらいにしか関われなかったのよ。