軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウィキくんにも言い分があるに違いない    前編

友人達が帰宅した後、皇都での住居を精霊の森の屋敷に移すという私の提案を両親に話すため、クリスお兄様はベリサリオに戻った。

私も一緒に行こうと誘われたんだけど、家族全員が移動するとなると、それぞれの執事や侍女も移動になるでしょ。かなりの人数なので準備がいるのよ。

それで私は、ひとりで精霊の森の屋敷に帰ってきた。

「明日から忙しくなると思うけどよろしくね」

「おまかせください」

「少し疲れたから私は部屋で休むわ。夕食までちょっと寝るかも。よほどのことがない限り、誰も通さないで」

「ディア様は働きすぎです」

「部屋でのんびりしていただきましょう。私達は明日の準備をしないとね」

心配そうに言うリュイの肩をジェマが叩き、一礼してふたりは私室を出て行った。

家族が移動してくることは、ちゃんとレックスや屋敷の人達に話したので、私の役目は終わりなのだ。

実際に準備するのは彼らで、私が動き回ったらむしろ邪魔だからね。

クリスお兄様もその辺りは承知のうえで、私がひとりになりたいんだと察してくれたんだと思う。

カーラのことで落ち込んでいるかもしれないと思っているのかも。

落ち込んでいるよ?

でもそれより、これからどうするかが重要よ。

「あなた達ものんびりしてて。ただ、部屋に誰か近付いてきたら教えてね」

精霊獣達に声をかけて寝室に入り、ベッドに上がって天幕をしっかりと閉じる。

うつ伏せに寝転がってウィキくんを開いていたら、頭の上にリヴァが乗り、一緒にウィキくんを覗き込んできた。

「えーっと、まずは漁船が漂着した村について……ジン、重いから背中に乗らないで」

『リヴァは乗ってる』

「リヴァは軽いのよ」

『精霊獣は重くない』

ウソつけ。

イフリーに乗られたら潰れるわ。

『じゃあ精霊形になる』

「それならいいわ。でも顔の前でうろうろしないで」

なぜか張り合っているリヴァとジンを片手で横に退けながら、ウィキくんの続きを読み始めた。

「うーん。聞いた話以上のことはわからないなあ。四人が村を出てどこに行ったかは、どうやって調べればいいんだろう」

船や乗組員の名前がわかっていれば調べられるのかもしれない。

エルダに聞けばわかるかな。

うちの家族に聞くと、なぜ知りたいのか問い詰められそうだもん。

「ウィキくんって絶妙に使いにくい気がする。私が活用出来ていないだけ?」

そんな便利なものはくれないよね。

ウィキくんだって、かなりのチートだ。

これ以上我儘は言えないわ。

次は、ドルーについて調べておこうかな。

ストーニー伯爵家はノーランドとコルケットに挟まれた地域の一部に領地を持つ……か。

面積は小さいけど、この辺りは農業の盛んな地域よね。

「ストーニー伯爵は領地運営を任せきりにして、皇都で生活している。民族の違う辺境伯家と付き合うことを拒み、バントック派の貴族にすり寄っていた。しかし毒殺事件によりバントック派の中心人物たちは全員死亡。辺境伯家が力をつけてきたため、仕方なく彼らに近付こうとしたが相手にされず、立場が弱くなっている」

バントック派の残党か。

第二皇子の茶会に呼ばれるほどの力はなかったおかげで、生き延びた人達だ。

彼らの中には今でも、辺境伯家が力を持つことが許せず、第二皇子を中心に結束しようとしている者達がいる。

ただ、第二皇子が全く相手にしていないのよね。兄貴大好きだから。

あの時バントック派を殺したのはジーン様で、私の友人達に毒を盛ったのがニコデムスだった。

妖精姫が力を持つことが許せなかったバントック派のせいで、皇宮内部にニコデムスが入り込んでいたのよね。

あの後、ニコデムス教禁止令が発令されて、皇宮で働く全員の身元が確認されたはずなんだけど、追及される前に皇宮から姿を消した人間が何人かいたのよね。

彼らはおそらくニコデムス教徒で、今でも皇都に潜伏している可能性がある。

それとも豊かになった帝国を見て、もうニコデムスなんてやめてやる……とはならないよな。

宗教ってむずかしい。

特に仲間が殺されていたりしたら、そう簡単に改宗なんてしないでしょう。

「うーーん。カーラに声をかけて失敗したことは書いてあっても、本当はどういう計画だったかは書いていないのね。これからどうする気かなんて未来のことまで書いてあるわけないし」

現在進行形のことも、目的が何か書いてある時とない時があるからわかりにくい。調べている相手が何もわからないままに動いていると、何も書いてないんだよな。

もっと上手な調べ方があるのかもしれないけど、たまにしか見ないから使いこなせないままになっている。

転生チートを使って最強って私には向いてなくて、神様も違うものにすればよかったと後悔していたりして。

レシピを確認したり、作物に適した気候を調べるのはうまいんだよ?

あとは今流行りのお菓子を調べたり……食べ物関連ばかりだな。

くだらないことを考えてないで、真面目に調べよう。

ドルーもフランセルに惚れて、彼女に言われるままに動いていたみたいで、詳しいことは何も書いていない。

じゃあフランセルはというと、これがまたよくわからない。

本来は噂目的じゃなくて、ドルーと関係を持たせてカーラの弱みを掴んで、私に紹介させようと思っていたみたいなのよね。

知り合いになったら、きっと妖精姫はカーラより自分を気に入るとフランセルは思っていたみたい。

その自信はなんなんだろう。

カーラやハミルトンに怖いと言わせる異常性がある人だから、理解しようとするのが無理なのかな。

「問題は、どこでドルーと知り合ったかね。フランセルも今は皇都に住んでいるのか。えーっと、フランセルには子供の頃から傍にいる侍女がいて、その子が道に迷った時に助けたのがストーニー伯爵家の従者だった」

名前がガス・クレーンプットか。

シュタルク人みーつけた。

帝国に来てもう八年で、ニコデムスとは書いていない。

限りなく黒に近いグレイだな。

そもそもカーラの評判を落としたからって、どうなるっていうの?

まさか彼らまで、私がフランセルと仲良くなって、彼女のために動くなんて思っていないわよね。

「うーーん。わからん。ひとまず保留! シュタルクはどうなっているのかな? 精霊出稼ぎ? なんだそりゃ。農民は精霊を地方で育てながら出稼ぎし、月に一度精霊を連れて王都に戻る? そうして魔力を放出させ、力を使い切ってしまう前にまた地方に戻す」

こいつら、精霊を充電器扱いしてるの?!

それで王都に魔力が戻るって?

そんなわけあるかい!

「精霊に愛着がわき、家族全員で地方に移り住む農民が続出。地方の産業が盛んになっている。すごいな、精霊。ベジャイアでもオジサンたちを虜にして、シュタルクでは精霊のために引っ越す人が出ているよ」

『当然だ』

『精霊はかわいいからな』

リヴァとジンが私の背中でまったりしながら威張っている。けど、背中にいるので何をしているのかは見えない。

たぶん得意げに胸を張っているんだろう。

「アルデルトは安い大量生産の服を売ることに成功。出稼ぎで稼いだ農民が、こぞって新しい服を買っている」

へえ、あの男はただのストーカーじゃなかったんだ。

商売人の才能があったのね。

「シュタルクは駄目ね」

精霊にも感情があるということを無視して、道具としてしか見ていない。

農民達のことだって利用しようとしか考えていないから、領地を捨てて引っ越すんじゃないの?

人間はそう簡単には変わらない。

カーラのこともニコデムスのことも、解決の糸口さえ掴めない。

でも私の影響力はどんどん強まって、みんなが私を注目している。

お友達として付き合えるのは、警護をいつも連れていられるか強い精霊獣がいて自分の身を守れる子じゃないと駄目だ。

誰と仲良くなろうと私の自由のはずなのに、釣り合わないと周りが判断したら、相手の子が妬まれてしまう。

自由でいたいから皇族には嫁がないと決めたのに、結局は動きにくくなってしまった。

「うん。暗くなるから気分転換しよう」

まだ私の背中でもめていたリヴァとジンが落ちるのもかまわず起き上がり、ベッドの頭側にある壁の前に座り込んだ。

「どこに行こうかな。ひとりになれる場所がいいな」

しゃがんでギリギリ通れるくらいの小さな円を魔法で壁に描き、ぽんと人差し指で円の中心を押したら、その部分だけ壁が消え、緑色の草の絨毯が見えた。